——では今回、フューチャーベースなどDTM系の音楽を多数リリースしているMonstercatなどから作品を発表しているUKのプロデューサーMYLKや、Radical Hardcore Cliqueをトラックメイカーとして迎えたきっかけというと?

W-Trouble もともとMYLKさんはFEMMの曲のリミックスをインターネットに上げてくれていて、それを聴いて今回のプロジェクトに合うのではないかと思ったんです。それでコンタクトを取って、最初に上がってきたのが“My Revolution”でした。それを聴いて、「これは間違いないな」と思いましたね。そこで自身も参加するフィメールラップ・クルーFAMM’INから、ダンス&ボーカルグループFAKY、シンガーソングライターYup’inをフィーチャリングに迎えて制作をしました。

Radical Hardcore Clique(以下、RHC)は、これまでもいくつかの楽曲でトラックやリミックスを提供してくれていて、常にFEMMに新たなテイストを加えてくれています。その流れもあり、今回も“今夜はブギー・バック”を原曲とはまったく違うアレンジに変えていただきました。

——“今夜はブギー・バック”もそうですし、他の楽曲も、原曲とはまた異なる「今のサウンド」になっているのが今回のアルバムの特徴になっています。エージェントのお2人からみて、メンバーの2体が特に気に入っていそうな曲はありましたか?

Honey-B 私がエージェントを担当しているRiRiは、“淋しい熱帯魚”が気に入っていたようです。Winkさんは、FEMMと比較されることの多いグループで、SNSなどでの書き込みをきっかけに彼女たちの存在を知り、それ以来とてもリスペクトをしていましたので、今回カバーできたことを非常に嬉しかったようです。

W-Trouble “淋しい熱帯魚”は、MVを撮影したこともあって、LuLaにとっても思い入れのある曲になっているようです。あとは“今夜はブギー・バック”や“My Revolution”。どれも新しいものに生まれ変わる感、そのギャップが好きで結構聴いているようですね。

FEMM – 淋しい熱帯魚 (Music Video)

Honey-B 今回の選曲に関しては、80から90年代のJ-POPの中でも「FEMMに似合うもの」を基準に選んでいきました。中には男性の曲もありますし、意外な曲も結構入っていたりして、色々なジャンルをひとつにまとめたい、ということはテーマとしてあったと思います。

——では、それをフューチャーベースやトロピカル・ハウスのような音楽に変換していくというアイディアは、そもそもどんな風に生まれたものだったんでしょう?

Honey-B これはやはり、MYLKさんとの出会いが大きかったと思います。一番最初にリミックスをしてもらったときに、彼女のガーリーでポップなテイストが、これまでFEMMが発表してきた攻めたリミックスとは違う魅力を持っていて、「こういう音楽も合うかもしれない」という新しい発見に繋がりました。

私たちエージェントも女性なので、そういうテイストはもちろん好きで「強気で攻めてきたFEMMの、こういう側面も聴いてみたい」と思うようになったんです。それで、今回は全面的にMYLKさんにトラックを担当してもらいました。

【インタビュー】FEMM最新作『80s/90s J-POP REVIVAL』でJ-POPの名曲と最新の音楽が融合する! interview_femm_0955-700x467

——メンバーのRiRiとLuLaにとっては、この新しいサウンドで、しかも日本語で歌うことは、もしかしたら大変なことだったかもしれません。エージェントのお2人から見て、レコーディング中の彼女たちはどんなことに苦心していたと思いますか?

W-Trouble FEMMはマネキンなので、インストールしてしまえばすぐに歌が入りはするのですが、それでも音の取り方が以前とは違うので、彼女たちにとっては、これまでのレコーディングとは180°違う体験だったんじゃないかと思います。きっと、最初は難しい部分もあったと思いますね。でも、最終的にはとても楽しそうに臨んでいましたよ。1曲目から2曲目までは、「おっ」と少し驚いていたような印象だったんですけどね。

Honey-B 完全に取得するまでには、練習が必要ですから。ダンスの振り付けを覚えるのにも練習をしないといけません。ちょっとポンコツなところもあるんですよ(笑)。たとえばTM NETWORKさんの“SEVEN DAYS WAR”は、MYLKさんがリアレンジしたことで、テンポがかなり速くなっています。それもあって最初はついていけていなかったと思います。日本語ならではの滑舌も難しかったはずですね。

W-Trouble LuLaを見ていると、斉藤由貴さんの“卒業”はこれまでにやったことのないような曲調で、どう表現するかについてかなり手探りだったように見えました。プロデューサーと、色々と探り合いながら作業を進めていましたね。

Honey-B そして、一番最後にレコーディングしたのはthe brilliant greenの“There will be love there -愛のある場所-”でした。この曲自体はもともと難しい曲だと思うんですが、この最後のタイミングになって、ようやく2体とも余裕が出てきていたのも印象的でした。

——RiRiとLuLaは性格がそれぞれ違うと思いますが、そうした2体の性格の違いが分かるレコーディング中のエピソードなどはありましたか?

