——音楽について、20年間で変化してきたなと思われることは何でしょうか?

ジョルト 20年間の音楽性に関しては、昔みたいにアーティストのオリジナリティというのがちょっと少なくなっているのではないかと感じます。その中で今メインストリームの音楽が多いのかなと思っています。100以上のコンファレンスなどにも出席して見てきているのですが、音楽の個性を出すっていう事が少なくなっているような気がします。それは環境の違いというのももちろんあるのですが。

Kim 僕も同じようなこと感じますね。アンダーグラウンドな音楽を扱っている人がそういうこと言うのは少し意外でしたが。

ジョルト まだ音楽の進化っていうのは120年程しかないじゃないですか。一曲約3分間の間ですら視野を小さくしているのではと感じる事が多いです。オリジナルな表現も少なくなっていると思います。そうなると、それを表現するのもやはり似たようなものになってしまいますよね。

Kim ジョルトさんも音楽はやられていたんですか?

ジョルト プロデュースはしていましたが、バンドのようなものはしていませんでした。バックアップコーラスとかはやったことありますけど(笑)。

Kim じゃあもともとは制作側ではなかったんですね。

ジョルト サンプリングをして曲を制作したり機材は使ったことはありますが、恥ずかしいので人前で演奏などはをした事がありませんでした(笑)。

【インタビュー】豪ヒップホップレーベルオーナー・ジョルト(Hydrofunk Records)×UHNELLYS ・Kim 音楽シーンの20年間を語る TARU-4396-700x466

——KimさんはUHNELLYSで歌うようになってから、アウトプットしやすくなった部分や、今の方が自由になったなと思う事はありますか?

Kim ここ数年でレコーディングの環境が変化しましたね。昔は1日何万円も出して制作というのが、今では全然かからないようになりました。自分たちが音楽をやりだした20年前は宅録というのが流行っていて、部屋でそのまま録音した音をそのままメジャーと同じようにリリースしていました。そういう環境にまた戻ってきているアーティストも多いのかなと感じます。

——MTRがDTMに変わっていったように。

Kim そうですね、カセットテープや7インチでリリースしているアーティストも増えてきましたね。音にこだわって聴くようになってきたのかな。

——制作環境の変化がバンドの自由をもたらしましたか?

Kim バンドはレコーディングでお金がかかるじゃないですか? でもトラックメイカーは自分の部屋でパソコン一台でも作ろうと思えば作れますよね。そういう時に音質にこだわらないでバンドが勝てるのはライブだと思っているので、ライブの音源をもっとリリースしていけばシーンも盛り上がっていくのではないかなと思っています。

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——制作過程ではタイガーモスとは会わずにファイルの交換で進めていくんですね?

Kim そうですね。でも全然会わなくても大丈夫なんですよ。今回はオーストラリアとやりとりをしていますが、実際に会わなくてもテクノロジーによって制作できるのはスピーディーですね。来日はするんですけど、そこで共演はして、僕も年末にはオーストラリアへ行く予定です。

ジョルト 実際に会わないけど楽曲制作をしてツアーに出るというのは、環境的に言えば種をまいてそれが花になっていって、さらにそれが繋がって大きくなっていくんじゃないかなと僕は思っています。

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——要はバンドとエンジニアがチームだとやりやすくなるのでしょうね。両者メインのフィールドがヒップホップというわけではないんでしょうが、この20年の間にポップミュージックになったのかなとも思います。ジャンルのことは関係なしにして、この20年間の音楽のことで進化を感じたことはありますか?

ジョルト テクノロジーじゃないですかね? 自宅にスタジオが持てるようになったとか。それで飛躍的にリリースも変わっていきました。それが良いことなのか、悪いことなのか論議にも挙げられますが。

Kim 僕もレーベルとしてリリースをしているのですが、それこそ何も途中経過なしにやろうとすれば3時間後にはリリースできちゃうんです。僕達みたいなDIYでやっているようなバンドは、彼が言っていたようなテクノロジーの進化というのは大変ありがたいことなんですよね。

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——例えばメディアの大きさは違うかもしれないのですが、今聴きたい音楽を今聴くことができるようにはなりましたね。

Kim メディアにもよるんですけど、内容が薄っぺらいものも多いじゃないですか。薄く広くをずっと続いているのが多すぎて僕自身は関わりたくないなと思ってしまうほどです……。本当はいけないことなんでしょうけど。

——音楽を作っている人にとっては音楽が紹介されることは良い事なんでしょうけどね……。

ジョルト アメリカに関して言えば、ビルボードではオバマの虚構のニュースが流れて、それを信じ込んでしまったということがあったので、虚構のニュースを流すことは法律で禁じられているんですよ。

——作り手としては、リスナーがいろいろな情報に振り回されるのは歯がゆいですよね?

ジョルト オーストラリアは、メジャーレコードレーベルがレーベル内の在庫を買い占めて、チャートを上げるなんて事もあります。

——日本でもオリコンのチャート以外にYoutubeの再生回数やラジオオンエア数、サブスクリプションの再生回数なども加算したチャートの見直しみたいなものもあるじゃないですか。

ジョルト ただ、100万回の再生回数だったら50万円で買えるようになってしまっているのもあるんですよね……。アーティストではなくアカウントがレコードレーベルを保持してしまっているというのが現状です。

——そこからは抜けてしまうという考えもあるけど、それが入り口になる人もいるわけですしね。

ジョルト メジャーレーベルに興味ない人も多いですね。レコードストアとかに行くと若い人たちがレコードを見ていたりするので、僕にとってはそういう新しい音楽を探しているインディペンデントな層を引き込んでいこうと思うわけです。

——そういう状況があり、いろいろな国の音楽って今ミックスしているわけじゃないですか。ビヨンセのアルバムにジェイムス・ブレイクが参加していたりとか、日本だったら宇多田ヒカルのアルバムに KOHHが参加しているとか、そういう面白い事が起きているなというのはアーティストやレーベルオーナーの立場から見てどう感じますか?

