第124回 おんなは度胸

息子の家族が海外旅行先で爆発に巻き込まれた。テロなのかどうかはまだ不明だが、真昼の商店街での爆発で多くの観光客が被害にあった。日本のマスコミでも連日報道されるほどの大事件だ。息子夫婦は運悪く爆発の近くにいたために助からなかったが、ベビーカーごと吹き飛ばされた双子の姉弟はベビーカーがクッションになり、奇跡的に傷ひとつなく保護された。まだ2歳になったばかりのこの子達には一体何が起こったのかわからないはずだ。爆発の影響で耳がほとんど聴こえないそうで少し戸惑っている様子だ。一時的な難聴で済めば良いのだが。

事件現場で妻と再会した。2年ぶりだった。別居してから1度も会っていなかったのに、まさかこんな場所で会うことになるなんて。英語もわからないのに大変だったな、と言うと「結構どうにかなるものよ」と少し笑った。連絡を受けてから30時間以上も緊張の連続だった私の顔が、きっと酷くこわばっていたのだろう。妻はうまく私を落ち着かせてくれた。やつれながらも彼女は凛としている。相変わらずだ。

日本に戻るために空港に到着しても、双子の姉弟はずっとパパとママをキョロキョロと探している。耳も聴こえず不安で不安で仕方ないはずなのに、姉弟はお互いに寄り添って必死に耐えていた。時間が経つにつれ、この子達なりにもう何か気付いているのかも知れないと思うと、とてもじゃないがやり切れない気持ちになる。その時「顔がまた曇ってるわよ」妻が私をまっすぐに見て言った。「この子達が大人になるまで我慢して。そしたらまた別居してあげるから」断固とした物言いに私は何も反論出来ない。わかりました、と思わず言いそうになったくらいだ。息子よ、安心しろ。父さんと母さんがついてる。私もこの子達と一緒に面倒みてもらうことになりそうだが。