mysoundイチ押しのアーティストにテーマに合わせた楽曲をピックアップしてもらい、その曲にまつわるエピソードから本質を掘り下げていくプレイリスト企画。今回は、ジャムバンド、ロック、現代ジャズなど、ジャンルを越境しながらスリリングな音楽を毎回作り上げるインストバンド、Yasei Collectiveの登場です。5月24日(水)にリリースしたニューアルバム『FINE PRODUCTS』は、疾走感のあるビートやポップなサビと同時にテクニカルで変態的な各楽器のせめぎ合いが楽しめるリード曲“HELLO”を含む5曲と、より実験的なインタールード4曲の計9トラックから構成されています。そんな彼ららしいプレイリストのテーマは“変拍子だって踊れる曲”。メンバー各々の音楽的なバックボーンや、リズムに対する意識がわかるセレクトで、さらにニューアルバムへの理解も深まりそうです。

Interview:Yasei Collective

【インタビュー】リズムで読み解く!Yasei Collectiveの“変拍子だって踊れる”10曲 yaseicollective_2
L→R:別所和洋(kays)、斎藤拓郎(Gt,Voc,Synth)、中西道彦(Ba,Synth)、松下マサナオ(Dr)

中西“今回は自分たちを縛らずにただやりたいものをやったアルバムですね”

——今回のアルバムに向けての意識はどんなものでしたか?

松下マサナオ(以下、松下) 使ってる音とか音色に関してのテイストは全然変わってないんですけど、今まですごく細かいところに目を向けていたのが、色々な国内外のアーティストも競演することによって、開いた感じの内容でやりたいなと思えて。ま、凝ってるか凝ってないかとか、変拍子かそうじゃないかとかじゃなくて、“HELLO”のように一聴したときに比較的聴きやすい曲にもアプローチしました。

中西道彦(以下、中西) 逆に“Pitout”はマニアックな曲で、今までだったらマニアックすぎるという感じで省いてたと思うんですけど、今回は自分たちを縛らずにただやりたいものをやったアルバムですね。

——去年ぐらいから現代ジャズをロックのリスナーも聴くようになったと思うんですけど、今作ではそれをあからさまにやってないなという気がしたんです。

別所和洋(以下、別所) それはそうかもしれないですね。状況に沿って音楽性を変えるのは嘘じゃないですか(笑)。別に俺らがやることやってて、それを拾い上げてくれる人がいるのは嬉しいけど。

松下 今回の“HELLO”もサビのポップな部分を聴いて、疾走感があるみたいに書く人もいるし、マニアックな部分だけピックアップされたら現代ジャズの流れの中にいるみたいに書かれてもおかしくないけど、僕らはなんて書かれても別に構わないというか。

松下“お客さんはそんなに違和感なく、よくやるなぐらいの感じで乗ってくれるのかなと”

——さて、今回のプレイリストのテーマの“変拍子だって踊れる”はどういうところから?

松下 Yaseiだったら普通のシチュエーションに合う曲みたいなプレイリストよりもちょっと変わった切り口でプレイリストを考えてみたらいいんじゃないの? と思ってですね。

——では別所さんから選曲の理由を聞かせてください。まずは「スティング」。

別所 メロディは歌い上げてる感じですけど、その裏で実は5拍子の、しかもピチカートみたいなリフがすごい踊りやすい感じなんで、音楽の知識がない人が聴いたら別に変拍子と気づかないまま踊ってるんじゃないかなって感じがします。“マルサの女”も5拍子かな。でも、それ以上にメロディも意味わかんないですよね(笑)。映画の挿入歌って割とコアな音楽でも絵に対して不安感を想起させるとか、そういうことで成立しやすいような気がする。しかも踊れないですか? これ(笑)。フロアでかかったら盛り上がりそうな感じがします。

Sting – “Seven Days”

本多俊之– “マルサの女”

——松下さんはまずYasei Collectiveを(笑)挙げてくれましたが。

松下 これ実は変拍子じゃないんですよ。だけど、一拍とか二拍を奇数で割ってるっていう僕らの曲の中から代表として選びました。ほとんど4分音符、2分音符でできてるんですけど、それの後ろでドラムがかっこいいことやると曲がカッコよくなるっていう、いい例かなと思って(笑)。

——お客さんはどんな風に踊ってますか?

松下 普通に乗ってますよ。多分、そこまで意識してないんだと思う。僕らも演奏手法は生楽器でやってないような感じで、打ち込みっぽくやるので、お客さんはそんなに違和感なく、よくやるなぐらいの感じで乗ってくれるのかなと。

Yasei Collective – “radiotooth”

——もう1曲はジョン・スコフィールド。これはもうジャズですね。

松下 特にこのトリオの時はジャジーなジョン・スコフィールドですね。僕、もうジョンスコが無条件に好きなんです。5拍子の超スローなナンバーで、なんか踊れるっていうのは僕だけかもしんないですけど、ずーっと何も考えずに聴いていられるっていう意味では踊れる曲です。

——何がどう変拍子なのか? 意識して聴くと変な感じになるというか。

松下 そうそう。この曲、1、2、3、4、5って聴いた瞬間、全然乗れない。そこはもう身を任せるしかないですよね。それにこのバンドはどの楽器も音がフラットで。ギタートリオってギターがデカかったりするけど、そうじゃないのがいいんですよ。

John Scofield – “Toogs”

【インタビュー】リズムで読み解く!Yasei Collectiveの“変拍子だって踊れる”10曲 yaseicollective_3

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text&interview by 石角友香
photo by 工藤直人