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奈良拠点で活動するリョウナの一人バンドARSKN(アルソコニ)をご存知だろうか。90年代グランジやオルタナ・サウンドとメンタリティをかき鳴らしながら、バンドはあくまで形態でしかなく、リョウナ個人の表現を最適化した結果でしかない。ライブでは観客に楽器を担当させ(もちろん合意の上で)、洋楽のカバーをその場で披露し、それがうまくいこうが破綻しようが、そこに一体感を求めている訳でもなさそうなのだ。

加えてCDの販売方法もTシャツを買えばCDが付帯するという、ちょっとシニカルとも言えるし、CDというメディアで音楽を聴かない世代にはむしろ理にかなっていたりする手法をとったりもする。

グランジ的とはいえ、ことさら希死念慮に取り憑かれている訳でもなく、生きている時間は死ぬまでの暇つぶしでもあり、それならいかにその時間を面白くするか、その面白さの質に妥協しないかが、案外、あらゆる世代の心の一番深いところにある本当のところなのではないか。

てっきり金髪だと思っていたリョウナはすでに鮮やかな緑色の髪に変わっていて、不思議な違和感を醸し出しながら下北沢の街を浮遊していた。

ARSKN(アルソコニ)/TOUSOU[MV]

Interview:ARSKN

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——リョウナさんの音楽遍歴的なものってどういうものだったんですか?

ちっちゃい頃からエレクトーンを習ってて。運動できなかったんで、なんとなくエレクトーンやり続けて、中学校入ってからは吹奏楽部入って。で、高校に入ってバンドをやり始めた感じです。

——元から音楽は好きだったんですか?

いや、そんな。なんかやれたからやっとこう、みたいな感じでやってて(笑)。

——高校の時、周りでは何が流行ってたんですか?

何が流行ってるとか、あんまし興味がなかったんで。ただ、吹奏楽部におる時、人が多すぎて、統率取れないじゃないですか。自分のやりたいことがやれなかったから、少人数でやれる音楽、友達誘ってやれそうなことって考えて、「あ、バンドやったらやれそうやな」と思ってバンドやった感じですね。高校の時はだいたいずっとドラムと二人でやってて。

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——ARSKNはバンドサウンドだけど、一人でやっていて。一人の方がやりやすいからですか?

めんどくさいじゃないですか。バンドって一個のマインドとか音楽性をちゃんと持って行きたいから、2人も3人もおったらややこしい。2人とか3人で同じ方向向いてやれるんだったらバンドはバンドでいいと思うんですけど。俺はバンドやってるというよりもバンドっぽいものをやってるって感覚ですね。

——バンドサウンドをやりたいっていうところでの影響ってなんですか?

初めて聴き始めたのは、それこそ僕、奈良なんでLOSTAGEとか、そのつながりというか系統でブッチャーズ(bloodthirsty butchers)とかを聴いて、かっこいいなと思って。一応、入りはそこからですね。

——LOSTAGEは自然と出会った?

そうですね。ライブでも見たり。でも僕、ライブハウスって全く行かないです。LOSTAGEは今も観に行きますけど、ほんまにそれ以外はほぼ観に行かない。

LOSTAGE 「さよならおもいでよ」

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——それ以前にも好きなバンドはいたのでは?
でもそれまで好きやったバンドは覚えてない(笑)。マジで好きやった記憶があまりない。

——ARSKNを聴いてるとどうしてもニルヴァーナや初期のオルタナ、あとはフガジとかを思い浮かべるんですよ。

そうですね。そこに関してはどうしても好きな音楽が90年代初期の感じがあるんですけど、僕の中では正味そんなにニルヴァーナ好きじゃなくてーーま、好きなんですけど、そんなに聴くか? って言われたらそうでもなくて。当時のグランジみたいなムーブメントに近い音楽は性格的にも合ってるし、音楽的にも好きやからやりたくて。当時上の世代の人らが聴いてたような音楽が好きで聴いてて、僕らぐらいの歳の歌詞を乗せるっていうことがやりたくてやってるっていう感じですね。

——今ってどんな時代の音楽も聴けるから意識的にいろんなものを聴きすぎないようにしてたりしますか?

や、全然、色々聴くっす。主に好きなのはハードコアパンクとか、ブラック・フラッグとかマイナー・スレットとかバッド・ブレインズとかあの辺がめっちゃ好きで。

Black Flag – Rats Eyes – (Live at the Bierkellar, Leeds, UK, 1984)

Bad Brains – Rise

——サウンドだけでなく、あの時代のマインド?

