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アントマンって知っているかい? マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)の中で最小最強かつ最高に気さくなヒーローなんだぜ! でも、そのアントマンが主役の『アントマン』、そして8月31日(金)に公開された新作『アントマン&ワスプ』の監督、ペイトン・リード氏のことは知っているかい?

アントマンが気さくなヒーローになったのは、監督の気さくさあってのものなのだということがわかるくらい、飾らなくて温かい人なのだ。

そんなペイトン・リード監督に来日単独インタビュー。本作の注目は勿論、アントマンやバディを組むことになった女性初のタイトルロールヒーローのワスプについて、本作の見どころなど伺った。

「アントマン&ワスプ」日本版本予告

Interview:ペイトン・リード監督

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そもそも、最初に言わせてほしい。『アントマン&ワスプ』は最高だ。そして、ジャパンプレミアを兼ねたファンミーティングイベントで来日したポール・ラッド(アントマン役)、エヴァンジェリン・リリー(ワスプ役)、そしてペイトン・リード監督のトリオは本当に仲良しで会場の雰囲気を和ませた。そんな3人を中心としたスタッフたちが、現場で和気藹々とこの映画を作ったのだな、という“人の良さ”のようなものが本作からは滲み出るのだ。

「日本に来るのはこれが2回目なんです。前回は一作目の『アントマン』のプロモーションで、京都にも行きました。今回は初めて大阪に行くから楽しみですね!」

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そう、ペイトン・リード監督はニコニコしながら話す。会って握手をして3秒でわかる良い人感。

「LAでもよく食べているくらい、日本食は大好きなんです。ファンミーティングイベントの後には、鉄板焼きのお店に行って。目の前に食材がずらりと並べられていて4人のシェフが叫び合う……すごい熱気でしたよ! あのような類の店はアメリカにはないから、本当に素晴らしくて最高の体験でした」

来日の感想を嬉々として話してくれる監督。映画の話に入る前に、是非監督に伺いたいことがあった。アントマンのモチーフは蟻で、ワスプのモチーフは蜂となっているが、Qeticのマスコットキャラクター「あいつ」は、監督の目には何モチーフの生き物に見えるのだろうか。

「えー!? なんだろう、アザラシ? しずく?(笑)一体何なんだ!?」

実は何でもないんです……と言ったところ爆笑していた。

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さて、このペイトン・リード監督は『アントマン』シリーズを手がける前から、『チアーズ!』や『イエスマン “YES”は人生のパスワード』などのコメディ×ヒューマンドラマというスタイルの作品を撮ってきていた。自身のコメディスタイルを、どのようにして『アントマン』シリーズに落とし込んだのだろう?

「自然にフィットしていった感じですね。『アントマン』を監督するとなった時、原作コミックに馴染みのない人からしたら『アントマン!? なんだよ、アントマン(蟻男)って。小さくなって蟻と一緒に飛び回るなんて馬鹿げている!』という第一印象を抱くのではないかと思いました。なので、一作目の映画のトーンは実際にそういうノリになっています。ただ、それと同時に僕らはアントマンがどれだけ強いかという事、そしてテクノロジーの可能性を描こうとしたんです。

でも、『アントマン』のコメディスタイルは、特に主演のポール・ラッドありきのものだと感じています。彼は他のマーベルヒーローと違ったヒーローを見事に演じてくれていますからね。天才でもないし、ものすごいお金持ちでもない、神でもない、普通の人間です。しかも、なんならルーザー(ダメ男)なんですよ。何回も救いようのないミスを犯して、奥さんには離婚されるわ、刑務所に入れられるわで……。でも僕は、こんな男がヒーローになれるという意味で、アイアンマンやソーよりも共感できて好きです」

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確かに、アントマンは誰よりも共感しやすいキャラクターだろう。何より、ちょっぴりイケてない男の子や、仕事と育児を両立させて頑張っているバツイチの子持ちにとっては。

