第183回 モノクロの花火

私の通う高校の近くでは10月中旬に花火大会がある。そんなに盛大ではないけど、花火を見逃していた人達が都内からも集まって来るため、毎年ものすごい数の人々が集まる。夏はとっくに過ぎて、最近は日が落ちると少し肌寒いけど、私はお気に入りの浴衣を着た。初めて出来た彼氏に見て欲しくて。

彼は学校で人気の男の子。誰からも好かれる性格の彼にはいつも可愛い彼女が隣にいた。そんな彼がどうやら彼女と別れたらしいという噂を聞いて、高校生活最後の挑戦として挑んだ告白が実ったのだ。駆け戻った私のまさかの報告を聞いて友人たちは絶叫した。もちろん私も絶叫した。そんな私たちの姿を見ている彼の視線。今どうしても思い出せない。

「よく似合ってるよ」待ち合わせに現れた彼のひと言目。朝から何時間もかけて髪と浴衣の準備をした私にとって1番聞きたい言葉だった。女子として扱われることに喜んだり困惑したりしながら打ち上げ会場の近くへ向かおうとすると、まだかなり離れた場所で「もうこの辺でいいよ」と彼が言った。人が多い場所が好きじゃないの?と聞いた私が馬鹿だった。「知り合いに会いたくないからさ」

そうか。私は分からなくなってしまった。いや実は分かっていた。彼が私に惚れていないことを。ここに来てからも彼の視線は他の誰かに流れるばかり。私は崩れないようにずっと気をつけていた髪を直すのをやめた。遠くの花火を眺めながら、彼が何か話しかけてくる。私は花火の音で聞こえないふりをした。