週はポール・マッカートニーにフランツ・フェルディナントと大物が続々と初冬の日本に訪れた。こんな世界中がうらやむ状況にとどめを刺したのは、アトムス・フォー・ピース。何たって、トム・ヨーク(以下:トム)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリー、レディオヘッドを長年手掛けているナイジェル・ゴドリッチを筆頭としたスーパーバンドが新木場スタジオコーストという2000人程の会場で観ることが出来るというのだ。まさにプレミアとなった本ツアーはもちろん、大阪2公演、東京3公演全てソールドアウト。<フジロック2010>の来日では概ねトムのソロアルバム『ジ・イレイザー』の演奏だったが、今回は彼らのオリジナルファースト・アルバム『アモック』のお披露目となったわけだ。

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ステージ後方には『アモック』のアートワークを模したジグザグ状の照明が。客電が落ち、ナイジェル・ゴドリッチを先頭にメンバーが登場すると、天井を突き抜けるような歓声が彼らを迎える。トムとフリーはロングスカートを纏って登場(!?)。股間に靴下もいいが、こっちもなかなかイケている。ライブはアルバムの最初を飾る“Before Your Very Eyes…”で幕を開ける。原曲に比べ、かなりテンポを落としたアレンジだ。渦のように畳み掛ける音の層に彼らが<フジロック>の時よりもバンドとして更にアップデートされていることに圧巻される。フロアーが興奮していることに気づいたトムは微笑みながらマイクをオーディエンスに向け、右から左へと声をひろう。相変わらずのお茶目っぷりは絶好調だ。フリーのベースとマウロ・レフォスコのパーカーが強烈なアンサンブルを起こす“Default”に続き、“Ingenue”ではトムのピアノ・アレンジが施され、ステージの照明もそれに呼応して幻想的な光を放つ。そして、何よりもフリーが終始ステージを縦横無尽に軽快に飛び跳ね、トムがあのキレキレなダンスで踊りまくる・・・そんな光景がほんの数メートル先で全て起きているのだ。そして、前半『ジ・イレイザー』より”Cymbal Rush”で一旦幕を閉じる。

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オーディエンスもこれで終わるわけがないだろと言わんばかりに手拍子でアンコールを求める。着替えた彼らが登場すると、トムが日本語で「イチ、ニ、サン」とカウントをとり、“Feeling Pulled Apart by Horses”でスタート。アンクル(UNKLE)の曲“Rabbit in Your Headlights”ではフリーがポエトリーリーディングを行う節もあり、会場のボルテージはさらにアップ。続く、“Paperbag Writer”、“Amok”ではアグレッシブに攻めた前半と比べ、聴かせることに重きを置いた構成だ。更に彼らはダブルアンコールに応え“Black Swan”でこの日のクライマックスを迎える。特にMC等の長い間もなく、全体的に淡々と演奏していく感じではあったが、それぞれの中身の濃さが半端なものではなかった。レディオヘッドとは違って特にアンセムもない彼らだが、1曲1曲の演奏が脳裏にまざまざと焼き付かれるのだ。“完璧”といっても過言ではないライブを目撃しただけに今後のアトムス・フォー・ピースの動向が非常に楽しみだ。

text by Taisuke Yamada(Qetic)
photo by 古溪 一道(コケイ カズミチ)

セットリスト
01. Before Your Very Eyes…
02. Default
03. The Clock
04. Ingenue
05. Unless
06. And It Rained All Night
07. Harrowdown Hill
08. Dropped
09. Cymbal Rush
〜encore 1〜
10. Feeling Pulled Apart by Horses
11. Reverse Running
12. Rabbit in Your Headlights
13. Paperbag Writer
14. Amok
〜encore 2〜
15. Atoms for Peace
16. Black Swan

Release Information

Now on sale!
Artist:Atoms For Peace(アトムス・フォー・ピース)
Title:Amok(アモック)
Hostess
HSE-60150
¥2,580(tax incl.)
※日本盤のみ、Blu-Spec CD仕様、ライナーノーツ、歌詞対訳付