Interview:Ben Goldwasser(MGMT)

アルバムの音はもちろん指針にはなるけど、
毎回ちょっとずつ違うアイディアが生まれる余地は残しておくんだ

――3rdアルバム『MGMT』がリリースされてから、ちょうど3ヶ月が経ちました。客観的に振り返ってみると、あのレコードを作り上げることで、アーティストとしてどんな部分が成長できたと思いますか?

ある意味、以前よりフリーな気持ちになれたところかな。新しいものをオープンに取り入れられるようになったんだ。自分がやっていることを分析しすぎて、何もできなくなってしまう……なんてことがなくなった。

――『MGMT』はデビュー前のようにアンドリュー&ベンの2人のみで制作されたアルバムですが、ライヴではフル・バンドのセットですよね。バンド・メンバーのアイディアを取り入れて変化していった楽曲はありますか?

ライヴではニュー・アルバムから半分くらいの曲をやっていて、生のバンド・サウンドにもうまく溶け込めていると思ってるよ。特に“Cool Song No.2”だね。あれはかなり新しい、違うものになったような気がする。いつもジャムでやってるから、毎晩ちょっとずつ内容が違うんだ。

――バンドの持つ自然発生的なものを大事にしているような感じでしょうか。

そうだね。全体として、アルバムの音を完璧に再現することにあまり必死にならないようにしてるよ。アルバムの音はもちろん指針にはなるけど、毎回ちょっとずつ違うアイディアが生まれる余地は残しておくんだ。

――お馴染みデイヴ・フリッドマンが、今回は共同プロデューサーとしてクレジットされています。他に候補となったプロデューサーはいたのでしょうか?

いや、最初からデイヴとやりたいという気持ちが強かったからね。一緒にアルバム1枚まるごとやったらどんな感じになるかなと思ったんだ。実際、彼とそういうことをやったのは初めてだったけど、いい経験だったよ。

――また、すべてセルフ・プロデュースにしなかった理由は?

たしかに、全部をセルフ・プロデュースするという手もあったし、やろうと思えばできたと思うけど、第三者的な視点があった方がいいと思ってさ。それに今回はその場のインプロヴィゼーション(即興)に委ねたところが大きかったから、僕たちが演奏している間、コントロール・ルームに誰かがいてくれた方が都合も良かった。ある意味、自分たちの力だけでやるためにデイヴを招いたところもあるからね。僕たちがプレイしている間、レコーディングしたり音を聴いたりしながらたくさんメモを取って、「もう一度さっきのテイクを聞き直そう」なんてアドバイスもしてくれたよ。とても助かったね。

――フェイン・ジェイドの“Introspection”をカヴァーすることになった背景を教えてもらえますか?

アンドリューの友達が作ったミックステープの中に入っていた曲なんだ。アンドリューがとても気に入ってね。ある日2人でいたときに、遊び心でカヴァーしてみたんだ。そしたら他の曲とも馴染むものができたから、アルバムに入れることにした。

MGMT – Introspection (Faine Jade cover)

――あなたにとって、歴史上最高の「セルフ・タイトル・アルバム」は?

えーっと…(しばし考える)。わからないなあ……(また考える)……しいて言うなら、ビートルズの『ホワイト・アルバム(原題:ザ・ビートルズ)』(68年)かなあ。もし、あれをセルフ・タイトルとして数えるならね。

――そういえば3年前のインタビューでは、好きな映画作品に『天国から落ちた男 / The Jerk』(79年)を挙げていましたがその理由は? また、いま改めて選ぶとしても同じ作品ですか。

いま好きな映画として挙げるとしたら、ちょっと違うかもな。たしかに興味深いシーンや素敵なシーンはいくつもあるんだけど。いま訊かれたら『カンバセーション…盗聴…』(74年)と答えるな。フランシス・フォード・コッポラ監督の映画で、サウンドに興味のある人にはオススメだよ。サウンドに重点を置いた、クールな作品だからね!

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