Interview:DJ Falcon

【インタビュー】ダフト・パンク新作の真相とは? <Kitsune Club Night>開催に先駆け、同デュオの盟友DJ FALCONに迫る。 music130828_dj-farcon_main02-1

――まずは参加されたダフト・パンクの最新作『ランダム・アクセス・メモリーズ』についてお聞かせください。作品の情報が解禁されるまで、様々な噂が飛び交うなど、情報が錯綜しました。どのようにこのプロジェクトが進んでいったのか、制作秘話など今だから言えるものがあれば教えて頂きたいです。

ダフト・パンクとは長い間仲がいいし、トーマ(ダフト・パンクの)とは彼のレーベル用にコラボレーションしたことがあるんだ。今回コラボレーションした“Contact”という曲は、8年前に彼らと一緒に作ったデモが元なんだよ。僕ら、お互いパリ出身で似た環境で育っていることもあって、趣味や影響されたものがすごく似ているんだよね。僕自身も彼らの大ファンだし。だから、彼らと一緒に働くのは、すごくやりやすいし、とっても楽しいよ。スタジオにいるときは、舞台裏でマジシャンと一緒に働いている感じ(笑)。トリックが何かは理解するんだけど、魔法が絶対に冷めないんだ。あと、彼らの音作りに対しての姿勢もリスペクトしているよ。情熱的で、妥協しないし、誠実で、純粋でね。それでいて、美意識もめちゃくちゃ高いからね。

※DJ FALCONはダフト・パンクのトーマ・バンガルテルとバンド、トゥギャザーを組んでいた。

――その“Contact”を聞いて、非常にドラマチックでストーリー性がある曲だなと感じました。それは、先程おっしゃっていた双方の音楽への“情熱”のようなものが表れた結果なのでしょうか? 

うーん・・・音楽への情熱だけではないんだ。僕ら(DJ FALCONとダフト・パンク)って「あのバンドやべーよ!」、「あの曲聞いた?」とか言って常に音楽の話をしているわけではないからね(笑)。それ以上の何かで僕らは繋がれているんだ。強いて言えば、音楽によって一緒にいるプロセスを大切にしているのかな。ト―マと僕のプロジェクト“Together(=共に)”のようにね。家族の様に皆で一緒にいて、同じ方向にむかって歩いていく感じ。子供がお母さんといるときみたいに何も心配いらないんだ。ちょっと言い過ぎたかな(笑)? でも音楽よりは深いところに僕らの関係はあるよ。もちろん、曲にストーリーやイメージはあるよ。感情が沸かないと、曲作りは出来ないしね。でもその感情がどういうものか説明するのが凄く難しいんだ。僕の場合、音楽作りは実験的な感じで明確的なものではないしね。僕が音楽をコントロールしているんじゃなくて、僕が音楽にコントロールされる感じ。トーマは違うかもしれないけど。僕はそこまで才能があるわけではないから。音楽を作って、その音楽によって動かされるっていうのが僕のプロセスだよ。

――<Kitsune>やJustice等が所属する<Ed Banger>など、あなたやダフト・パンクが登場して以来のフランスのエレクトロ・シーンは、音楽はもちろん、横につながったコミュニティーなど全てが魅力的でした。今世界を見てみるとEDMがシーンを盛り上っていたりと、目まぐるしくダンス・シーンは常に変化し続けていますが、現在のダンス・ミュージックについてどうお考えですか? 

<Kitsune>のジルダ、<Ed Banger>のピジー・ピーはダフト・パンクの下で働いていたんだ。だから、家族やマフィア(笑)みたいなものだよね(フランスのエレクトロ・シーンは)。あと、フランスのアーティストは、リスクを取る事を恐れないんだ。例えば、ジャスティスとかね。それを踏まえると、EDMはやっていることが明確だと思う。リスクを取らずに、ターゲットをアメリカのマーケットに絞って、ビジネスを主軸に置いているよね。そういった点でEDMは素晴らしいけど、リスクを恐れずに“アーティストになるってことは何なのか”皆に見せつけることも大切だと思う。最近の若い子たちは「アーティストになる=セレブリティーになる」だと思っている子が多い。だから、成功しなかったとしても、リスクを恐れずに何か違う事にトライしようって思って欲しいな。

――その上で現在注目しているシーンやアーティスト、今後注目すべきアーティスト等いますか?

僕はこの質問すごく苦手なんだ(笑)。今アルバムを作っているところだけど、僕が音楽を始めた15年前に比べると、曲作りが簡単になったよね。ここ数年でDJの数って物凄く増えたと思うし、音楽業界もアーティストに曲が簡単に作れるって信じ込ませるのが得意なんだ。昔は、スタジオにいってレコード用にマスタリングしたりしたりと「曲を作る=ヴァイナルを作る」ってぐらい難しいことだったんだけど、今は曲がそこら中に溢れている。ソフトウェアがあって、簡単に作成や編集できるからね。もちろん、その中で良い音楽はあるけど、探すのに凄く時間がかかるようになったんだ。1曲探すのに数時間ってとこさ。でも、そこで見つけたときは、ジルダ、ビジー・ピーもダフト・パンクもそうだけど、みんなで共有しているよ。

【インタビュー】ダフト・パンク新作の真相とは? <Kitsune Club Night>開催に先駆け、同デュオの盟友DJ FALCONに迫る。 music130828_dj-farcon_sub-1

――今アルバムの話が出ましたが、今後新作等リリースする予定があればお聞かせ下さい。

僕はこれまでリリースしたのが5曲くらいで、そこまで曲作りをして来なかったんだ。でも、3年前にモジュラー・シンセサイザーを買って、また音楽作りの情熱に火がついたんだよね。これまで、6年間何もリリースしてなかったけど、1年前程からジャスティスのリミックスをやったり、アレックス・ゴーファー、アラン・ブラックスやダフト・パンクも手掛けた。今がまさに「音楽をやりたい、曲を作りたい」って思っている時期なんだ。というのも昔はまだアルバムを作るのには未熟だって思っていたんだ。僕もその頃に比べると成長したし、アルバムを作る時期がきたって今は思っている。今やらなかったら、一生やらないと思う。僕は従兄弟のアラン・ブラックスと仲良いんだけど、彼もアルバムをリリースした事がなくて、僕たちが作った昔のデモを掘り起こしたら50曲くらいあるんだ。レコード会社の人達とも会って、皆このアルバムリリースを楽しみにしてくれているよ。あと、僕はレコード会社に対する要求が色々と多いから今までリリースの数が少なかったんだ。数多く出すより、凄く良いものを人生で1曲リリースする方がいいって思うからね。でも何が起ころうと、来年はアルバムを必ず出すつもりだよ。