「そう、バツイチの子持ちである点も僕は気に入っています。本作での彼の大きな葛藤、試練は“ワークライフバランス”なんです。彼はアントマンになることも好きでしょうが、一方で、毎回スーツを着るたびにトラブルに遭ってしまうこともわかっている。さらに、彼は本当に自分の娘に対して良い父親でいることに集中したいのです。だから、アントマンになれる落とし所みたいなものを探しています。ワスプのようにヒーローをフルコミットできないですしね」

続けて監督は、本作が一作目と比べて成長している点を話してくれた。

「『アントマン&ワスプ』の製作段階の初めに、僕たちは二つのことを話し合いました。一つは前作よりも愉快で面白い作品にすること。もう一つはアントマンたちの縮小テクノロジーを、最大限に生かしたいということです。そこで、一作目のように人に対してだけ使うのではなく、車やビルといったあらゆるものに使うようにしたんです。ただ、何より重要だったのは『アントマン』というシリーズ作品が、あくまで父と娘の話であるというエモーションや空気感を維持させることでした」

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さて、一作目との違いは何といってもワスプの活躍っぷりだ。エヴァンジェリン・リリーの美しい肉体美+本格的なアクションシーンが、とにかく見ていて気持ちがいい。なにより彼女は身体的に強いだけでなく、ピム博士と同レベルの秀才であり、自立している。従来の“救われるヒロイン”ではなく、心身共に強い女性ヒーローなのだ。

「全くその通りなんです。実はエヴァンジェリンと僕はワスプのキャラクター像について、脚本を書く前の段階から沢山話し合いの時間を設けていました。前作の彼女は最後にスーツを手にしましたが、今作では100%ヒーローとして戦う姿が描ける。ホープ・ヴァン・ダインが、ワスプとして戦う態度などについて、エヴァンジェリンと固めていったんです。彼女は『激しい戦闘シーンなのに髪の毛に乱れがない』とか『とても汗をかいているはずなのに、そんな風に見えない』とか、的確なヴィジョンを持っていましたね」

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実は監督は、以前ハフィントン・ポストのインタビューで、「ワスプがアベンジャーズの女性キャラクターのリーダーになるべきだ」と話していた。この発言について伺ってみた。

「誰かが、女性版アベンジャーズが製作されるとしたら誰がリーダーになると思うか、と聞いたんです。名前に“キャプテン”と入っているからキャプテン・マーベルが挙げられがちですが、僕はワスプと答えました。彼女は決断力の高いリーダーとして頑張ってくれるはずですよ。そういう映画が作られるかは、さておき(笑)」

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そこで気になるのは、ワスプの単独映画だ。幾度か話が出るたびにエヴァンジェリン・リリーが気乗りしていないという報道が複数されていたが、監督自身はどのようにお考えなのだろう。単独映画製作の可能性はあるのか?

「いつでもそこには可能性があります。しかし、エヴァンジェリンは常に単独映画に対してあまり乗り気ではないんです。彼女はワスプとアントマンのコントラストが、何よりも面白いと考えていますからね。コミックでも彼らは常にパートナーとして動いているし、その点が『アントマン&ワスプ』の核でもあります。

他のMCU作品ではこういう形の男女のパートナーシップは描かれていないはずです。仕事におけるパートナーではあるけど、お互いの私生活で何が起きているのかも把握しているレベルの関係性、それが二人において大事なのです。だからこそ、彼らはお互いのために、いつでもそこにいてあげるべきなのだと考えています。

誰も、ワスプが一人じゃやっていけないなんて、これっぽっちも思っていない。一目瞭然ですよね(笑)。彼女は一人で自分の世話くらいできます。しかし、『アントマン&ワスプ』の重要な部分は、勝手にスーツを持ち出して「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」に参加し、自分たちの存在を明るみに出してしまったスコットを、彼女がどこかで許してあげなければいけないところなんです」

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さて、本作は監督が語ってくれたようなアントマンとワスプ以外にも、多くのキャラクターが自分の役割をそれぞれ担って活躍している。特に、“ヴィラン”として登場するゴーストや、一作目から登場していたピム博士や、スコットの泥棒仲間のルイスなど……ネタバレは避けたいのだが、全登場人物が”憎めない”といっても過言ではないほど、素敵なのだ。特に、蟻たちである。今度の蟻は大きい! そして賢い! 一体ピム博士はどのようにして、彼らをあそこまで調教したのだろう?

