比寿リキッドルームの10周年アニバーサリー企画の一環として、音響派の雄、ザ・シー・アンド・ケイクとトクマルシューゴが11月12日(水)に恵比寿リキッドルームにてツーマンライブを行う。

トクマルシューゴは知っているがまだシー・アンド・ケイクについては未開拓……なんて読者のために、ここでザ・シー・アンド・ケイクのことを簡単におさらいしておこう。ザ・シー・アンド・ケイクはシカゴのインディペンダント・シーンを代表するメンバーから成るポスト・ロック・グループ。元シュリンプ・ボートのサム・プレコップ(ボーカル/ギター)とエリック・クラリッジ(ベース)が、元ザ・カクテルズのアーチャー・プルウィット(ギター)とトータスのジョン・マッケンタイア(ドラム)を誘い結成された。

1994年にセルフタイトル『The Sea and Cake』でデビューを果たした彼らは、リーダーでもあるサムの意識の流れをそのまま表現したような謎めいた歌詞と、ポップ〜ジャズ〜ブルー•アイド•ソウル〜クラウト・ロックをフュージョンした独自の音で人気を博す。その後1997年までに3枚のアルバム(『Nassau』、『The Biz』、『The Fawn』)をリリースした後、サムとアーチャーはソロ活動にしばし専念する。だが3年の時を経て、2000年に5枚目のアルバム『Oui』のリリースでカムバックしたのであった!

The Sea and Cake – “Crossing Line(music video)”

『Everybody』(07年)、『Car Alarm』(08年)と続けて新作をリリースし、2011年にEP『The Moonlight Butterfuly』を発表した後に何度かレコーディングセッションを重ねて生まれたのが最新作『Runner』(12年)。そしてその後、2013年の<FUJI ROCK FESTIVAL ’13>に出演し観客を興奮の渦に巻き込んだ! また、<FUJI ROCK FESTIVAL ’13>を最後に、今回の来日はおよそ1年ぶりとなる。

Qeticでは、そんなザ・シー・アンド・ケイクのメンバー3人による個別インタビューを順次お届け中。今回は音楽家/画家/作家と様々な分野で活動し、ザ・シー・アンド・ケイクではギターを担当している多才な人物、そしてコミック『ソフボーイ』の作者としても有名なアーチャー・プルウィットのインタビューをどうぞ。

Interview:The Sea and Cake[Archer Prewitt(G)]

── アーチャーさん、こんにちは。まず、今はどこに? 辺りの様子を、説明してもらえますか?

今イリノイ州オークパークの自宅に居る。今夜はとても蒸し暑くて、机に座って蝉や鳥達が奏でる夏の音を聞いてる。目の前には、続きを書く事を自分に言い聞かせるためソフボーイのコミックが積み重ねられてる。傍には僕のミニマルな鉛筆画を飾ってる。サム・プレコップの油絵もね。他に目に付くのは僕の録音用の小さな空間、ボロボロなのを見つけて自分でペンキを塗ったドローイング用の製図机、妻の写真、ギター、美術本、あとは僕が蒐集した様々なアート作品と僕自身の作品……ふむ、この部屋は整理整頓する必要がある。

── 一昨年の来日、去年は<フジロック>、連続の来日になりますが、今年の夏はどう過ごしましたか?

今年の夏は僕の店の奥にある簡易ベッドルームの壁を塗ったり、店の前に茂みを植えたり、古い窓を改装したり、アート作品を作ったりして過ごしてた。バリー・フィップスThe Coctails、現在写真家としても活躍中)のアルバム・カバーのアートワークをやっと完成したんだ。3年もかかった! 3年間そればっかりやってたわけじゃないけど、すごく細かい鉛筆のスケッチだったから時間がかかった。あれは大変だったな。彼は一体いつあのアルバムをリリースするつもりなんだろう。レコードのみのリリースみたい。あとはミニマルなタブロウも制作中だ。

