■ラジオについて

–––BBC Radio1からRadio 6 Musicに移動して約2年半が経ちますが、以前にも増して音楽を紹介することを楽しんでいるように感じます。その原動力はなんですか?

ラジオは僕にとって、セラピーのようなものなんだ。週1回、絵を描いているような感じともいえるかな。僕の持っている、様々な、色、形、感情、テキスチャーをパレットにならべて、音楽の美、そして光りを描ているような感覚。だから、ラジオは、自分にとって非常に重要であり、全ての原点なんだ。BBC Radio 6 Musicは、素晴らしいネットワークと、プラットフォームをもっているので、そこで番組を持ち、世界中の人々に番組を聴いてもらえることは、幸せなこと。音楽シーンは今、とても生き生きしているから、番組では、新旧の楽曲をプレイすることを心がけ、そして、僕自身も、音楽のビジョンを再解釈する時間。だから、 今のように、レギュラーでラジオ番組をやることができなかったら苦しくなってしまうだろうね。

–––毎週3時間の番組を生放送する、その作業は、大変ではないですか?(Radio1時代は2時間)

いえいえ、とても名誉なことだよ。土曜の午後、3時間も大好きな音楽を世界的ラジオ局でかけられるなんて、そんなDJは他にはどこにもいないでしょう! 僕は、海賊ラジオから始まって、インディペンデント・ラジオ、コマーシャル・ラジオ、コミュニティ・ラジオなど様々なラジオ局で番組を持って来たけど、BBC Radio 6 Musicは、リスナーの期待度が高く、新しい楽曲を紹介するという責任、そして、聴いたことのないような古いレコードをプレイするという使命も感じているんだ。満足度の高い放送もあれば、挫けそうになることもある。 プレッシャーも感じるけど、それは良い結果を出し続けるためには、必要なことなのかもしれない、そう思っているよ! 常にベストを尽くさなけないという毎週が、チャレンジなんだ!

–––ラジオとダンスフロアでの選曲の最も大きな違いは?

僕は、ラジオでの選曲とフロアへむけた選曲が世界で最も近いDJかもしれないね。ラジオとクラブの選曲には大きな違いがあるけれど、場所を問わず、幅広い選曲を聴かせることが出来るのは、ラジオをやってきたから。常にアップテンポでなければいけないとか、決まったリズムの曲をかけなければいけないという心配はないし。 クラブやフェスティバルでプレイしている楽曲をラジオでプレイすることもある。 そして、クラブで得たエネルギーをラジオに反映することも出来る。クラブDJであり、ラジオ・プレゼンターでもあるんだ。重要なのは、この2つを共存出来ていることで、どちらか一つだけをやるという選択は、僕にはないんだ。

–––ラジオ&ダンスフロアどちらでもかけられる最近お気に入りの曲は?

ジャングル – “The Heat -Joy Orbison Remix”
メラニー・デ・ビアシオ – “HEX Remix”
フライング・ロータス – “Never Catch Me ft. Kendrick Lamar”

フライング・ロータス – “Never Catch Me ft. Kendrick Lamar”

–––ラジオ番組で音楽をプレイする、紹介することの意味とは?

僕にはたくさんのデモが届くんだ。 例えば、エイミー・ワインハウスの“Take the Box”や、ナールズ・バークレイの“Crazy”は、デモの段階で手元に届いたから、世界で最初にラジオでオンエアできた。このように、僕の番組から発信した楽曲がヒットするのは、とても幸せなことだし、才能と可能性があるアーティストや楽曲を発見することに、ワクワクするんだ。最近でいえば、サブトラクト(SBTRKT)もその1人。彼は、アーティストとして様々なステージを通ってきたけど、アーロン・ジェロームとして活動していた頃から彼のトラックをラジオでプレイしていたし、サブトラクトになった今も変わらない。こんな風にミュージシャン達の成長や変化の過程を感じ、いち早く世界に届けることがラジオの醍醐味なんだ!
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