今の状態(インディーズ)こそが本来いるべき場所だったとも思える

――新ベーシストのカール・アストベリーとはどのように出会い、バンドへの加入をオファーしたのでしょう。また、彼は”My One & Only”のミュージック・ビデオでシタール(インドの弦楽器)を弾いていましたけども、本当に弾けるのですか?

君もご存知のとおり、カールはバンドの中でもっともクールな男でね。彼が僕たちのバンドに正式加入してくれて本当に嬉しいよ。カールもマンチェスターでバンド活動をしていたし、もともと長年の友達だったんだ。だからマーティンが辞めたとき、当然のようにカールの名前が浮かんですぐに声をかけたのさ。人間的にもミュージシャンとしても素晴らしい奴だからね。だけど、シタールの演奏は結構デタラメだよ(笑)!

――デヴィッド・ジョーンズ(ギター/ベース/キーボード)はクリブスのサポート・ギタリストも務めていて、6月にバンドと一緒に来日もしましたね(Hostess Club Weekenderに出演)。日本の音楽雑誌『スヌーザー』のインタビューであなたが「クリブスのことは好きだよ」と語っていたので、個人的にもすごく驚きました。これはどういった経緯で実現したんでしょうか?

ジョニー・マーがクリブスを去った後、彼らはライヴをサポートできるギタリストを探していたんだよね。僕らとクリブスは何度かツアーを一緒に回った仲間だし、『ロックド・アウト・フロム・ジ・インサイド』のリリース後にツアーをストップしていたこともあったし、ジャーマン兄弟が良い奴らだってわかってたから快く引き受けた。何しろデヴィッドはクリブスの大ファンでさ、ほとんどの曲を知っていたからね。あの経験は彼自身のソロ・ワークスにも良い影響を及ぼしているんじゃないかな。

――では、バンドがレコーディング&ツアーを休んでいた時、ドラマーのジェイムズ・ギャリーは何をやっていたんでしょうか?

とても信じられないだろうと思うけど、ジェイムズはプログラマーの勉強をしてインターネット関連の制作会社を立ち上げたんだよ! 僕やデヴィッドがジリ貧で今にも死にそうだったっていうのに、何百万~何千万円も稼いでたんだから参っちゃうよね(笑)。

※ジェイムズの会社「Tariff Street Ltd.」

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――サムもソロで『The Edge Of Nowhere』(2012年)をリリースしていましたし、あなたの才能とクリエイティビティはまったく底を見せません。アイドルワイルドのロディ・ウォンブルのようなキャリアを歩んでいる――とも評されていますが、あなたがロールモデルとしているシンガー・ソングライターはやはりニール・ヤング?

うん、今でもニール・ヤングは大好きだし、実はこないだロディのソロ・ライヴでサポートをやらせてもらったんだ。彼は素晴らしい人物だよ。僕は飽きっぽいからロール・モデルもしょっちゅう変わるんだけど、今はソロでめちゃくちゃノイジーな音楽を作るのにハマっている。アコギに飽きちゃってたからね(笑)。でも、そう遠くない将来、またアコギを手に色々と試行錯誤しているような予感もあるんだ。なんせ、僕は双子座だからさ!

――自身のレーベル〈Desert Mine Music〉の運営やノー・マネージャー主義など、あなたたちのDIYスピリットはパンクのアティチュードそのものだと思います。そしてメンバー各々の充実したソロ・ワークスや初期ベーシストの脱退…というあなたたちのヒストリーは、まるでビートルズのようでもあります。NBAが今いる状況には満足していますか?

この状況はすごくハッピーだと思っているよ。むしろ今の状態(インディーズ)こそが本来いるべき場所だったとも思えるしね。僕たちはマネージャーもいないし、ツアー・クルーだっていない。だけど、すごくクールなレコード・レーベルを持っているからアウトプットに困ることはないんだ。〈Desert Mine Music〉は僕の別バンドであるThe Sorry Kissesやソロのアルバムをリリースするためにスタートしたんだけど、今では自分たち以外の素晴らしいアコースティック作品からパンクまで手がけているしね。僕らはこれでリッチになろうだなんてさらさら思ってないけど、自分たちでコスト管理を行えるから、できるだけ所属アーティストに自由にやらせてあげられる。僕らがメジャーにいた頃に味わった、ファックな出来事の数々から距離を置くこともできるしね!

