今年2月には初の画集『Endless Beginning』を刊行し、顔のない女性を描いたモノクロのイラストで注目を集めたオートモアイが半蔵門・ANAGRAにて個展<THIS CAN’T BE LOVE>を2018年6月23日(土)から同月30日(土)までの一週間に渡って開催中。

そこでオートモアイと、今回開催のギャラリーANAGRAより西山藍とステートメントを書いた柴田さやかによる対談が実現。今回なぜモノクロではなくカラーで描いたのか。なぜ顔のない女性の絵を描き続けているのか。あらゆるアートを現場で目撃し続けてきた2人がオートモアイの世界観を紐どきます。

【対談】「顔がない女性の絵」を描くオートモアイの世界観に迫る art_culture180625_auto_moai_2-1200x1696

Interview:

オートモアイ × 西山藍(ANAGRA) × 柴田さやか

なぜ顔がない絵を描くんですかって聞かれた時に「じゃあなんで顔を描くことが必要なの?」って思う

西山藍(以下、西山) なんで顔がない女の子の絵を描き始めたの?

オートモアイ 当時私は特定の人としかコミュニケーションをとっていなくて、人間関係なんてすごく狭かったの。ある日突然、ここで私が死んでも誰も気づかないんだろうなって、ふと思って。みんな他者とのコミュニケーションで自分の存在を認識するわけじゃない? それがなくなると自分の存在を認識できなくなってくる。

そもそも、なぜ顔があるのが当たり前だと思うのか、個人として特定できるものがあるのが当たり前なんだろうか。っていうところで、顔のない絵を気付いたらめちゃくちゃ描いていたっていう感じ。

逆に顔がないことでそこに共感を得やすくするってこともあるんだけど、現実世界でも街ゆく人のことなんて覚えてないし。

あと世界観の設定としては、他者と自分の境界線のない世界、夢と現実の境界線のない世界というか。ありとあらゆる何かを区別する境界線、空間、時間軸が払拭された世界。

そこでは愛と暴力も同等で無価値っていう、価値観すらもフラットになってる。生死の境界線がないんだったら死の恐怖とかもないじゃん。永遠に生き続けるかもしれないし。約束された終わりのない、それはユートピアなのかディストピアなのかっていう感じだけど。半永久的な世界。

柴田さやか(以下、柴田) オートモアイの絵の中に感じてる自由なイメージというか心地良さっていうのはそこだなと思ってて。積極的な行動をしてる人が多いなと思うんですよ。殴ったり食べたり。サボってたり寝てる子もいるけど。怒りっていうのも腸煮えくり返るようなものじゃなくて、ちょっと気に入らない程度で、遊びに近いような怒り。

オートモアイ 死ぬことが永遠にない世界だと、暴力も娯楽になるよね。

柴田 石に顔があったりするよね。

オートモアイ 人以外には顔がある。人以外は有限なの。都市は衰退してくし物も壊れるけど、あの人達はあの年のままに永遠に生き続ける。どこからやって来たのかもわからないし、気づいたらあの大きさのまま、永遠に生き続けるっていう。

「美術って何ですか」って質問が来た時に「これは美しい術だから」って言われた

柴田 オートモアイは鑑賞を大事にしてるけど、関係を持つことは全く望んでないんだね?

オートモアイ うん。関係を持つことによって物語は終わってしまう。映画とかもそうじゃない? 関係を持つことによってシーンとか時間は変化していくから。必ずしも終わらないことはないし。

西山 無だね。

オートモアイ 無なんだけど、無は静かじゃない。静かなものも必要だよねって思う。

柴田 絵の中は賑やかだけど、うるさそうな感じはしないよね。

西山 うるさそうな感じはしない。なんか「音楽」を感じないかも。

オートモアイ 描いてるとき何にも聴かない。音楽を聴くの疲れるから、音楽を聴くときは音楽を聴くとき。絵を見るときは絵を見るって感じで、全て分かれてる。

柴田 でもそのイメージなのにCDジャケットとかフライヤーの仕事が多くあるじゃない? オートモアイの絵の中に音楽はない。だけど音楽の仕事はめっちゃある。それは余白が受け入れられてるってことかな?