そうですね。あの時代のマインドを持ちつつ、かつなんやろな? 実際ハードコアパンクをやらへん人の音楽じゃないですか、グランジって。なんか強い精神と弱い精神の融合的なのはすげえ俺に合ってるなと思って。ルーツ的にいうとそうですね。

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——ハードコアパンクの人は生き方や思想がはっきりしてて。リョウナさん自身は自分はそれではないけれども、っていう感じ?

そうですね。それが好きって感じ。

——なるほど。そういう生き方をしようとしたらまた違うし?

できないですからね、僕は(笑)。

——その世代の人たちを好きなグランジ世代の人の気持ちがわかるっていうこと?

なんかそんな気が。俺の解釈ですけど。言ってることは刺々しいけど実際はちょっと弱いみたいなところが。ブラック・フラッグめっちゃ好きなんですけど、弱さゆえの強さみたいなんがハードコアパンクとかっぽいなって、俺の個人的な解釈でARSKNの今のスタイルがあるって感じですね。

——今の時代にやるとストレートな存在というより、トリックスター的に見えるんですよ。

ああ、そうですね。やっぱそこはハードコアパンクってカウンターアクションじゃないですか。メインのカルチャーに対する。そういう意味で今ってマジで何も面白くないから、極端にマジでなんでもいいから面白いことやりたいし。正直、音楽性とかクソどうでもよくて、その時面白かったらなんでもいい。だからもしグランジがめちゃめちゃ流行ったりしたら、グランジなんか絶対やらないし、ハードコアパンクとか流行ったら絶対やらないし。

初インタビュー|1人バンドARSKNが虚無の中で鳴らすグランジ in180718_arskn_pickup10-1200x800

——今の時代のグランジの精神性で言ったらヒップホップの方が多かったりするし。

ああ、そうですね。Lil Peep的な?

Lil Peep – Awful Things ft. Lil Tracy (Official Video)

——やっぱりいろんな音楽聴いてるんですね。

聴いてるっすね。なんか悪そうな音楽好きなんで。頭悪くて見た目も悪くて、悪そうな音楽好きなんで。なんかハンバーガーみたいじゃないですか?

——体に悪そうってこと?

そう。そういうすげえ「ザ・悪そう」な感じ。掴んで食べてるみたいな。

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——リョウナさん自身、“ファッション・ヤンキー”を自称してますからね。

そうそう(笑)。だからギャングスタ・ラップとかめちゃ好きなんですよ。ハードコアパンクも若干悪そうなとこあるし。僕が実際まぁそんなに悪くもないし、強くもないんで無い物ねだり的な感じで憧れるんっすよね。

——なるほど。お笑いも好きそう。

お笑い好きっす(笑)。

——どういうタイプの笑いが好きですか?

あのねー……最近はめっちゃ人気ですけど、野性爆弾とか千鳥とか最近名前聞かん金属バットとか。でも、お笑い界で一番パンクスなのは江頭(2:50)ですよね。心からリスペクトしてます。あれはやばいです。命かけてるもん。LOSTAGEと同じぐらいリスペクトしてる。

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——どこか通じるものがあるのかも。ところでライブにお客さんを参加させるんですよね。

ああ、今日も初めて会ったやつ、「今日ギター弾いてや」って言ってからきたんですけど。

——なんて言われました?

「お、ああ。わかった。曲名教えて」って、カバーやってるんで。「一緒にカバーしようや」って言って。

——それはお客さんに参加してもらうことでハプニングを起こそうと?

かな。「こいつ全然、ギター弾かれへんやん」ってやつ、たまにいるっすね。そういう時は「ハズレやったな、今日は」と思うけど、それも含めて面白いみたいな。ライブで「聴いてほしい」と思ってやってないんで、音楽を。聴きたかったらCD買って、家でイヤホンとかで聴いたらいいし。ライブは別にそういうのじゃなくて、大まかに言ったら、「遊べる」みたいなイメージできてほしい。絶対、今、俺らぐらいの歳の子やったら「観にいく」みたいなイメージの子が多いし。だから俺、あんまライブハウスって好きじゃない。なんか「観にいく」みたいな感覚で行くし、別に行ってもCD以上のことは起こらんと思ってるんで、家で聴いてる方が音楽としてはいいと思うし。だからライブハウス、あんま好きじゃない。

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——他のバンドを見ていて「違うな」と思う?