ジョルト そういう意味ではケンドリック・ラマーがアルバムで何人かのアーティストとコラボしたじゃないですか? 様々なアーティストとのコラボというよりはレーベル内のアーティストとコラボをしているので、それが売り上げを伴っていて面白いと思います。ただそういうコラボを続けて本当にマジックが起きる時もあるのですが、それがうまくいかないことも多いんですよ。

Kendrick Lamar – These Walls (Explicit) ft. Bilal, Anna Wise, Thundercat

——音楽的にはどうですか?

ジョルト コラボレーション自体は、新しい情熱とかそういうものを感じる事ができて本当に素晴らしいです。

——Kimさんも今度コラボレーションするわけですが、それ以外で、実際に世界を巡ったり対バンしたりするアーティストを見て感じる事はありますか?

Kim コラボ自体は面白くなる事が多いですよね、やはりお互いに良いところを出そうとするじゃないですか。自分の引き出しが試されますね。

——相手にもよるかと思うのですが、アーティストとしてUHNELLYSの強みは何でしょうか?

Kim 海外では日本語のラップというのは、ほとんどの人は聞いた事がないので面白がってくれるんですよね。イントネーションも違うし何を言っているのか興味があるらしいんですよ。それが一番の強みになっているのかなとは思っています。

UHNELLYS – IS WHAT (Official Video)

——ジョルトさんは毎年<フジロック>に来ているんですよね。そこから日本のフェスティバルについてはどう感じますか?

ジョルト 僕は日本のカルチャーが好きで、その中でも<フジロック>が好きなんですよ。世界中の音楽フェスを体験して<フジロック>は環境に対するリスペクトや取り組みが他のフェスとは違うので、とても理想的だと思っています。争いがなく本当に素晴らしいです。ロンドンのとあるフェスでは、楽器を搬入している時に突然機材を持って行かれた事はあります……。

——Kimさんは世界を回ってみて危険な現場やフェスなどを体験したことはありますか?

Kim フェスじゃないんですが、イギリスでライブをやった時は日本みたいに機材を置いておくと盗まれることが多いので、安心できないんですよね……。車に置いておくのも危険で……。そういうところからも全然違いますね。

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——でも良し悪しですよね。音楽の話になりますが、逆に日本だと若い人が洋楽を聞かない状況が増えてきたり、決まったジャンルを聞いている感じはあります。

Kim それこそ、今の人って音楽を聞いていない人も増えましたね。この間ライブのブッキングを担当しているスタッフに話を聞いたら、CDを一枚も持っていないって言っていたんですよ。どうやって新しいアーティストを探すのかって聞いたらYoutubeやSoundcloudなどで探すらしくて……。それでどのくらいそのアーティストに対する理解が深まるのかなとは思います。

——日本での活動も一長一短ありますよね。

Kim ただ国によっては日本のバンドを認めている国も多くて。それこそ台湾だと、今日本のバンドも多く公演に行っているので、認められているのかなと感じます。そういう場所でUHNELLYSももっと演奏したいなとは思います。

【インタビュー】豪ヒップホップレーベルオーナー・ジョルト(Hydrofunk Records)×UHNELLYS ・Kim 音楽シーンの20年間を語る TARU-4464-700x466

——これまでアウェイだと思っていた国で手応えがあった場所はどこですか?

Kim 韓国ですね。勝手なイメージで良い環境ではないのかなと思っていたのですが、それが間違っていました。ものすごく距離感を置かれるのではと勝手に思っていたんですけど、全然そんな事はなくてライブも大盛況で終わりました。

——トランプが大統領に就任し、イギリスではブレグジットがありネガティブな気持ちになってしまうことも多いのですが、音楽自体はこれからどうなったら良いなと思いますか?

ジョルト 例えば不況な時や戦争が起きた時、その時に素晴らしい作品が生まれることもありますよね。今回トランプが大統領に就任した時にはそういう作品が生まれていくかはわかりませんが、多くなっていくと良いなとは思います。

Kim 日本ではレベル(反抗の)ミュージックが少ないので増えていって欲しいなと思いますね。何かに反抗した時の音楽ってその時は評価されないんですけど、それがだんだんと認められていったら嬉しいなとは思います。UHNELLYSはこの20年間ずっとそうしているので、それがいつか認められたらなと思っています。

【インタビュー】豪ヒップホップレーベルオーナー・ジョルト(Hydrofunk Records)×UHNELLYS ・Kim 音楽シーンの20年間を語る TARU-4459-700x466

EVENT INFORMATION

222 of the year -Electric x Acoustic-

【インタビュー】豪ヒップホップレーベルオーナー・ジョルト(Hydrofunk Records)×UHNELLYS ・Kim 音楽シーンの20年間を語る 222-2017web-700x467
2017.02.22(水)
OPEN 20:00/START 20:30
渋谷home
ADV ¥2,000/DOOR ¥2,500
UHNELLYS

※前売りチケット予約、お問い合わせは「uhnellys@yahoo.co.jp」
または渋谷home(TEL:03-5774-5822)までご連絡ください。

詳細はこちら

UHNELLYS オフィシャルサイト Hydrofunk Records オフィシャルサイト

photo by Kana Tarumi