アンビエント、ミニマルが流行した80年代に「巨大なペンギンがオーナーを務めるカフェで鳴らされる音楽」というファンタジックな設定に基づいた音楽で人気を博したサイモン・ジェフスのプロジェクト、ペンギン・カフェ・オーケストラ(Penguin Cafe Orchestra)。彼の亡きあと、その息子アーサー・ジェフスによって結成され、ゴリラズやスウェード、トロージャンズのメンバーが集ったバンド、ペンギン・カフェ(Penguin Cafe)が、通算3枚目となる最新作『The Imperfect Sea』を完成させた。

ペンギン・カフェ名義での初のアルバムとなった11年の『ア・マター・オブ・ライフ…』を経て、彼らは14年の『ザ・レッド・ブック』でより幅広い音楽性を追究。そして今回の『The Imperfect Sea』では、クラフトワークやシミアン・モバイル・ディスコ、初代ペンギン・カフェ・オーケストラのカヴァーなども交えながら、よりエレクトロニカ、クラブ・ミュージック色濃厚な楽曲を生演奏で成立させている。その姿はまるで、亡き父の影を追っていたアーサー・ジェフスが、自分ならではの個性を追究しはじめたことを告げるかのようだ。バンドの中心人物アーサー・ジェフス(ピアノ/ハーモニウム/クワトロ)と、トロージャンズのメンバーとしても活動するダレン・バリー(ヴァイオリン)に、ハプニングを重視したアルバムの制作過程と、本作に詰まった想像上のストーリーを聞いた。

Interview:ペンギン・カフェ(アーサー・ジェフス&ダレン・バリー)

コーネリアス、クラフトワーク、シミアンとの共鳴。ペンギン・カフェが語る、偶然性の魅力と制約の大切さ interview_penguincafe_1-700x1050
写真:石田昌隆
衣装:Herr von Eden

——09年以降ペンギン・カフェ名義で活動を続けてきた中で、今のメンバーにはどんな魅力を感じていますか?

アーサー・ジェフス(以下、アーサー) 今のメンバーは、少なくとも全員他にひとつはバンドやプロジェクトを持っている状況なんだ。たとえば、トム(・チチスター・クラーク/ハーモニウム、ウクレレ)はイギリスのシークレット・シネマ(ロンドンで流行している体験型の映画鑑賞会)での仕事をしていたりするわけで、いつもペンギン・カフェにいるわけじゃないんだよね。だから、それぞれが戻ってきてペンギン・カフェで一緒になって演奏すると、それぞれの持ち味やアプローチ/スキルの違いが活きてくるんだと思う。

それに、顔を合わせるとリラックスできるような関係なんだよね。みんな友達だし、中には家族もいるし、プレッシャーを感じることなく、みんなが気兼ねなく過ごせるような状況になっているんじゃないかな。

ダレン・バリー(以下、ダレン) そうだね。ツアーだってそうでさ。「今度はイタリアでやります」「週末もライブがあります」「今度はこっち」「次はあっち」と色々と行く場所が決まって、そこで好きな曲を楽しく演奏することができる。これは僕からすると本当に楽しいことだよ。

——過去に制作した2枚のアルバムを通して、メンバーそれぞれの演奏や、バンドとしての在り方には変化があったと思いますか? 少し振り返ってもらえると嬉しいです。

アーサー うん、変わってきていると思う。僕自身、活動を続ける中で自分がやりたいことが次第にはっきりしてきたし、他のメンバーにしても、活動を共にするにつれて、前よりも分かってくれていると思うんだよ。「僕をどうやって助けてくれるか」についてね(笑)。

ダレン (笑)。

アーサー だから、バンドとして進歩してきているんだと思う。特に今回は、僕の方で意識的に制作のプロセスを変えてみたんだ。参加するミュージシャンも使う楽器もこれまでと同じだけれど、テクスチャーやサウンド、誰をどこに配置するかということについて考えて、間を大事にしていこうと思った。そういう作り方をした結果、今回はとてもバランスの取れた作品になったんじゃないかな。そうすることで音のひとつひとつを吟味することができて、トラックごとの個性やバラエティをはっきりと打ち出すことができたと思っているよ。

——最新作『The Imperfect Sea』を聴かせてもらうと、ペンギン・カフェ・オーケストラの世界観は引き継ぎつつも、より今のメンバーの個性が反映された作品だと感じました。

アーサー 確かにそうかもしれないね。14年の前作『ザ・レッド・ブック』を出して、ツアーを終えたあと、僕らは1年間活動を控えることにしたんだ。そして今回ふたたび集まって作品を作り始めたとき、「こんなことをやりたい」ということをみんなで挙げて、その中から「これは前にやった」というものを削っていった。今回は「これまでにやっていなかった新しいことがやりたい」「バンドとして新境地を開拓したい」と思っていたんだよ。

ダレン 僕から見ても、アーサーのコンポーザーとしての進化を感じるんだ。以前より自分らしさを出すことに抵抗がなくなっているし、より自分ならではの音楽を追究している印象を受けた。それが今回の作品にも表われていると思う。僕らはアーサーが考えていることを具現化する立場で、彼がどんな方向に向かおうとしているのか把握するのが難しいときもあるけれど、今回もアーサーのヴィジョンをみんなが読み取って、具現化していった。完成した音楽を聴いてくれれば分かると思うけれど、今回はすべてが上手くいった作品なんじゃないかと思うよ。

レコーディング中は演奏をして、一度離れると他のメンバーの演奏によって音楽が変わっていて、「じゃあ僕はこうしよう」と考えたりするような感じだったね。僕自身もコンポーザーだから色々とアイディアはあるけれど、引くところは引いて余計なことは言わないようにしたりもして(笑)。そういうバンドの力学も進化した気がするね。

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