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僕らは日本の都市を、親切な人々を、素晴らしい音楽をずっと愛してる

――ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデーズ、ニュー・オーダーといった大御所バンドの再結成ツアーばかりが注目されてしまうマンチェスターの音楽シーンですが、あなたたちがこの場所にとどまるのはなぜ?

まあ、彼らはたまたま同時期に貯金を使い果たしちゃったんじゃない? 今挙がったようなバンドにはまったくインスパイアされたことはないよ。なんていうか、マンチェスターはいつもバンドにとっての原点になっているんだ。もはやメンバーは2人しか住んでいないにも関わらず、僕らはまだそこで練習しているしね。ちょっと頑固に思えるかもしれないけど、僕らにはマンチェスターにいることがごく自然なスタンスで、クリエイティヴになれるし、パンクにもなれるし、刺激的なんだ。

――サムも大ファンであるソニック・ユースが活動停止中ですが、メンバーそれぞれのソロ・ワークスは楽しんでますか?

もちろん! 僕はフリー・キトゥンも大好きだし、ヨシミはすごい才能だよね。あと、サーストン・ムーアの『デモリッシュド・ソウツ』は2011年もっとも良く聴いたアルバムのひとつだな。個人的に、彼らはまた一緒に戻ってくると確信しているんだ。ソニック・ユースのいない世界なんて、アイスクリームの無い世界と同じようなものだからね。

――ところで、オフィシャル・サイトに「日本(JAPAN)」の翻訳ボタンを置いているのはなぜ?

残念ながら2回しか訪れたことが無いんだけど、ナイン・ブラック・アルプスとしてのキャリアの中でも日本での経験はかけがえの無いものだったからさ。僕らは日本の都市を、親切な人々を、素晴らしい音楽をずっと愛してるし、日本のファンのみんなにもそれを知ってほしかったんだよ!

――前回の来日時に、あなたがザ・マフスのTシャツを着ていたのを覚えています。そんなマフスも2011年に7年ぶりの来日を遂げたんですよ。ぜひNBAもまた、日本へカムバックしてくれることを願っております。最後に、日本のファンへメッセージをお願いします!

アリガトウ。そして僕らの音楽を好きでいてくれて、これを読んでくれていることに感謝します。君たちは世界でもっともクールな国にいるんだってことを誇るべきだし、すべての国の人々が日本人みたいに楽しくてフレンドリーだったら良いのになあって思うよ。特にイギリスはひどいからさ(笑)。

(interview & text by Kohei Ueno)

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ザ・クリブスやクラウド・ナッシングスも出演した昨年6月のHCWレポート。

Release Information

[twocol_one]Now on sale!
Artist:NINE BLACK ALPS(ナイン・ブラック・アルプス)
Title:SIRENS(サイレンス)
RED NOVEL
REDL-1002
¥2,730(tax incl.)

Track List
01. Be My Girl
02. Don’t Forget To Breathe
03. My One And Only
04. Phosphorescence
05. Living In A Dream
06. Waiting Room
07. Hand Me Down
08. Penny Cinderella
09. Away From Me
10. Find It My Own Way
11. What You Wanted
12. Another World
13. Playing Your Song ※
※日本盤ボーナストラック[/twocol_one]

[twocol_one_last]Now on sale!
Artist:NINE BLACK ALPS(ナイン・ブラック・アルプス)
Title:LOCKED OUT FROM THE INSIDE(ロックド・アウト・フロム・ザ・インサイド)
RED NOVEL
REDL-1001
¥2,520(tax incl.)

Track List
01. Vampire In The Sun
02. Salt Water
03. Every Photograph Steals Your Soul
04. Cold Star
05. Bay Of Angels
06. Porcupine
07. Full Moon Summer
08. Silence Kills
09. Buy Nothing
10. Along For The Ride
11. Ghost In The City[/twocol_one_last]