慎ましく話す言葉をかき分けながら、ふと声のトーンが上がった瞬間があった。

「いま言われて初めて気付きました」

俳優斎藤工さんが出演する新作映画『HiGH&LOW THE RED RAIN』はEXILE TRIBEが創りだす壮大なエンターテインメントの映画版第2弾だ。テレビドラマ、動画配信、コミック、ソーシャルメディア、音楽、映画、ライブと連なるエンターテインメントの直線は、文字通り『世界初のエンターテインメント』を視座しながら、『HiGH&LOW』の世界を作り出していく。その中で斎藤さん演じる雨宮兄弟は映画第1弾『HiGH&LOW THE MOVIE』で最も謎に包まれた存在だった。雨宮兄弟の次男雅貴を演じるEXILEのTAKAHIROさん、三男広斗を演じる三代目 J Soul Brothersの登坂広臣さん、一体その長男尊龍(周囲からもっとも強いと言われる存在)を演じる人は誰なのか? その心境について斎藤さんは、「僕は『HiGH&LOW』を見ていた一視聴者として、長男は誰なんだろうと思っていましたし、自分でキャスティングしていました」と振り返る。そしてその役が自分に回ってきた時「不思議な感じでしたね。巨大なお祭りに神輿の担ぎ手として、やや重めの担ぎに呼ばれたというプレッシャーはいい意味でありました」と話す。

【インタビュー】NEW MOVIEのあの人。斎藤工、映画『HiGH&LOW THE RED RAIN』 7f9609212c7091b96b8c823a5cfe3ed4

以前斎藤さんは、自分の個性について興味深い言葉を残していた。「前に出るのではなく、引くことで自分の世界観を見つけ出したんです。」個性を引き出す”引き算”は、尊龍役でも実践されている。「役を作り上げる時、消去法でキャラクターを作っていきました。」これまで髪が長いキャラクターは出てこなかったことに気づき、「髪を伸ばして結わこう」と決めた。しかしそこには、「出てこなかった」という理由以上の意味がある。「あの雨宮兄弟の長男が務まる人間力がある人は、EXILE HIROさんであり、アクション監督の坂口さん(匠馬敏郎さん)であり、ゼロレンジコンバット(格闘術)の創始者の稲川先生であり、みんな共通して髪が長かったんです。」

尊龍の外見に対する極みは続く。「タトゥーをしたいと思いました。復讐が一つのライフミッションになっているので、鏡で顔を見た時、常にその思いを忘れないために印字として必要だと思いました。最初は、自分の顔は見えなくていいので、顔全体にタトゥーをしたいと思っていました。」

えっ! 怖い……尊龍が顔中にタトゥーをして私を睨んできたらそれはそれは怖い……けど最強の男の長男には合っているかもしれない……引き算で役作りをする姿勢は、終盤の斎藤さんのセリフに最もよく表れている。「自分で役作りをしてきたというよりは、必然的に周りから埋めていって、残った部分が尊龍になりました。」

さらにプラスを与えたのは、斎藤さんの日常の役作りだ。「雨宮3兄弟の兄弟役として知っていくよりは、TAKAHIROさんと登坂さんの人となりを感じたいと思いました。」一緒に何かを共有する時間ではない時間に、2人をどのように感じるか。フィクションの中にリアルを持ち込むために、徹底的に2人を深掘りしたという。「登坂さんがご自身のフォトエッセイを出されていたり、TAKAHIROさんがソロワークのベストアルバムを出されていたり、2人の表現に日常的に触れることを意識しました。」3兄弟のリアルさは斎藤さんの日常に染み込み、尊龍へと繋がっていく。

【インタビュー】NEW MOVIEのあの人。斎藤工、映画『HiGH&LOW THE RED RAIN』 cbf92b553feb13d8a3122976d96806f0-700x467

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