西山 メンタルのところに共鳴を受けてたりするのかな。

オートモアイ 音楽が鳴ってないってことは、そこの入る余地があるってことなんじゃないかな。私はあまり家で音楽聴かないかも。お金を払って聴きに行くものと思っている。

柴田 そこはさっきと違って体験だね。人と関わろうとしてるね。

オートモアイ 音楽も良いけどパーティが楽しい。

西山 なんか元気になったんだね。最初顔ない人の絵を描き始めた話聞いてたら、パーティには絶対いない人じゃん(笑)。

オートモアイ 最初の方は、家に帰って絵描くか仕事行くか、それしかなかったからね。

初めて個展をやった時に、本当に暗い人は作品を外に見せることなんてできない、内にこもっちゃって外に出せないからって言われて、作品を見てもらうことは、その作品がどういうものであれ、例えばフェティッシュやダークな世界観だったりしても、それを人に見てもらうことはその人が生きることに前向きなことだからと言われたのは今でも覚えてることかな。

あとは美術とは何だって話になった時、「美術って何ですか」って聞いたら「これは美しい術だから」って言って。それはかなりグッときて、未だに覚えてる。

小さい頃ってぬいぐるみ生きてたらいいなって思ったりするじゃない?
それを大人になっても思い続けて、魚の内臓をぬいぐるみの中に入れたら
それが生き物として成立するんじゃないかっていうシーンを描いたの

柴田 ANAGRAとの繋がりはいつから?

オートモアイ ANAGRAの先代・細野晃太郎さんの時からだね。その後あいちゃん達に代替わりしてからは個展とグループ展と壁画のイベントと周年かな。

西山 結構お願いしてるね。

柴田 その間なんか変わった?

西山 オートモアイはずっと変わってるよ。オートモアイはいろんなものに多感で、すごい速さがあって、そこはすごい良いことだと思う。言ってることとかやってることがコロコロ変わるというか。歳をとって行くととトレンドとか今面白いものを見つけにくくなってくると思う。ずっと旬ではいられなくなってくるんだよ、女って。でもオートモアイは私と同い年くらいなのに、未だそこが超ティーンエージャーというか。

オートモアイ ずっと言われてる! 年上のお姉さんが多いから20代前半からずっと言われてて。嘘だろと思ってた。多分飽き性だからなんだと思うよ。

西山 変化が続いてる。さっきも言ったけど、今興味があるものがちゃんと絵に反映される人だなって思ってる。個人的に面白いのは、出てくるもので小物とかは近くにいるから分かるかることなんだけど、あれ描いてんの! っていうものが出てくると嬉しい。すごくあの世界は遠いんだけど、近い。見えないけどここなのかもしれないな、みたいな。そんな感覚がある。

柴田 そうだね。2月にOVER THE BORDERでドローイングを展示するタイミングで20枚くらい選ぼうってなった時に、絵を見ながら「この時はこういう靴が流行ってたんだよ」みたいな話をしてて。なんかその瞬間に旬なものがカチッと入ってくるから、その面白さは同時代に近くにいるからこその特権だよね。

オートモアイ 今はひよこの剥製がめちゃくちゃ欲しくって。調べてたら双頭のやつがいるの! 作り変えてるっぽいんだけど。そう考えると。グロテスクなモチーフが多いかも。

最近はユニコーンのぬいぐるみを買ったんだけど、すごい可愛い。小さい頃ってぬいぐるみ生きてたらいいなって思ったりするじゃない? それを大人になっても思い続けて、魚の内臓をぬいぐるみの中に入れたら、それが生き物として成立するんじゃないかっていうシーンを描いたの。そのユニコーンを開くと中から「私を愛してるなら私を忘れて」っていう紙が出てくる(笑)。無知故の玩弄っていうようなテーマでこの絵を描いた。

西山 すごいよね。1枚の絵を見て映像が浮かぶっていうか、映画みたいというか。そういうのを1枚の絵で想像させるのが魅力だよね。でも、色を使うとは思ってなかった。前回の色の使い方は、なんかわかるというか。

【対談】「顔がない女性の絵」を描くオートモアイの世界観に迫る art_culture180625_auto_moai_1-1200x997
“Endless Beginning”455 x 380mm,acrylic on canvas, 2017

柴田 色は使ってるけど、概念はモノクロームだったよね。

オートモアイ 前回のはPCで作業してる時のイメージに近かったかも。レイヤーがあることが前提。1番手前にある女の子のゾーンも軽く描いたものをイラレ(Adobe Illustrator)にぶち込んで、パス化した時の荒い感じのイメージで描いてた。

柴田 今回のメインビジュアルに使った絵あるじゃないですか。前回からずっと色に興味があるようだなあと思ってたけど、どうだった?

