この2013年、“ジャパニーズ”で“ポップスター”と聞かれたら、きゃりーぱみゅぱみゅ一択でしょ!! いやいや、遠くアイルランドを拠点とする本家を忘れてはいけない。そのネーミングとハイセンスな音楽性で名が広まり、日本でも09年のフジロック出演を始めレボリューションな足跡を残してきたザ・ジャパニーズ・ポップスターズが、3枚目となる新作『ディスコネクト / リコネクト』をいよいよリリース!
06年に結成の彼らは、ジャスティスとも共振する、怖いもの知らずのエレクトロ・ユニットとしてデビュー。前作『コントローリング・ユア・アレジアンス』ではロバート・スミス(ザ・キュアー)やジョン・スペンサーといったロック・レジェンドから、M83のモーガン・キビーにリサ・ハニガンと多彩かつツボを押さえたゲストを招聘し、メインストリームに殴り込みをかけた。
そこから2年。この新作から聴こえるサウンドは実にディープだ。トリッキーに屈折しながらも、大胆なまでにハウスへと接近している。フェスや大バコを主戦場とする彼らのスケール感はそのままに、より内省的な深みと旨味も獲得。硬派な脱・歌モノ路線でフロアに笑顔を向けながら、ディスクロージャーに飛びついた人にもウケそうなポップネスまで備えてるので、インドア派にもオススメ。これぞ匠の技、ポップスターの名に偽りなし!
メンバーの一人が脱退してデュオ編成となったジャパニーズ・ポップスターズは、レーベルもプログレッシヴ・ハウスの総本山である〈Bedrock〉に移籍。そういった環境の変化もダイレクトに反映され、タイトル通りゼロからのスタートを意識した作品となっている。思い切りのよいサウンドにはそういった事情も関係あるのだろう。8月末には来日公演も決定し、すっかり絶好調な彼ら。今回はギャレスが質問に答えてくれた。
Interview:Gareth Donoghue(Japanese Popstars)
The Japanese Popstars – Disconnect / Reconnect Teaser
――2年ぶりの新作アルバム、エクセレントです! まずは前作から新作に至るまでの2年間、どのような活動をしていたのか教えてください。
どうもありがとう。前作のリリースから去年の10月、11月くらいまで結構たくさんのツアーに出てたんだ。それからは新たな”アンダーグラウンド“なアルバムを作る為にちょっとオフをとってたよ。
――たしかに新作は、少しマニアックなムードもたまらないですよ。オービタルにリミックスを提供したことで、ツアーサポートに抜擢されたそうですね。彼らとはどんな交流を?
それはもう素晴らしい経験だったよ。オービタルは長いこと同じクルーでやってて、僕らにとってそれは、大きなショーのオーガナイズのお手本として経験させてもらったよ。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで披露されたプレイも本当に素晴らしかったよ。沢山のレジェンドがあそこでプレイしてきたけれど、エレクトロのアーティストとなると数える程度だからね。彼らは音楽活動に真剣に打ち込んでいて、その姿は僕らにたくさん自信をくれたね。僕らが手がけたオービタルのリミックスは、もしかしたら今回のアルバムで聴けるディープでダークなサウンドに進み始めたスタート地点かもしれない。
――今回の新作は以前よりハウス色が強まり、フロアユースに寄った印象です。レーベルを移籍したことも、この変化と関係あるんでしょうか?
いや。そうでもないかな。僕らが過去に作ったアルバム全てと同様に、そういう事情は度外視して、そのとき僕らが感じてることを曲にしてるだけだから。実際いつも、アルバムが完成してからレーベルにアプローチするんだ。ただ(以前の所属先である)〈ヴァージン〉にとって、商業的に難しくなるだろうとは思ってたよ。正直に言うと、去年のフェスティバル・シーズンの終わり頃には、サウンドをもうちょっとダークな方向にしたくなったんだ。それまでフェスでは昼間にメイン・ステージで出演することが多いこともあって、ナイト・タイムのダンス・ステージに戻りたくなってた。そこが一番楽しいからね。それでクラブとかフェスでも最初から最後までプレイ出来るようなアルバムを作りたかったし、僕らにはそれが可能だとわかってるから。
――タイトルの「Disconnect / Reconnect」は、何との“connect(接続)”について表現しているのでしょう?
