ミュージック・ビデオから紐解く“古川本舗

“三月は夜の底”

2011年6月15日発売の、1stオリジナル・アルバム『Alice in wonderword』〈BALLOOM〉に収録された、エレクトロニカ・チューンなMV。ブラックな背景に色とりどりの蛍光色で刻まれた、二次元と三次元を超越した淡いファンタジックな世界観。デジタルの魔法を施された大人な影絵セカイとでも表現すべきか、新感覚&新体験な浮遊感が心地良い。ボーカリスト花近によるボーカル・ワークと、今やlivetuneとコラボするなど、シンガーとしても人気なYun*chiが演じるイラスト風なモーション効果で物語が紡がれていく。そう、まるで白昼夢のように色彩が変化していく極上のアンビエント空間がせつなくも美しい。なお、本作はもちろん、古川本舗関連作品のアレンジやミックスを、スネオヘアーなどを手がけたジャパニーズ・インディー・ロックシーンの雄、原朋信(SUGAR FIELDS/Cafe au Label)が参加しているのも興味深いポイントだ。

“魔法 feat. ちょまいよ”[A faulty day.ver],[a Perfect day .ver」

2012年11月7日発売の、2ndオリジナル・アルバム『ガールフレンド・フロム・キョウト』〈SPACE SHOWER MUSIC〉に収録された、大きな世界観を醸し出すロックバラード・チューンなMV。人気歌い手であるちょまいよをフィーチャリングし、UKテイストで繊細な音セカイを、顔を持たない男性を主人公に、日常と非日常がおり混ざるかのようなSF(少し不思議の意)ワールドによってドラマティックに展開していく。“顔”を持たなくとも、朝食を食べ、日常を営んでいく男。オープニングのモチーフから悲劇へと向かうプロットかと思いきや、そこは細やかな展開が仕掛けられているので、ぜひ最後まで観て欲しい。なお、映像はYouTubeでは「A faulty Day.ver」編、ニコニコ動画では「a Perfect day .ver」編と、実は別々の結末が用意されている。生きるためのバナナ、死ぬための拳銃という偶像モチーフ。なお、MVの監督はMr.Children“花の匂い”などで知られる映像作家の半崎信朗で、J・D・サリンジャーの短編小説『バナナフィッシュにうってつけの日』からインスパイアされた作品となっている。

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