「彼は生涯をかけて、蟻をコントロールするテクノロジーを開発していました。70年代くらいからの日々の蓄積のおかげで、今や彼は蟻にスコットのデイリールーティーンを真似させたり、ドラムをさせたりすることまで可能にしたんですよ(笑)。そういう設定にしたら、めちゃくちゃ面白いと思って。人が持つアントマンのイメージは恐らく、体を縮ませて蟻に乗って飛ぶことですが、実はこの蟻の存在自体が秘密兵器なんです。だから、蟻が活躍するギャグシーンは撮っていて僕らも非常に楽しかったですよ。今後もっと増やしていくつもりです(笑)」

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そんなギャグシーンが目立つ本作だが、何を隠そうあの絶望的な傑作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に続くMCUの新作となっている。監督は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を鑑賞した時、何を思い、本作の製作時に何を意識したのだろうか。

「『アントマン&ワスプ』を撮り始める前に、僕は脚本を読んでいてストーリーを知っていたんです。何が起きるかも……全て知っていました。ビジュアルエフェクトが完成する前の段階でのものを鑑賞しましたが、そんな状態のものでもすでに胸を突き刺すような、エモーショナルなものでしたね。内臓をえぐられるような、殴られるような結末でした。

僕らは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の後に『アントマン&ワスプ』が公開されること、そして僕らの映画のトーンが全然違うことを知っていました。それに、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を鑑賞したファンが、本作の中に“繋がり”を探すはずだとも考えました。しかし、本作ではあまり『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』との“繋がり”を持たせていないのです……最後の最後までは。映画館でファンの後ろに座って、反応を見たいくらいです(笑)。

『アントマン&ワスプ』が『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の後の作品という意識も持っていましたが、それより自分たちが掲げていた目標に全てが到達でき、目指していた明るく楽しい映画を生み出せたことに非常に満足しているんです。なので、ファンの方に気に入ってもらえたら嬉しいですね」

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シリアス路線まっしぐらであることが予想される、来年公開予定の『アベンジャーズ4(仮題)』に、アントマンは持ち前のユーモアをもたらしてくれるのだろうか。

「どうだろう、クリフハンガーになるでしょうね。彼を待ち受ける結末は、僕が子供の頃にみた『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』を見た時の感覚を思い出させるんです。『ハン・ソロ!?』って(笑)

あの時は新作が出るのに3年間待たなければいけなかったし、その間ずっと彼がどうなるのかばかりを考えていました。ただ、『アベンジャーズ4(仮題)』は来年に公開されるから、安心してください」

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ファンミーティングの模様

たくさん興味深いエピソードをお話してくださったペイトン・リード監督ともお別れの時間が。最後に、『アントマン』を観ていなくても、いやMCUの他の作品を全然観ていなくても、『アントマン&ワスプ』が十分楽しめる映画である理由を話してくれた。

「僕らはこの映画を、大きなユニバースの一部の作品として作っていますが、基本的には何も知らない人が、この作品だけを観ても楽しめるような体験を生み出したかったんです。なので、最初の『アントマン』を観ていなくても、他のMCU作品を観ていなくても大丈夫! 本当に楽しい時間を過ごせるはずです。一作目から繋がっているストーリーではありますが、これはあくまでアントマンとワスプがどうなるか、ワスプが彼女の母親を救い出せるのか、という映画なので」

MCUとしては20作品目となる『アントマン&ワスプ』は、8月31日(金)より公開中。

『アントマン&ワスプ』

8月31日(金) 全国公開

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監督:ペイトン・リード 
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ポール・ラッド/エヴァンジェリン・リリー/マイケル・ダグラス/マイケル・ペーニャ/ハンナ・ジョン・カメン/ローレンス・フィッシュバーン 
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 
©Marvel Studios 2018
詳細はこちら

text by ANAIS

ANAIS

ANAIS

映画ライター/コラムニスト

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