言わずと知れたジャズの名門レーベル〈ブルーノート〉が、2014年に創立75周年を迎える。最近の〈ブルーノート〉はジャズに限らず、ヒップホップやR&Bなど、いわゆる非ジャズ系ブラック・ミュージック勢の活躍が目立つ。例えば、ロバート・グラスパーやホセ・ジェイムズはその最たる例であり、彼らは〈ブルーノート〉という老舗に新しい価値観をもたらしている。
ここ日本からも、〈ブルーノート〉に新たな息吹をもたらすプロジェクト・HEXが誕生した。HEXの中心人物は、90年代初頭より日本のクラブシーンを牽引し、ジャズを踊る音楽として日本から世界へ発信してきたDJの松浦俊夫だ。ミュージシャンには、SOIL&”PIMP”SESSIONSのドラマー・みどりん、キーボーディスト・佐野観、ピアニスト・伊藤志宏、ベーシスト・小泉P克人が参加。さらに、レコーディング・エンジニアにzAkを迎え、来たる11月20日(水)にリリースされる1stアルバム『HEX』では、中納良恵(EGO-WRAPPIN’)、エヂ・モッタ、グレイ・レヴァレンドという個性豊かな3人のヴォーカリスト、さらに、東京スカパラダイスオーケストラからNARGO、GAMOもゲスト参加。手練のミュージシャンたちによる「現在進行形のジャズ」を東京から世界に向けて発信してゆく。
まだアルバムのリリースまでに1ヶ月弱の時間があるHEXだが、11月1日(金)に恵比寿リキッドルームにて開催される、ジャイルス・ピーターソンとJ-WAVEがタッグを組んだ音楽の祭典<WORLDWIDE SHOWCASE 2013>にて、世界初のライブ・パフォーマンスが決定している。本邦初公開のライブに先駆け、松浦俊夫にプロジェクトの全貌と彼にとっての現在進行形のジャズについて語ってもらった。
Interview:松浦俊夫(HEX)
――まずはHEXの始動について、その背景から教えてもらえますか?
そもそもは昨年の終わりぐらいにHEXのようなプロジェクトを考えていて、タイミングよく〈ブルーノート〉の創立75周年に向けて、特別なプロジェクトを立ち上げてもらいたいという相談を受けたんですね。その中でバンドというリクエストがあったので、今まで自分がやってきたU.F.O.(United Future Organization)から10年以上開いているので、プロデュースするという形よりも一歩踏み込んだものをやりたかった。自分のソロ的なニュアンスも入れ込んでいいかを確認して、構わないということだったのでHEXを組織立てたという感じですかね。
――HEXはHexagonの略称、いわゆる六角形を意味しますよね。なぜ六角形なんですか?
メンバーを集めるにあたって、まず四人にしようと決めたんですね。ジャズにはトリオ(3人編成)、カルテット(4人編成)、セクステット(6人編成)といった呼び方があって、以前Toshio Matsuura Groupという名義で一曲作ったことがあるんですけど、新たにそういった意味を持たせつつ、かつやや抽象的なものを考えていたときに、メンバーが4人であること、自分をそこの5人目にしようと。さらにもう一人、極論を言うとリスニング体験をしている人たちも含めて、その六角形が成り立っているような形で、その要素がリスニングだったりデザインだったり、そういった6つの要素が一つになったときに、このプロジェクトが完成するというか。バンドという言い方を敢えて避けているのは、そういったプロジェクトだからであって、僕は演奏する予定が無いのであれですけど、演奏しなくてもそのプロジェクトのメンバーであると理解してもらえればいいかなと思いますね。
――HEXを形成する音楽以外の要素も含めて、ということなんですね。メンバーの中に鍵盤がお二人いますが、これにはどういった意図があるのでしょうか?
まずHEXのメンバーは、ソロの作品とグループの作品を聴いて、いつか一緒にやりたいなと思っていた方々なので、それを集めたっていう感じですかね。キーボードの佐野さん(佐野観)は本来ピアニストですけど、それはピアニストの部分も含め、彼のサウンドクリエーションにすごく興味を持っていたから、キーボードを担当してもらおうという意図があって。伊藤志宏さんに関しては、彼のピアノに狂気を感じていたところがあって、その二つはもしかして共有できるのではないかな、と思ったんです。ダメ元で組み合わせてみた部分がありますけど、実際スタートしてみると、そのバランスがちょうど良かったのかなと思いますね。