Interview:痛バルーンアーティスト・もも

――バルーンアートの魅力はどんなところでしょうか?

風船って、幸せで楽しいイメージがありますし、子供からお年寄りまでどんな人でも好きですよね。割れるのが怖いという人もいますが、貰ったら嬉しいと思います。

――バルーンアートを始めたのはいつごろからですか?

風船を触り始めたのは大学に入ってからです。大道芸サークルに入って、人前でパフォーマンスをする中でバルーンアートをするようになりました。

――ちなみにカラーコーンを使ったパフォーマンスもされているのですよね?

これも大道芸サークルで始めました。頭や顎に何かをのせるパフォーマンスがあるのですが、カラーコーンを載せたら面白いかな? と思って載せてみました。1つのカラーコーンの穴に、2つカラーコーンを差して……と扇状にどんどん重ねていきます。最初は4個くらいだったのですが、今は7個顎に載せられるようになりました。

1つ1キロあるのですが、自分で道具を持って移動するので腕がムキムキになってしまいました! タンクトップは着られないですね~。たまたま駅で向かい側のホームにいた友達に写真を撮られて「これ、あなただよね?」って聞かれたこともあります。カラーコーンを大量に持って歩いている女の子なんて、私くらいです(笑)。

東京都庁認定資格『ヘブンアーティスト』の資格もいただきました。知事さんは何を考えてるんだろ、ってちょっと思いましたね(笑)。

でも、私のパフォーマンスを見て、笑顔になってくれたり、「元気がでたよ」って言ってもらえたりするのがとても励みになります。生きていたら色々なことがあると思いますが、一瞬でもカラーコーンのパフォーマンスやバルーンアートで気持ちが軽くなってくれたらいいな、というのを心掛けています。

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――痛バルーンを作り始めたきっかけは?

バルーンアートを始めたころは一本の風船を使って、犬や花などよく見かけるものを作っていました。でも、常々もっと色々なことができるのでは? と感じていました。それまで絵画は学んでいたものの立体は初めてだったんです。三次元で表現が出来るのは面白かったのですが、なかなかうまくいかず悔しかったですね。自分の部屋でも、夜通し風船をひねって練習していました。

最初は似顔絵バルーンを作っていました。他の方はシールを貼って顔を描いていたのですが、私は絵が描けるので、ある時似顔絵を描いてみたらとても喜ばれて、バルーンでここまで出来るんだと気づきました。個人的にアニメ、マンガが好きなので、デフォルメして可愛くしたら二次元でも出来るのでは? と作ってみたら、とても反響が良かったのでこれは喜んでもらえると思いました。

――これまでにどれくらいの数の作品を作ったか覚えていますか?

練習も含めるとかなりの数を作っているので、ちょっと覚えていないですね……。

でも金額にすると、人生で一番お金をかけているものだと思います。企業に依頼されて作ったものもありますが、そういうものも入れたら総額200万円くらいになるのではないかと。年頃の女の子だったらコスメや服・バックにお金をかけると思うんですけど(笑)。

また、風船は消耗品なのでどんどん買い足す必要がありますし、ゴムが劣化してしまって古いものは膨らますと割れてしまうこともあるので、管理が大変ですね。

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――特に印象に残っている作品や、仕事があれば教えてください。

ニコニコ超会議で巨大なフィギュアを作ったことでしょうか。初音ミクなどのキャラクターの他にも、動植物など15点ほど作品を作りました。業者さんたちと同じくらい早く会場入りして、何もまだないところで3日間もくもくと作品を作りました。2人だけで作業したのでかなり大変でしたね……。

アーチにニコニコテレビちゃん(ニコニコ動画のマスコットキャラクター)を50個くらいつけたのですが、しばらくテレビちゃんは見たくなかったです(笑)。

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――制作のコツ、ポイントなどはありますか?

デフォルメのバランスですね。元々日本画を学んでいたのですが、バルーンアートは日本画に似ているといつも思います。日本画は下絵を多く描き、たくさんの線の中から自分が一番気に入った線を掘り起します。デフォルメするイメージなのですが、自分の頭の中でフィルタリングをして、実際の形とは違っても、対象を一番美しく見せる線を選びます。

風船で表現できるものには限界があります。その中でデフォルメをしつつ、モチーフの特徴を生かしつつ、一番可愛く見えるところを探っていく、というのが日本画と共通していますし、バルーンアートの面白いところでもありますね。

また、私の作品は骨組みがしっかりしていると言われることが多いです。ほとんどの方は外側から作っていくのですが、造形美術を習っていたこともあり『ここに骨がある、ここに血管が通っている』など、中身をしっかり詰めるというか、解剖学的な視点で作品を作ることにこだわっています。

――制作の過程と所要時間を教えてください。

下絵を描いて、色や形を決めて材料を用意したら、土台から一気に作ります。片手で持てるサイズだと、所要時間は5分から10分くらいでしょうか。人形になると30分位ですね。また、一点ものを作ることが多いので、顔にこだわると1時間くらいかかることもあります。

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――顔はどのように描いているのでしょうか?

顔は手描きにこだわってマジックで書いています。でも、いつも怖いことがあって……。風船はゴムなので、マジックのアルコールが揮発するときに割れてしまうことがあるんです。顔は最後に描くのですが、そのときに割れてしまって一からやり直すこともあります。命を吹き込むような気持で描いていますね。

あまり塗り重ねると割れてしまうこともあるので、そこも緊張します。重ならないように隙間を埋めるのですが、こういうところにも日本画の繊細な筆づかいの技術が生きているかもしれませんね(笑)

――どれくらいの数のパーツ(バルーン)が使われているのですか?

例えば初音ミクの人形だと、身体まで含めて30本くらいでしょうか。ボリュームを出したり、外から見えない骨組みに使ったりと意外に数が必要なんです。

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