Honey-B RiRiは格闘型のマネキンなので、気が短いんですが……褒めておけば大丈夫ですね(笑)。

W-Trouble 逆に、LuLaは攻撃的な性格ではないですけど、マイペースな子で、褒めてもらったりしてもそれをシャットアウトするような感じがあります(笑)。「はい、次」という感じで。

Honey-B そう、すごく淡々としているんですよ。

——ではお2人から見て、それぞれ相手が担当するメンバーに感じる魅力というと?

Honey-B W-Trouble がエージェントを担当するLuLaは低音が綺麗で、サビ前のメロディを担当することが多いんですが、今回だと、LuLaは苦手そうにしていたみたいですが、斉藤由貴さんの“卒業”のようなミディアム・バラードに映える歌声なんじゃないかと思います。性格の面では、私が担当するRiRiがライブ中にオーバーヒートして壊れてしまうと、LuLaが直してくれたりもするので、とても感謝しています。

W-Trouble 逆にRiRiは強気なので、LuLaを牽引する魅力がありますね。たとえばLuLaが「右左、どっちにしようかな」と迷っているときも、横を見るとRiRiはもう右に進んでいる。LuLaが迷いなく進めるようにしてくれる、姐御感が魅力的ですね。

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——タイプが違うからこそ、2体がお互いを補い合える雰囲気なんですね。

Honey-B そうですね。本当に性格はまったく違うので、ぶつかることもないんですよ。

——ちなみに、今回の『80s/90s J-POP REVIVAL』では1曲目とラストに、FAKYの4人やYup’inさんという人間のアーティストとのコラボレーション曲が収録されています。この2曲は「人間とマネキンの共存」をテーマに結成されたFEMMにとって意味のある楽曲だと思うのですが、この2つを最初と最後に持ってきたのは、何か意図があったんですか?

W-Trouble この5人とはFAMM’INというガールズ・ラップ・クルーを結成していて、これまでレコーディングやMV撮影で一緒になることも多く、数少ない人間の友人と言える存在です。

Honey-B その2曲を、最初と最後に持ってきたことには、実は深い意味はなく偶然でしかないのですが……FEMMのファンにも彼女たちのそれぞれの魅力をより知ってもらいたい、という気持ちを強く持っているようです。Lil’ FangとYup’inにはカッコイイ“強め女子”として“今夜はブギー・バック”に参加してもらって、より女性らしい表現が得意だと思ったAkina,やAnna、Mikakoには“My Revolution”に参加してもらいました。

特に最後の“今夜はブギー・バック”は、FAMM’INで渋谷区観光協会のアンバサダーとしても、一緒にずっと歌ってきた曲であり、今回のリバイバル・プロジェクトがはじまったきっかけでもあるので、テーマ・ソングのような存在です。

“My Revolution”に関しても、FEMMプロジェクト初期の頃から「やりたいね」と話していた曲で、「昔の名曲を題材にしつつも、そこから新しいものを生み出していく」という意味で、今回のジャケットにも文字が入っている「革命」にも繋がるタイトルで。そこには、FEMMの2体の「女性として強くやっていこう」という気持ちも込められているんです。

——実は、そうしたテーマがジャケットにも見事に表現されていますよね。今回のジャケットの左側には「不朽(時代を超えて語り継がれるもの)」という文字が描かれていて、右側には「革命(新しいもの)」という文字が描かれていて。その2つの道が交差するところにFEMMの2人がいるというのは、まさに今回のアルバム『80s/90s J-POP REVIVAL』の最大の魅力のように思います(※ちなみに、アートワークには他にも仕掛けが隠されているため、興味のある方は現物を手に取って見つけていただきたい)。

Honey-B そうですね。今回のアルバムでは、そうやって2つの時代が交差していくことを表現していきました。「いい音楽」は、ずっと語り継がれて、生き続けていくものだと思うので、それはFEMMの2体も歌い継いでいきたいと感じているはずですし、それを新しいサウンドと混ぜ合わせることで、また新しい発見が生まれていくこともあると思いますし。今回のプロジェクトは、彼女たちにとっても面白い体験になったと思います。

——FEMMはもともと音楽、ヴィジュアル、ダンス、テクノロジーなど様々な要素を追究しているグループだけに、こうして様々なものを繋ぐことが合っているのかもしれません。

Honey-B エージェント(FEMMのファンをそう呼ぶ)には、色々な人種、性、世代の人たちがいます。そんなFEMMだからこそ、J-POPというものに改めて焦点を当ててみることで、様々な人に日本の素晴らしい楽曲を知って頂く企画になれば嬉しいです。逆に、J-POPファンの皆さんにもFEMMを知ってもらう機会になれば、私たちエージェントとしては、非常に嬉しいですね。

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FEMM – 80s/90s J-POP REVIVAL (Spot)

RELEASE INFORMATION

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text & interview by 杉山仁
photo by 片山 拓