オートモアイ 前回の作品の感じは一回置いておいて良いかなと思ってて。ちょっと悩んでがっつり筆で書いた感じのモノクロの作品を書いてみたんだけど、今はちょっと違った。それで、どうしようかなと思った時に、今までのドローイングがカラーで大きい作品になったら、それも成立するんじゃないかなって思って、カラーにした。色数が増えたっていうよりかは、もともとあったドローイングを発展させた感じかな。

西山 オートモアイの絵は手の跡が見えるじゃん。それってオートモアイが意識してやってるのかと思ってた。

オートモアイ 意識してやってるわけはないよ。でも、今回はその感じは強いかも。手で描いてるというか、自分で予測できない感じをやるってのが面白くてやってるもかもしれない。

それよりも、これまでの白黒のドローイングとか前作は、データにしてフォトショップに入れたら全部平坦で綺麗なものができると思ってたから、なんで自分でやらなくちゃいけないのかっていう苦痛がすごいあった(笑)。

初めての個展(高円寺・Pocke)の時に、モノクロのドローイングのみを壁にバーっと貼るっていう展示をやったのね。呪いの家みたいにしてやろうと思って。それで結構いろんな人が来てくれて。その時に来てくれた美術やってる友達から「この世界観とモチーフでカラーが見てみたい、この世界にはどんな色がつくんだろうね」って言われたの。でもずっと時間もかかるし、やりたくなかった。

柴田 今でも作品を作るスピード感を重視してるじゃん。とにかく新しい絵を描く負荷になるものは排除したい、そういうの要素として「色」があったってこと?

オートモアイ そう。これは訓練してかなきゃできないんだけど。感覚的にできないことは自分の身になってないからやりたくない、みたいな。だからちょっとずつトレーニングしてる!

どこから来たのか、どこにいくのかわからない
永遠に生き続ける顔のない女がいるってすごく変な空間で面白いよなって思う
すごく平和でいいと思う

柴田 気持ちには追いついてる?

オートモアイ 追いついてる。でも、これは技術が上がるよりも感覚がもうちょっと早くなるのと、ものの色・形とかをもっとたくさん知れたら発展性があるなって思った。最近いろんなものを見る機会が多くて、今までは立体のものにも興味がなかったんだけど、そういうものに興味が出てきた。

古着とかもそうだけど。なんのために作られて、いつの時代のものはこういうものが多かったりとかを見てると純粋に面白いなって思った。私たちの生活もそうだけど、いろんな時間のものが点でバラバラに置いてあるのは、それだけで画面として成立するんだろうなって。

そこにどこから来たのか、どこにいくのかわからない、永遠に生き続ける顔のない女がいるってすごく変な空間で面白いでしょう。すごく平和でいいと思う。

柴田 描いてても、絵の話をしてても、常に客観視してるよね。

オートモアイ 人に見せるもの作ってるからね。人が見なかったらしょうがないし、人に見せる前提で描いてるものだもん。

西山 私、オートモアイの絵は、顔はないし生きてないんだけど、生活感が出てるところが好きなんだよね。

オートモアイ 生活感を出しているつもりはないんだけどね。今回はタイトルもそうだけど、個人的なストーリーとして、そこにあるものとして描いてる。脱いだ服があったりとか。

西山 同じ時代に生きているからこそ、身近に感じるのかもね。それは未来の人が見たらまた違う感覚になるだろうし、外国の人が見たらそれも違うだろうし。

柴田 なんなら都市にいる・いないで違うよね。同じ時代・街で過ごしているから分かることとか、感じられることがあって、時間と距離が遠くなるとまた違うパラレルワールドみたいになってくるんじゃないかなと思ってて。時代と場所が変わった時に意味とか価値とかが変わってくるだろうなと。

オートモアイ なんでもあるところにありながらも、虚無感を覚え続けるっていうのも描きたいものではある。私は新宿が大好きなんだけど、すごい街だよね。本当になんでもあるのに、どこか殺伐として何にもない。地震の後にすごく思った。新宿を一人で歩いてたりすると、それこそ自分がどこから来てどこへいくんだろうって気持ちになってくる。

オートモアイ

1990年生まれ、神奈川県在住
2015年頃から絵を軸にした活動を始め、アノニマスな女性像をベースに非現実的な世界を描く。
これまでの主な仕事はCDジャケット、グッズデザイン、イベントフライヤー等
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柴田さやか

1985年生まれ、2012年東京工芸大学大学院芸術学領域修了。大学ギャラリーやアーカイブ勤務後に展覧会ディレクターとして個展や店舗ディスプレイをメインに従事。2017年からはミューラル制作にも携わる。
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EVENT INFORMATION

THIS CAN’T BE LOVE

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2018.06.23(土)〜30(土)
月〜金 15:00〜22:00 / 土日 14:00〜21:00
ANAGRA

展示作品
絵画新作約10点、会場内壁画 
販売
オートモアイ作品、omeal the kinchaku コラボレーション巾着
クロージングパーティ
30日(土)18:00〜22:00 
EMARLE、yolabmi、メトロノリ、不時着、Constellation Botsu
DOOR ¥500 with 1Drink

詳細はこちら

オートモアイOVER THE BORDER

船津晃一朗

船津晃一朗

Qetic編集部

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