ーーそういえば、今回のアルバム制作では、4人全員が集まることはほとんどなかったんですって?

スチュアート そうなんだ。ベースのレコーディングのときは、グラスゴーのスタジオに来たジャスティンに同席したけど、ほとんどのやり取りはEメールでのファイル交換だった(笑)。作業は誰か一人がイニシアチブを取るのではなく、割と民主的に進んでいったかな。まあ、メンバーの中で一番きっちりしているのがジャスティンだから(笑)、彼が全体の交通整理をする役割になっていたけど。ちなみに、スタジオは僕ら(モグワイ)とトニー・ドゥーガンで共同経営しているCastle of Doom Recording Studiosを使った。トニーにも作業を手伝ってもらったよ。

ーー“Scattered Ashes(Song For Richard)”では、ジェームズ・グラハム(トワイライト・サッド)がゲスト・ヴォーカルで参加し、“For You Always”では、マーク・コズレック(サン・キル・ムーン)がレイチェルと歌詞を共作しただけでなく、ヴォーカルでも参加しています。これらの経緯は?

スチュアート 元々レイチェルとマークは友人同士で、それで一緒にやることになったみたいだよ。“Scattered Ashes(Song For Richard)”は、当初は僕が歌う予定だったんだけど、高音が上手く出なくてさ(笑)。それで、「ジェームズなら歌えるだろう」っていうことになったんだ。

Minor Victories – Scattered Ashes (song for Richard)

ーーところで、ファースト・アルバムを制作するにあたって何かコンセプトはありました?

スチュアート コンセプトは特になかったね。でも、基本的に音楽的な背景が似ている連中が集まったので、わざわざ話し合いとかしなくても、何かしらピンとくるものがあったのだと思う。ただ、お互い色んなところでしょっちゅう顔を合わせているはずなんだけど、一緒にやってみると「ああ、こういうところは(音楽的に)違うんだ」っていう発見があったりして、不思議な気持ちだったよ。ただ、これは僕個人の意見だけど、このプロジェクトの一番重要な部分は、レイチェルの歌詞だと思っている。それは、ここ1年の間に彼女の身に起きた出来事や人生について歌っているものがほとんどだったから。それがアルバムのコンセプトというか、核になっているんだろうなって思う。

ーースチュアートはどの歌詞が印象に残っています?

スチュアート どの曲も素晴らしいのだけど、“Scattered Ashes(Song For Richard)”が一番好きかな。アップテンポなのに悲しい歌詞で、そのコントラストが面白い。

ーーちなみに、ジャケットのイラストは誰が描いたのですか?

スチュアート ジャスティンだよ。ああいうイタズラ書きを、彼はしょっちゅう描いているから(笑)、たぶんそのうちの1枚だね。僕自身は全く関わってないよ。

モグワイ、スロウダイヴらによるスーパー・グループ、マイナー・ビクトリーズ。スチュアートが語る結成の経緯や制作の裏側とは interview16010_mv_2

『マイナー・ビクトリーズ』ジャケット

ーーでは、このアルバムの制作過程で、スチュアート自身が新たに試みたことは?

スチュアート とにかく、モグワイ以外のメンバーと、モグワイ以外の曲を演奏するっていうこと自体、僕にとってはチャレンジングなことだったんだよね。モグワイでは基本的に、ずーっと同じ人間が書いた曲を同じメンツで演奏してきたわけだからさ。そういう意味では今回、すごくためになる経験だったな。ライブではバリー・バーンズ(モグワイのギター、フルート、キーボード)もサポートメンバーとして参加しているのだけど、僕もバリーも、誰かに「指示」されて動くということ自体が新鮮だったよ(笑)。きっと今後の活動の糧にもなったんじゃないかな。こればっかりは、後になってみないと分からないけれど。

ーーでは、そのモグワイのことも少し訊かせてください。新作『アトミック』は、ドキュメンタリー作品のサウンドトラックであり、広島の平和記念公園への訪問が大きなインスパイアとなって出来上がった作品だと聞きました。奇しくもオバマ大統領が、現職のアメリカ大統領としては初めて平和記念公園を訪れ献花し、数日後にはモグワイの広島公演が控えています。

スチュアート すごく不思議な気持ちだよね。いずれにしても、原爆の犠牲になった人々への追悼の気持ちを持つ機会というのは、多ければ多いほど良いと思っているから、ああした形でオバマ大統領が広島を訪問したのは良かったと思うし、いいスピーチをしたとも思う。ただ、現実的に核兵器を削減する努力を、もう少し彼が率先してやってくれていたら良かったのにな……っていう思いもあるけどね(笑)。

ーーモグワイは基本的にインストバンドですし、言葉を使って政治的なメッセージを発することはあまりないと思うのですが、自分たちのことを「政治的なバンドか?」と尋ねられたらなんて答えますか?

スチュアート まあ、「歌詞を書く」ということに関して、僕らにそこまでの才能があるのかどうかがまず問題ではあるのだけど(笑)。ただ『アトミック』では、非常に政治的な見解を述べることが出来たと思っているし、そういう意味では「政治的なバンド」であると、僕自身は思っている。今回のような試みを、この先もやる可能性はあるな。まあ、やったとしても、おそらくジョン・レノンの“Imagine”みたいな曲にはならないとは思うけど(笑)。

Mogwai // U-235

ーーモグワイって、いつも人を食ったような曲名を付けたりするじゃないですか。なので、あえて意味性のあるメッセージなどは、作品から排除していたりするのかな、と思っていたのですが。

スチュアート そうなんだ。音楽自体がシリアスだから、せめて曲名くらいは遊びたいっていう意識の表れだと思うよ(笑)。ただ、今回の『アトミック』に関しては、映像からインスパイアされた曲であるなど、具体的なテーマが曲作りの段階からしっかり決まっていたので、いつもとはタイトルのつけ方が違ってはいた。そういう意味でも今作はかなりイレギュラーなアルバムだと思う。これまでにも幾つかサントラを手がけてきたけど、それらとも一線を画しているね。ちなみに、曲名だけならすでに予備がいっぱいあるよ。曲よりもあるかもしれない(笑)。

ーー(笑)。マイナー・ビクトリーズは、今後も続けていく予定?

スチュアート うん、すごく楽しかったし、継続していきたいとは思っている。それに、機会があれば今後も色んなミュージシャンとコラボしたいな。以前、PIKA(元あふりらんぽ)と一緒にグラスゴーでライブをやったのだけど、本当に久しぶりに人前でドラムを叩いてメチャクチャ楽しかった。ダモ鈴木ともライブをやったことがあったな。みんな忙しくて、スケジュール調整がすごく大変なんだけどね……。

Minor Victories ‘Breaking My Light’

RELEASE INFORMATION

[amazonjs asin=”B01E0DMZA0″ locale=”JP” title=”マイナー・ビクトリーズ”]
NOW ON SALE!
HSE-3440
¥2,400(+tax)

オフィシャルサイト Twitter Facebook