「若けりゃ良いってもんじゃない」
27歳を超えたくらいから、何度頭をよぎったかしら。人間は皆平等に歳を取るもの。若さや可愛さだけでは、やっていけなくなるのがアラサー女子。若さと可愛さの代わりに何が必要かしら…

第四回

植物園は、動物園や水族館に比べやや存在感の薄いようなところがあるが、以外にも都内にかなり在って、普段人の良く通る繁華街から目と鼻の先に大きな温室がどんと構えていたりする。

日々、色々な事を夢想しながら生きている。
それらの幾つかは、取り留めのない妄想としてすぐに記憶の受け皿からこぼれ落ちていき、そしてまた幾つかは、忘れられずに何度も思い返すものになる。
子供の頃から何故か植物が好きだった。高校入学まで殆んどの時間を過ごした祖母の家には内庭があり、梅の木やグレープフルーツの木や薔薇が一株植わっていて、それらをよくスケッチしては時間を忘れた。

〜アラサーのひとり遊戯〜第四回「大温室の三角関係」 zaqi01-700x394

椿の木を誰にも内緒で育てたい。
根がしっかりと張ることを見守りたい。
花が落ちた後、晴れた日にはゆっくりと剪定をしたい。
初めて通る道の知らない人の家先や、生垣から覗く椿に心奪われる。椿の花は大抵、私の目線よりも少し高いとろこから通りを見ている。きっと家主が手をかけて大切にしても、知らん顔をしているんだろう。

椿は冬に花をつける。寒さにも暑さにも強い。
大温室の中に咲き乱れる南国の花々のことを一生知る事もない。

 

君知るや南の国
レモンの木は花咲き くらき林の中に
こがね色したる柑子は枝もたわわに実り
青き晴れたる空より しづやかに風吹き
ミルテの木はしづかに ラウレルの木は高く
雲にそびえて立てる国や 彼方へ
君とともに ゆかまし

引用元:ミニヨンの歌(著:ゲーテ/訳:森鴎外)

 

温室の花は名前を覚えるのが難しいから、呪文の様に声に出して読む。
パフィオペディルム、ウツボカズラ、インドボダイジュ、オオベニゴウカン…
温室の中を歩くときは、花達に道に迷った演技をして見せて欺く遊びをいつも思いついてしまう。

中学校の理科の先生はこう言う…植物と動物は全く違うものだと思うかもしれませんが、生き物という括りの中では同じなのです。ただ植物が私たち動物と何が違うかというと一番は生きる速度が違います。
温室の花達を見ていると、植物がゆっくりゆっくり動いている事を意識し始める。進めば進むほど植物に見られている気がしてくる。
私は今、椿と温室の花との三角関係を楽しんでいる。

ザキ