第163回 人間交差点

私はとても背が小さいから背が高い人が好き。背が高いだけで恋愛対象になるくらい。だからサマンサの彼氏が凄く背が高くてついつい気になってしまう。顔を見上げて話すたびに胸が高鳴るわ。こんな私に気づいてる彼がさっきから機嫌が悪い。ああでも仕方ないの。ごめんなさい。

メアリーがビルとばっかり話してる。背が高いからビルって名前なの? なんて言ってはしゃいでる。そんなわけあるか。俺は自分の国ならそんなに小さい方ではないし別に気にしてない。俺が気になるのはサマンサだ。サングラスして皮ジャンを着るような女は俺の国にはいなかった。映画を観ながら憧れていた女性そのものだ。嘘だろ。なんてセクシーなんだ。

ケンが携帯を見るふりしてあたしをチラチラ見てる。また悪い癖が出ちゃいそう。略奪愛を繰り返してるうちに、略奪自体があたしを興奮させていることに最近気づいたの。今更普通の恋愛なんて出来ない。またケンがこっちを見た。ロープウェイが向こうに到着するまでにあたしはケンを骨抜きにするわ。

僕は背がとても高い。だから背が小さい人が可愛くて仕方ない。まるでペットを飼っているような気持ちになるんだ。サマンサは嫉妬深いから彼女が風景を眺めてる間に隣を盗み見る。不機嫌そうに携帯を覗く姿にゾクゾクしてしまう。ああケン、君はなんて可愛いんだ。