そうですね。大体の人には。まぁ「違うな」っていうか……バンドって誰でも出来るじゃないですか、やろうと思えば。だからバンドを別にやらんでいい人間がめっちゃバンドやってると思うんですよ。楽器持っただけのパンピーみたいなのがステージ上がって、当たり前のことを大声で言うみたいな。そんなん見せられたらたまったもんじゃないんで。

——(笑)。

僕はずっと言ってるんですけど、血が違うと思ってるんで。それをやるべくして生まれてきてる人間のライブを観に行こうと思うんですけど、まぁあんまりそういうのいないもんな。

——音源のリリースも自覚的ですね。『HELLS』を買おうと思ったらTシャツを買わないとだめっていう、あれ最高で。

ははは。

——どういう発想ですか?

普通にイケてるTシャツを売りたくて、で、より買って欲しかったから音源をつける。あとはまぁみんなどうせ着てるTシャツ、ダサいTシャツばっかりやから、俺らのイケてるTシャツみんなで着たらいいやん、みたいな発想です。

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——「HEALTH AND DEATH」ってTシャツのプリントも最高です。Tシャツこだわってるでしょう?

結構。バンT大好きなんで。あれってそんなにバンTぽくないでしょ。

——ぽくないですね。別にバンドのこと好きでも好きでなくても、あれがかっこいいと思った人は欲しいと思います。

そうですね。それによってあんまバンド興味ない人でも気にしてくれそうやしと思って作ったんです。

——CDがおまけみたいになってるけど、人によっては反対かもしれない。

そうかもしれないですね。1曲で売りたかったんですけど、1曲で100円とか嫌やし面白くない。100円って買いやすいじゃないですか。買いやすいって理由で買われたら嫌やから。ちょっと値段上げたかったのもあって、じゃあTシャツつけるか、っていうのもありました。

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——Tシャツを売りたいのかな? と思ってたんですけど(笑)。

いや、Tシャツも売りたいんですけど、二つの理由がたまたま重なったから、ああじゃあ一緒に売るかと。

ARSKN(アルソコニ)/HELLS[MV]

——歌詞の話をするんですけど、「結局この人はどうしたいの?」という歌詞が多くて。もちろん人間、生きたいとか、死にたいとか、普段意識しないし、一日の中でも心境は変わりますよね。でもそれを歌詞として取り上げて確信犯的に書いてるなと思って。

そうですね。やっぱゼロか100か見たいな性格なんで、僕が。そのゼロか100かを突き詰めた時に、結局、生きたくもないし、別に死にたくもないしって言い出したら生きてる意味がないから。ってなると面白いことをやろうって思うしか生きる意味がないんで、さっき言ってたみたいに「とりあえず面白いことを」って発想につながるんですね。

——生きてる意味について考えること自体は表現の王道だけど。

暇なんですよ(笑)。

——(笑)。

時間があるんで。だってもうそんなに楽しいことないと思うんですよね。何か知りたいなと思ったらネットで出てくるし、こんなとこ行きたいなと思ったらネットで出てくるからすぐ行けるし。

——でもリアルで行けないとこもあるでしょう?

でも情報が多いじゃないですか? 写真が見れたりとか、誰かの感想があったりとか、映画見るにしても音楽聴くにしても。誰も触れてないものってあんまりないし。でも人間ってそういうものを求めてるはずやから。って考えたらやりたいことがないです、全く(笑)。

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——すでに手がつけられてる。

そうですね。多分現代っ子的な考え方やと思ってるんですけど、「知らんことはない」と思ってるフシがあるんで。知らんこともやったことないこともいっぱいあるけど、全てを知った気になってる気がするんですよね。世の中の情報量の多さで。

——それってちょっと諦め入りますよね。

だからとりあえず楽しいことやろうって。

——10代の反応はどういう感じなんですか?

10代の人……あんまこないな。

——同世代か上の人に興味持たれることが多い?

そうですね。《健康になりたい》(“HELLS”の一節)って歌詞がおもろいな、ってのが一番よく言われるんですよ。

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——「健康になりたいな」の反面、健康になってどうするの? って歌詞で。

そうですね。これずっと思ってるんですけど、健康に生きるってことは普遍的な幸せの一番大事なところじゃないですか。健康じゃないと幸せになれへんから。でも逆にその普遍的な幸せを手に入れると、生きてる意味があるんかないんか分かれへん、幸せに生き続けることに価値があるのかどうかみたいな。幸せに生きても死んだらもう終わりじゃないですか。みんな忘れていくし。

——その感覚って、違う表現でも優れたロックバンドは歌ってきたことだと思います。基本的には幸せな状態でいたい、でもすぐ飽きるってことを極端に書いたらこうなる?