それはたぶん、いろんな解釈の仕方があると思うよ。レーベルを移籍する関係で一年近く音源をリリースできなかったし、フラストレーションがメチャクチャたまってた。デクランの脱退もあって、ちょっとネガティヴな時期だったんだ。だからこのアルバムを作る時、沢山のクレイジーなことから“disconnect(断絶)”して、そして僕らがなぜ再び音楽をやるのかという一番根本的な問題と“re-connect”しなきゃいけなかった。全ては音楽とともに始まって終わるんだよね。
――“Matter of Time”はローラン・ガルニエやカール・コックスと大物DJに絶賛されているそうですが、それも頷ける新たなクラブ・アンセムですね。前作に引き続きハウス界の巨匠、グリーン・ヴェルヴェットが参加してるみたいですが。
そうそう、彼と一緒にやるのは二回目で、前作では“Let Go”という曲に参加してもらった。今回はちょっと経緯が変わってて、イビザでは毎年夏の初めになると<Ibiza Music Summit>というのが開催されて、その夏ごとにアーティストにイベント用のアンセム制作を頼んで、どういうトラックにするか話し合うんだけど、去年僕らがそのために作った曲こそ“Matter of Time”なんだ。イビザのホテルで曲を書いたんだけど、シカゴにいるグリーン・ヴェルヴェットとデータのやり取りして、かなりクレイジーな制作方法だったんだけど、結果的に素晴らしいものが仕上がったからよかったよ。
――ダフト・パンクがEDMの流行に苦言を呈してたのはすっかり有名な話ですが、あなた達は最近のエレクトロニック・ミュージックのシーンについてどんなふうに考えてます?
EDMによって、アメリカがエレクトロ・ミュージックに目覚めてきてるよね。この3~4年でそういう音楽に熱中してるキッズたちが、その次にはきっとアンダーグラウンドな音楽を見つけて聞くようになると思う、EDMはそのための出発点みたいなものだよ。いまのエレクトロ・シーンは強力だよね。ヨーロッパではとにかくエレクトロとテクノの境界線がすごくあやふやになってきてて、プロデューサー達も新しいサウンドを探求したり、見つけやすい環境になってる。いつも思うんだけど、ダフト・パンクの彼らがこの分野を牽引してるよね。もちろん例の新作も好きだし、旅行するときとかに聞くのには最高のアルバムだと思うよ。すごくメランコリックでエモーショナルだしね。
――ジャパニーズ・ポップスターズは、地元アイルランドでは(マジで)国民的英雄だと聞いています。同郷で刺激を受けるシーンやミュージシャンはいます?
〈Zone Records〉のサウンドにいま夢中なんだ。The Hacker、Arnaud Rebotini、Gesaffelstein、 Maelstromとか。フェリックス・ダ・ハウスキャットも最近いい感じにもどったし、僕らも所属する〈Bedrock〉のElectric Rescueもすごいアルバムを出してるよ。
――こんなによく出来た新作を聴いたら、ジャパニーズ・ポップスターズのライヴを観るためにアイルランド旅行を計画する人も急増すると思います。そんなジャパニーズのために、アイルランドのおすすめスポットを教えてください。
沢山いいところがあるけど、クラブに行くんだったらベルファストにある「Stiff Kitten」かダブリンにある「Button Factory」をオススメするよ。食事だったらダブリンの「777」。カクテルもすごくおいしいし、メキシカンの料理が何よりおいしいよ。デリーは今年、英国文化都市に選ばれていて、沢山の音楽やアートイベントが一年を通して行なわれる予定なんだ。ナイル・ロジャースのシックが今月末にプレイするんだけど、いつもすごく楽しいところだよ。
――実は今年の<フジロック>ではザ・キュアーもヘッドライナーを務め、ジョン・スペンサーも<サマーソニック>に出演します。前作でのコラボは日本でも話題になりましたが、ロバート・スミスやジョン・スペンサー等との関係はその後どうですか?
へー、それは知らなかったな。実はジョンとは実際に会ったことないんだよね。全てメールでのやり取りでさ。でも彼はもう、大好きなレジェンドの一人だよ。ザ・キュアーは僕の大好きなバンドだし、もし<フジロック>で会えたりしたらさぞかし最高だろうね。
――だからこそ夏フェスに出演してほしかった! でも8月の来日が楽しみです。では最後。最近気になるジャパニーズ・ポップスターは誰?
僕は今でも大沢伸一の大ファンで、以前数回一緒にプレイしてるし、数年前に彼の“Star Guitar”という曲をリミックスしているよ。あとはケン・イシイも好きだね。ホント日本でプレイするのが待ち遠しいよ、前回からしばらく経ってるからね。
text&interview by Toshiya Oguma
Release Information
2013.07.10 on sale! Artist:The Japanese Popstars(ザ・ジャパニーズ・ポップスターズ) Title:Disconnect / Reconnect(ディスコネクト / リコネクト) Bedrock Records/Traffic TRCP-122 ¥2,100(tax incl.) Track List |