――そんなお2人がモノを作る時に大切にしているのはどんなことなのでしょう。それぞれ違うのでしょうか?

土岐 私の場合は、人と話すことなんですよ。

Azumi そうだね!

土岐 歌を歌うことにおいて、人と話をするのは私にとってすごくギフトをもらえることなんです。歌詞を書く際も本当にそうなんですけど、話している時は別に音楽の話をするわけでもなくて、世間話とか、くだらない話でも何でもよくって。でもそこから深く話しているうちに、わたしの場合、絶対に生き方の話になるというか(笑)。

Azumi 「生き方の話」って(笑)。でも確かにそうだよね。

土岐 自分の人生って一回しか経験できないけど、話していると相手の人生も一緒に経験したような気持ちになったりとか、「ああ、そんな考え方もあるんだ」とか、「そういう心情なんだ」とか、自分が味わったことない気持ちでも、話を聞いてるうちに引用したりして、心が動く。その心が動くっていうことが、私には歌とか歌詞とかに一番血となり肉となる部分があるんです。話をすることが単純に好きというのもあって、それが一番大事だったりしますね。

Azumi 今土岐ちゃんの話を聞いてなるほどなぁと思ったんですけど、わたしは逆に、人と話すことはないですね。もちろん色々話しますけど、それより活字でも音楽でも、自然でも何でもいいんですけど、いつもとは違う環境に置いて、そこで感じるものをインプットしていくんです。その中でわたしにしか出来ないことって何だろう? って考えることを大事にしていますね。

――なるほど。土岐さんは11月19日(水)にニュー・アルバム『STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~』を出されます。これはカヴァー・アルバム『STANDARDS』シリーズとしては9年振りですが、なぜこのタイミングでまた挑戦しようと思われたんでしょう?

土岐 ソロの1枚目として、完全にひとりの作品として作ったのが『STANDARDS』の一枚目だったんですけど、それまでバンドをやっていた人間が1人でやること、しかもその内容がそれまでのロックじゃなくてジャズだということで、最初はあまりスタッフにも歓迎されていなかったんですよ(笑)。

Azumi へええ。

土岐 作っている時も「受け入れてくれるだろうか」と不安になったこともあって。でも無事完成して、思ったよりも色んな反響をもらったりして、この自分の直感を信じていいんだという経験が、その後9年活動を続けるモチベーションや熱になったんですね。普段はそういうことって深く考えずに生きているんですけど、今回振り返ってみた時に「あれがなければ、今ソロとして音楽をやっていなかったかもしれないな」と思って。なので、あの時に最初は色々あったけれども受け入れてくれたスタッフとか、ミュージシャンとか、お客さんとか、私に貴重な体験を与えてくれた人たちや『STANDARDS』というアルバムに感謝しているので、もう一回そこに立ち返ろうと思ったんです。

――原点回帰ですか。

土岐 そうですね。あと、最近は私、自分の中のモヤモヤを解消するために音楽を聴く部分があるんですよ。ある人はバーのカウンターで1人でお酒を飲むのかもしれないですけど、それが私の場合は音楽を聴くということで。そういう時に手に取るものって、『音楽的に取り入れよう』と思うものとはまったく違って、女性ヴォーカルで、とても静かなフィーリングに溢れているアルバムなんですね。その声に自分の意識を任せて聴いていると、音楽の中に引き込まれていくし、自分のモヤモヤが聴き終わった頃に少し晴れているんです。だから今回は、そういう作品になったらいいなぁと思って作りましたね。

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――一方Azumiさんも13年にジャズ以外の原曲を大胆にジャズ・アレンジにした 『NEW STANDARD』を出されて、今年はデビュー15周年を迎えています。

Azumi そうですね。でもわたしの中では、『NEW STANDARD』よりも、2011年に出した『ぴあのとあずみ』の方がポイントとなったアルバムなんです。あの時はまだWyolicaをやっていましたけど、Wyolicaとしての活動はやり切った感があったんですね。次は自分の音楽性を高めたいと思って、それこそ10代の頃に音楽にのめり込んでいった時期に立ち戻って、あのアルバムを作りました。その時に「あ、自分はこれだ」と言えるものが初めて出来たというか。自分で企画を立て、レコード会社を自分で探すというところからはじめ、色んなプロデューサーやスタッフの方に助けてもらって出来たアルバムです。あのとき自信を持って聴いてもらえるアルバムが出来たので、また次のステップに行けると感じましたね。今年でデビュー15年ですから、色々ありますよね(笑)。

――(笑)。ヘッドアクセサリー・ブランド『Tuno by Azumi』の活動も、時間が経つにつれてヴィジョンなどに変化を感じていますか?

Azumi ちょうど始めて3年目になるので、分岐点に立っているところです。今ちゃんとブランドとしての軸を持って創っていかなければいけないと思っていますね。でも別に焦っているわけではなくて、よく考えたら私自身もデビューして3年目ぐらいは、それまで突っ走っていたところから余裕が出てきて、ちょっと周りを見渡せるようになり、「どこに向かおう」と意識していた時なので、一度経験しているんですね。だからその経験値を元に進んで行こうと思っています。

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