── 奥さんが始めたA.P.ショップの内装を自分でやったのだとか。ジュエリーやテキスタイル、コンテンポラリー・デザイナーの作品を集めたセレクト・ショップだそうですが、買い付けも担当してるのですか? ステキなお店ですね。

ありがとう。買い付けも多少は担当していると言ってもいいかな。ツアーで海外に行った時に地元のフリーマーケットや小さな店を物色するよ。東京の骨董市はすごく気に入ってる! 店主で妻であるアリアンとのコラボレーションとして自分たちでジュエリーを作っている。次の夏シーズン用に冬のあいだずっとジュエリーを制作してた。そのためにいつも特別なアンティークのビーズを探してるんだ。あとはお店の改築や手直しかな。ペンキを塗ったり大工仕事をしたり。それと木製の看板も僕が彫った。あれは楽しかったな。今は8月30日から店で開く展覧会のためにサム・プレコップの写真を14枚額装してる。彼とあと2名のアーティストのグループ展だ。店では色々な事を企画して行きたい。

── 買い付けに行ってみたい場所や作品は?

昨年、休暇を兼ねてメキシコのサン・ミゲル・デ・アジェンデに買い付けに行った。今年の冬に再訪する予定だ。今回はまずオアハカとメキシコシティに行く。オアハカのテキスタイルは素晴らしいんだ。前に行った時はすごく興奮したよ。今度日本に行くのもすごく楽しみにしている。骨董市でボロ布や藍染めの布を見つけたい。アリアンも僕もインドとアフリカに行ってみたいんだ。数年前のモロッコ旅行は本当に楽しかった。すごく刺激的だったよ!

── 数年前に出たニック・ドレイクのカヴァー集で“Parasite”を歌ってましたね。ニックのお母さん、モリー・ドレイクの音源もリリースされていますが、聞きましたか? また誰かをカヴァーするとしたら?

うん、聞いたよ。素敵な作品だよね。彼の作る音楽は彼女に影響を受けている部分もあると思う。カヴァーするならゲイリー•ライトの“ラヴ・イズ・アライヴ”かな。でも僕はそこまで歌が上手くないからなぁ。

Gary Wright – “Love Is Alive”

── 同郷でもあるあなたがカヴァーのアートワークを手掛けたカンザス・シティーのバンドThe Pedaljets(ザ・ペダルジェッツ)が最近再結成し、一緒にライヴも演ったそうですね。あなたが在籍していたThe Bangtails(ザ・バングテイルズ)もそうですが、80年代のカンザス・シティーのパンク、ガレージ・バンドのシーンで、当時一番大好きだったバンドは?

僕のお気に入りのカンザス・シティーのバンドのアルバムのアートワークをまた手がける事が出来てすごく名誉な事だと思ってる。内容も素晴らしいしね。ライブはすごく楽しくてロックしてたよ。彼等はずっと現役でやってたような感じだった。でも実際は23年ぶりのアルバムなんだよ! 多くの人に聞いてもらいたいし、近々にでも日本でライブをやってくれたらいいのになと思う! ザ・バングテイルズとザ・ペダルジェッツはよく似たバンドで、当時は友好的なライバル関係だった。ザ・バングテイルズのフロントマンのマイク・ウィンストンとザ・ペダルジェッツのマイク・アルマイアーは見た目も似ていたし、音楽スタイルも同じでメロディック・ロックだった。当時は彼らと対バンした記憶はないけど、ライブにはよく行った。彼らは当時の僕の一番好きなバンドだった。80年代の初期にはチョーク(怖いボーカルがいる小汚いパンクバンド)、モータル・マイクロノッツ、デュシャンとボカ・アイ・イアー(アーティスト気取りでディーボを意識したバンド)が好きだった。他にもたくさんのバンドがカンザス・シティーにいたけどね。

Pedaljets – “Tangled Up”

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