界が熱狂したワールドカップは、ドイツが優勝で幕を閉じた。ユニフォームやフラッグを身にまとうサポーターで溢れかえっていたベルリンの街も静けさを取り戻し、数日前までがウソの様に”素”に戻った。ワールドカップ開催の裏にはとても深刻な問題がある。歓声を上げている同時刻には世界のどこかで死んでいく子供たちがいることを決して忘れてはいけないし、世界規模で考えなくてはならないことだと思う。ただ、自分が住み始めた国で優勝を経験するということは素直に喜ばしいことだし、すごいことだと思う。だから、今回の優勝を通じて、見習うべきドイツの良い部分を知るきっかけになってくれたらと願っている。

そんなドイツが先進国として知られている1つにBIO(EUでオーガニック認証をされているもの)がある。ベルリンにおいても街を歩けば、そこら中でBIO CAMPANY(オーガニック専門のスーパーマーケット、食品以外にもコスメやサプリメントも取り扱っている。)を発見することが出来、通常のスーパーであってもBIO認定されたオーガニック食品を簡単に手に入れることが出来る。

W杯優勝のドイツに学ぶのはサッカーだけではない! オーガニック先進国から学ぶ本当の健康とは? column140716_kana_bc

W杯優勝のドイツに学ぶのはサッカーだけではない! オーガニック先進国から学ぶ本当の健康とは? column140716_kana_biomarcket

BIOへ興味を持ち始めたのは、友人を通じて知り合ったベルリン在住のある夫妻がきっかけではあったけれど、私自身、身を持って経験したことがあったからだ。

ベルリンへ移住する直前まで、私は地元である長野を拠点に生活していた。都立大学の小さなマンションに詰め込まれた数え切れないほどの靴と洋服と思い出と共に19年間に渡る東京生活にピリオドを打ち、そこからの約半年間、長野と東京を行き来する2拠点生活をしていた。実家での生活を始めて、2週間ほど経ってから仕事で東京へ戻った時、友人や仕事関係者から“健康的になった!” “顔色が違う!”と口々に言われたのだ。自分では人前に出る時はそれなりに”健康的”だと思っていたけれど、たった2週間でみんなが驚くほど変わったということは、今までどんな死人顔で人前に出ていたのかと当時の自分を思い返してみたが、よく分からない。とにかくがむしゃらに働いていたことだけは確かなのだけど、自分の限界というものほど、自分では気付かないものだと実感した。

長野での生活は本当にゆったりしていた。引退した父親が作る自家菜園で採れる野菜を毎日食べ、両親と共に週に1、2度は近場の温泉へ行く。東京での仕事は相変わらずハードだったけれど、スケジュールやボリュームを調整して、1つ1つに集中出来る環境を作った。時間の流れも環境も真逆だったけれど、刺激と癒しの両方を得れていたその生活は、文字通り私に”健康”を与えてくれたのだろう。身体だけではなく、心の健康までも。

ここベルリンにも健康的で充実感に溢れている人たちが大勢いる。内面から溢れ出てくる自然な健康美というのだろうか。決して、外からだけでは作れないナチュラルな輝きを持っている。

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佐賀井優香さん(43歳)、克彦さん(32歳)

佐賀井優香さん、克彦さん夫妻のライフスタイルを知りたいと思ったのは、2年前に知ったこのブログがきっかけだった。いわゆる彼らは肉と魚、それに動物性が含まれる食材を食べない“ヴィーガン”と呼ばれる菜食主義者である。聞き慣れているベジタリアンとはまた少し違う。私は専門家ではないし、分け方によっては何種類も呼び名があるため、正しい説明をするのはとても難しい。彼らは生まれ故郷である北海道で暮らしている時に出会ったエンリケ・バリオス著書の小説「アミ 小さな宇宙人」がきっかけで肉を食べるのを止め、そこから徐々に今のヴィーガンスタイルへと変えていったのだという。

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ベルリンへ移り住んだのは3年前。それまでにも海外生活経験があった2人は、アーティストである克彦氏の音楽活動のために、環境の良いベルリンを選び、そこからずっと今のヴィーガン生活を続けている。食材へのこだわりも徹底している。毎週土曜日に開催されるBIOマーケットへ行き食材を購入している。市場なので、スーパーよりも新鮮な食材を手に入れることができ、しかも値段も手頃。日本でオーガニックのみを買い揃えようとしたら、手間隙だけでなく、かなりの経済負担になってしまうが、ドイツでは誰でも気軽に始めることが出来る環境が整っている。一緒に暮らす2匹のネコもBIOキャットフードを食べている。ドイツでは、BIOでなくても比較的添加物の少ないペットフードが多いというが、それではまだ不充分なのだ。今後は手作りBIOフードへ移行する予定とのこと。生きているのは人間だけではないのだ。こういった試みからペットビジネスの悲惨な現状を考え直すきっかけになって欲しいと願う。

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取材を行った日のメニューは、粉豆腐を使ったおからひじき、ラディッシュと菜種油で作ったマヨネーズ風ソース、ズッキーニとカボチャのグラタン、玄米ごはんなど、もちろん素材は全てBIO。飲料水もブリタを通したものか、ゲルシュナイダーと決めている。優香さんが作った料理は素材の良さをそのまま活かした優しい味がする。おいしい物を食べている時、人は自然と顔がほころぶことがある。彼女の料理には、優しい気持ちになれるエッセンスが加わっている。そんな味なのだ。

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もともと英会話スクールの講師をしていたユカさんは、人の癒しになる仕事がしたいと考え、現在、ヴィーガン料理のワークショップやBIOマーケットへの出店を計画中とのこと。その際にはまた密着取材をしたいと思っている。

食事は外食で良い、お金がなければインスタントでもコンビニでも良いというジャンクフードバンザイ! で生きてきた私がまさかこんな記事を書くとは思ってもみなかった。私自身はヴィーガンではないし、これからも肉も魚も食べると思うけれど、頻度を減らしたり、素材選びに気を使うようになっている。まずは、出来ることから始める。これが大事だと思う。そして、大昔の自分に会ったら真っ先に言ってあげたい。

”心から幸せになれるものを食べなさい”

環境は、人を変える。中からも外からも。

海外移住や地方転居を考えている人がとても増えていると聞く。実際に身近な人から相談を受けたりもしている。人それぞれいろんな事情があるのだろうから一概には言えないけれど、可能であるならば、無理はせず、2拠点生活から始めることをおススメしたい。時間に余裕が出来れば出来るほど、環境に変化があればあるほど、本当に大切なものに気付くことが出来るからだ。これは理想論でもスピリチュアルでも何でもなく、私自身の実体験なのである。