国立大学法人東京大学学生の庭田杏珠と、大学院情報学環の渡邉英徳教授の共同企画として、戦前から戦後の貴重な写真をAI技術と資料・対話をもとにカラー化した書籍『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』が7月16日(木)に光文社より出版された。

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』が出版&累計2万部を記録

広島出身の庭田と渡邉教授は、AI技術で自動カラー化した写真をもとに、対話の場を生み出す「記憶の解凍」プロジェクトに取り組んでいる。このプロジェクトは、庭田が高校在学中の2017年にスタートし、発展しながら続いてきたものだ。

記憶の解凍」においては、AI技術でモノクロ写真を自動カラー化したのち、戦争体験者との直接の対話や、SNSで寄せられたコメント、当時の資料などをもとに手作業で色彩が補正されていく。この過程において、モノクロ写真の印象が大きく変化し、遠い昔の戦争が現在の日常と地続きになり、写し込まれたできごとにまつわる対話が創発される。

そして本書には、これまでの研究成果がまとめられている。戦前の広島・沖縄・国内の様子や、開戦から太平洋戦線、沖縄戦・空襲・原爆投下、そして戦後の復興のほか、個人提供による貴重な写真や、朝日新聞社・共同通信社提供の写真、アメリカ軍が撮影した戦場写真など約350枚がカラー化・収録されている。

戦前・戦場写真約350枚がカラーに|書籍『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』が出版&累計2万部を記録 art200731_ai-colour-photo_2-1920x1268

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1935年、沖縄の女学生
写真提供:朝日新聞社

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1945年8月6日、呉からみたきのこ雲
撮影:尾木正己

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1946年8月、原爆投下一年後の広島のカップル
写真提供:共同通信社

尚、本書は発売前から予約が殺到し、事前重版もおこなわれた。発売後も売れ行き好調で、たちまち3刷が決定。5,000部を増刷し、累計20,000部を突破するなど大きな反響を呼んでいる。

8月14日(金)に紀伊国屋ホールにて開催される出版記念講演会は、キノチケットカウンター、キノチケオンラインにてチケットが販売中なので是非お見逃しなく。

渡邉英徳教授 コメント
戦前から戦後にかけての写真は、もっぱらモノクロです。カラーの写真に眼が慣れた私たちは、無機質で静止した「凍りついた」印象を、白黒の写真から受けます。このことが、戦争と私たちの距離を遠ざけ、自分ごととして考えるきっかけを奪っていないでしょうか?
私たちはいま、AI(人工知能)と人のコラボレーションによって写真をカラー化し、対話の場を生み出す「記憶の解凍」プロジェクトに取り組んでいます。
戦前の広島・沖縄・国内のようす。そして開戦から太平洋戦線、沖縄戦・空襲・原爆投下・終戦。本書には自動カラー化ののち、写真提供者との対話、資料、SNSでの時代考証などを踏まえて仕上げた、約350枚のカラー化写真が収録されています。
しあわせな暮らしが、少しづつむしばまれていくようす。戦禍が日常に。そして焼け跡から生まれた希望。一葉一葉をめくり、眺めながら、過去のできごとに思いを馳せていただければ幸いです。

庭田杏珠 コメント
高校1年生の夏。私は広島平和記念公園で偶然、浜井徳三さんと出会いました。浜井さんの生家は戦前、中島地区で「浜井理髪館」を営んでいました。中島地区は現在の平和公園にあたる場所で、原爆投下前は4,400人が暮らす繁華街でした。
浜井さんが疎開先に持参した大切なアルバムを見せてもらうと、戦前のご家族との幸せな日常を写した白黒写真約250枚が収められていました。「ご家族をいつも近くに感じてほしい」という想いから、私はカラー化の取り組みを始めました。
その後も、少しずつ中島地区の元住民との繋がりが広がり、資料や対話を通してよみがえったさまざまな「記憶の色」を再現しています。
写真集の出版にあたり、私自身は子どもたちの目線から写真を集めました。戦争は、戦地で戦う人たちだけではなく、子どもたちを含む一般市民も巻き込まれてしまうものなのだと伝えたかったからです。家族と最後のお別れもできないまま、永遠に一人ぼっちになってしまった、中島地区の浜井さんたちの想いとともに……。
本書を通して、戦争や平和について、自分ごととして想像してほしい。そして、それぞれが感じた想いをまた、大切な友達や家族に伝えてほしいなと思います。これが、今の私にできる戦争体験者の「想い・記憶」のあたらしい伝え方です。

片渕須直(映画『この世界の片隅に』監督) 帯コメント
すずさんの時代にたどり着きたいと思っていたら、ここにもタイムマシンを作ろうとする人がいました。

INFORMATION

AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争

戦前・戦場写真約350枚がカラーに|書籍『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』が出版&累計2万部を記録 art200731_ai-colour-photo_3-1920x3116

発売日:2020年7月16日(木)
価格:本体¥1,500(+tax)
著者:庭田杏珠、渡邉英徳
発売:光文社
判型:新書判ソフトカバー

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EVENT INFORMATION

「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」出版記念講演会
75年目の『記憶の解凍』~AI×ひと 戦争を次世代に伝えること~

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2020年8月14日(金)
OPEN 18:00/START 19:00
会場:紀伊國屋ホール (新宿区新宿3-17-7 紀伊國屋書店新宿本店4F)
出演:庭田杏珠、渡邉英徳
入場料金(全席指定):¥1,000(tax incl.)
チケット発売開始日時:7月18日(土)10:00~
チケット販売場所:
キノチケットカウンター (新宿本店5F/店頭販売 受付時間10:00~18:30)
キノチケオンライン(24時間受付)
お問合わせ先:紀伊國屋ホール
TEL:03-3354-0141(10:00~18:30)
*当日ロビーにおいて書籍に掲載されている写真の一部をパネル展示いたします

写真提供:共同通信社

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