世にあるワンカットMVの数々を紹介してきた当コラム。これまでは、ロックバンドによるものがメインでしたが、実はJ-POPの世界……それも、バンドではなくアイドルグループによるMVにも優れたワンカット作品が存在しています。

私立恵比寿中学 – “手をつなごう”

ももいろクローバーZも所属する〈スターダストプロモーション〉発の女性アイドルグループ、私立恵比寿中学。彼女たちが2013年にリリースしたシングル“手をつなごう”のMVは、そのタイトルと歌詞世界がワンカットという技法を通してMVの中で見事に表現されています。

手と手が次々に繋がっていき、どんどん画面が展開されていく。恐らくは、「自分の順番が終わったら、カメラの後ろをひたすら走って列に並び直す」という動きを繰り返し続けて撮影している、この映像。

その時点で、撮影にはかなりの高難易度が伴うにも関わらず、更にそこにメンバー以外のエキストラやピタゴラスイッチ的に連鎖して動く小道具も登場し、ポップな楽曲や可愛らしい歌声とは正反対のエストリームなチャレンジ精神に満ちたワンカットMVとなっています。

華やかに見えるアイドルの芸能活動。しかしながら、その実、彼女たちはハードな練習を繰り返し、地道な下積み活動を続け、それでも、メジャーなスターになることができるのは極々僅か……という厳しい世界。それでもファンの為に笑顔で歌って踊る少女たちの前向きかつ健気な姿は、心の琴線に強く響いてきます。

そうした少女たちの”頑張り”がダイレクトに映像の中へ反映された、この“手をつなごう”のワンカットMVは、”アイドル”や”ポップス”といった枠組みを軽々と飛び超えて、様々な音楽ファンに感動を届ける力を有していると私は思います。

MY WAY MY LOVEやクリープハイプ、元SUPER BUTTER DOG、現レキシの池田貴史さんなどなど、ロックシーンのミュージシャンからの楽曲提供も数多く受けている私立恵比寿中学。そのメロディーやビートには、ロックが好きな方にもアプローチできる魅力がありますので、『Qetic』読者な音楽リスナーの皆様にも是非とも聽いていただきたいアイドルグループです。