そういうことですね。

——ひどい目にあったり病気になったりしたらまた全然違う歌詞が出てくるかもしれないけど。

そうですね(笑)。でも今は若いからとは思わへんし、今俺が思ってることが一番正しいって思うしかないから。友達には言われますけどね、「死にたいとか何で書くん?」とか。死ぬわけじゃないねんから書いてもいいやん、って。そういうの真に受けるやつはアホやから。

——確かに。全体の文脈で捉えてよって思いますね。

僕、詞で言ったらINUの時の町田康(町蔵)、めっちゃ好きなんですよ。あの人の歌ってることとかまじでしょうもないけど深読みしてしまうみたいな。で、実際にあの人は何か思って作ってるかもしれへん、みたいなとこが俺は一部分、歌として綺麗やなというか、面白くて意味があって。

初インタビュー|1人バンドARSKNが虚無の中で鳴らすグランジ in180718_arskn_pickup15-1200x800

——確かに未だに「メシ喰うな」って洗練されたアルバムだなと思います。81年の作品であるにも関わらず。

ほんまにトリッキーやし、聴いちゃうし。すごく芸術的やなと思います。

——リョウナさんはいいものにちゃんと行きついてますね。

だから血が違うんですよ(笑)。なるべくして生まれついてきてるんで。

——いろんなムーブメントがあって、周りにもいろんなバンドがいると思いますけど、ちゃんと巡り会えるのは才能だと思う。ところで関西は個性的なバンドが多いと言われますけど、現場にいるとどう感じますか?

関西は、ま、俺の個人的な意見ですけどライブハウス文化みたいなのが根付きすぎて、音楽をやってるっていうよりバンドをやってるっていうか。だからそれこそバンドやってる子はヒップホップを聴かへんし、おんなじイベントにも当たらへんし、他の服装とかカルチャーとかにも左右されず、ただバンドやってるみたいな。

——ライブハウスに出るための活動をしてる?

ていうイメージが俺はある。

——それじゃ広がらないですね。

もちろんかっこいいバンドもいるんですけど。地元一緒でめちゃくちゃ仲良いバンドはAge Factoryがいるんですけど彼らは最高ですね。大好き。

——奈良は少数精鋭な感じはしますね。

そうですね(笑)。LOSTAGE。Age Factory、俺ら。奈良はいいですね。

Age Factory “Moony” (Official Music Video)

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——現時点ではライブ活動がメインだと思いますが、次の野望はありますか?

音源はみんなが欲しがってくれたら作りますけど。新しいの作らんでも今ある5曲入りの『TOUSOU』がめっちゃいいんで。まずそれもっと聴いてもらって。で、ライブにももっと来てもらってっていうのが理想っすね。

——確かに『TOUSOU』の曲は似てるようで全部違うタイプの曲だし。

ほんま飽き性なんで。その時好きな曲を作りたいんで。

——じゃあいかに面白がってくれる人が増えるか? ですか。

そうですね。きてくれたら面白いことするんで、とりあえずきてもらって。音源で面白いことそんなにできへんから。音源は普通に音楽作りたいから(笑)。

初インタビュー|1人バンドARSKNが虚無の中で鳴らすグランジ in180718_arskn_pickup16-1200x800

初インタビュー|1人バンドARSKNが虚無の中で鳴らすグランジ in180718_arskn_pickup7-1200x800
左:リョウナ/右:森田恭介(サポートドラム)

EVENT INFORMATION

silver elephant presents しるえれコネクション
-ガールズ・オン・ザ・ビーチ-

2018.07.24(火)
OPEN 18:30/START 19:00
吉祥寺シルバーエレファント
ADV ¥2,300/DOOR ¥2,800(1ドリンク別)
RingRingLonelyRollss
SUPER SHANGHAI BAND
ARSKN(奈良)
GRASAM ANIMAL
しんきろうのまち

詳細はこちら

RELEASE INFORMATION

TOUSOU

2017.06.25
ARSKN
¥1,000

オフィシャルサイトTwitterInstagram

photo by 横山マサト
text by 石角友香

石角友香

石角友香

ライター

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