――そして今月はメジャー4枚目となるシングル『スペクタクル』が発売されましたね。『スペクタクル』を制作しようと思ったきっかけを教えてください。

去年の夏にメジャーデビューをして、それからはなるべく気持ちが前向きになる曲を作っていきたいと思っていました。ひたすら前進するパワーに溢れていたので、10代の頃のように落ち込んだりすることも減っていましたね。それでも、“スペクタクル”を書いた時は、とても精神的に落ち込んでいた時期でした。久しぶりに何かにぶつかることが多く、表しようのないほど、どうしようもない気持ちになってしまっていたんです。曲を書けども書けども、暗くて、重たいトーンのものしか出てこなくて……とても困っていました。

それでも、今起こっている全てのことを受け入れなくては、ここから前進することはできないんじゃないだろうか? ただ、そう思いながら歩いている時に、”スペクタクル”の元となるメロディや詞が浮かんできたので、そのまま曲にしました。お天気と同じように、今、その空の下にいずとも、晴れている時もあれば、雷の時も雨の時もあって、その出来ごとに、「良いも、悪いもないな」。そう思うと、別に良いとか悪いとか、ポジティブでもネガティブでもない。それらは逆にとらえてみれば、陰でも陽でもあるんです。そんな風にフラットな曲にしたいなと思いながら書き進めた1曲です。

チェキとさんぽしながら語る。植田真梨恵『スペクタクル』 2-12

『スペクタクル』初回限定盤ジャケット写真

――「スペクタクル」には壮観や壮大、劇的などといった意味がありますが、このタイトルに込められた意味や意図はありますか。

今回のシングルは冬のリリース。私はなんとなくなんですけど、冬の空や雲の動きが好きなんですよね。空を見た時に、「スペクタクル!」と感じる瞬間が、冬の風景の中に多いなと感じているんです。それと、「スペクタクル」という言葉は、より冬に似合う言葉だなと思ったりもしています。たとえば今日も、お散歩をしていて見つけた、冬の空、寒空の中で咲いているピンクの花。繊維街でみた布地もそうなんですけど、誰かが織り成したニットや刺繍の模様をみて、「わっ! スペクタクルだ!」そう思う瞬間がありました。そういう瞬間瞬間の光景は、生きているからこそあるんだ。そう思って”スペクタクル”というタイトルを付けました。

――何気なく散歩をしている中でも、しっかりと周りを見て、感覚を研ぎ澄ませていれば、「スペクタクル」と感じるものって沢山あるものなんですね

みなさんも日常の中で、そういう瞬間に出会えたら素敵ですよね。そういう瞬間を覚えておきたいな。そう私自身も思って日々を過ごしています。

ーー何気なく歩いているだけでも心が動かされるものに出会える瞬間はありますよね。たしかに、その瞬間って忘れてしまいそうで、忘れたくないものです。その素敵な瞬間を忘れたくない! そんな気持ちにさせてくれる”スペクタクル”ですが、どんな時に聴いて欲しいですか? 

そうですね……いつでも、どこにいても聴いてもらえたら嬉しいですね。楽曲の展開は目まぐるしく変わっていったりもしますが、メロディライン自体は優しいメロディになるように作っています。その展開も楽しんで欲しいという想いも込めているので、”スペクタクル”を聴いて、少しでも心が優しくなるといいなと思います。少し疲れている時とか、心が閉鎖的な時にも聴いてもらえる曲であったら嬉しいですね。

――《何も持っていなくたって、しあわせだった。》、《変わらないことがあって嬉しくなるのは、変わり続けるから。》というサビに入る直前の歌詞は、心が閉鎖的な時に響いて、よりサビの歌詞が入ってくる感覚になります。たしかに“スペクタクル”は1曲を通して、音も歌詞にも抑揚のある展開がありますね。

変化を受け入れていけたらと思い書いた曲なので、これから状況が大きく変わっていく人、新生活が始まる人。何かに挑戦する時に、パワーになれば良いなと思いながら歌っています。人生には誰しもが、頑張れる時も、頑張れない時もあると思います。「どうしようもない」と思うようなことへと向き合う時こそ、音楽が救ってくれたらいいなとひたすら願っているので、”スペクタクル”が、みなさんに優しい手触りで届いていくならば、とても嬉しく思います。

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