1984年の結成以来、長期の活動休止や解散の危機とは全くの無縁で、コンスタントに良質な作品を作り続けてきたヨ・ラ・テンゴ(Yo La Tengo)。80年代後半のUSオルタナ黎明期から90年代の全盛期、2000年代のインディ・ロック隆盛を経て、幾度目かの大きな変化の時代を迎えている現在、彼らのように変わることのないバンドは存在すること自体が貴重なものとなっている。

多くのインディー・バンドが生き残りをかけてメジャー・レーベルへの移籍や新しい音楽性への挑戦といった可能性を模索する中、ヨ・ラ・テンゴだけは徹底して不変のままだ。2018年3月にリリースされた通算15作目の新作『There’s a Riot Going On』は、同時期に手がけた映画『いろとりどりの親子』のサウンドトラックと並行して制作され、セルフ・プロデュースとなっているものの、そのサウンドに目を見張るような変化はない。ヨ・ラ・テンゴというバンドが内包する多様性を乱反射させた、白昼夢のようなサウンドスケープは変わらずに美しいままだ。

Yo La Tengo – There’s a Riot Going On

その最新作『There’s a Riot Going On』を引っ提げて、<朝霧JAM>への出演と東名阪ツアーを行ったヨ・ラ・テンゴ。即日ソールドアウトとなった坂本慎太郎とのスプリット・ライブ直前、アイラ・カプラン(Vo/G)に話を聞いた。

Interview:アイラ・カプラン(ヨ・ラ・テンゴ)

ヨ・ラ・テンゴのアイラ・カプランが語る、最新作『There’s a Riot Going On』制作秘話と30年以上もバンド継続の秘訣 interview181122-yo-la-tengo-2-1200x1600

——今回の来日では<朝霧JAM>へ参加されました。同フェスでのライブはどうでしたか?

台風の心配をしながら演奏するという、いつもとは違う経験になって楽しかったね。それに、僕たちのライブの前にBOREDOMSを見ることができて良かった。彼らのパフォーマンスはとても素晴らしかったよ。

——台風で開催が危ぶまれる中でのステージとなって、オーディエンスにとっても特別な体験となったのではないかと思います。

悪天候下でのステージは、オーディエンスに2つの選択肢があると思うんだ。惨めな体験になってしまうか、本当に素晴らしい時間になるか。天気が悪いとみんな消極的に過ごすことができないから、結果的にとてもエキサイティングなライブになったと思う。

——<朝霧JAM>と同じくアウトドア・フェスである<FUJI ROCK FESTIVAL>(以下、フジロック)には何度も参加されていますが、<朝霧JAM>ならではの魅力はどこに感じましたか?

<フジロック>のような大きいフェスでは、広い場所にいくつもステージがあって、多くのバンドが同時にパフォーマンスしているから、普段のライブとは随分違うステージになる。でも、<朝霧JAM>は規模が小さいから、普段の自分たちと近い環境で演奏できたと思う。小規模だからこその親密な空気があるのが良かったね。

——今日はこれから坂本慎太郎とのツーマン・ライブですが、彼との付き合いも長いですね。

サカモトサン(坂本慎太郎)とはゆらゆら帝国の頃からの付き合いで、日本でもアメリカでも何度も共演してきた。僕らの中では特にジェイムズ(・マクニュー)と仲が良くて、彼のソロ・プロジェクトであるダンプ(Dump)の12インチ・シングル(『NYC Tonight』)でリミックスを担当してもらったりもしていた。GGアリン(GG Allin)の“NYC Tonight”のカバーで、とても美しいバージョンになっていたね。僕たちみんな、ゆらゆら帝国の頃からの大ファンだよ。

——彼がソロになってからのライブを見るのは初めてだと思いますが、どのようなライブを期待していますか?

サカモトサンのレコードはまだ一枚しか聴いていないんだけど、そのアルバムはとても大好きだから楽しみだね。さっきサックスを見たんだけど、ゆらゆら帝国の時には彼らがサックスを使っているのを見たことがないから、どんなライブになるのか想像もつかない。本当に楽しみだね。

——3月にリリースした新作『There’s a Riot Going On』は、同時期に手がけていた映画のサウンドトラックのレコーディングから派生して生まれたそうですね。どのような制作過程だったのでしょうか?

その2つが密接に繋がっているのは確かだね。映画用の音楽は主にコンピューターを使って、一つのアイデアをもとに作っていた。それと並行してバンドが集まって作る作業もしていて、その過程で出来た楽曲がアルバムになっていったんだ。中には、コンピューターで作り始めたアイデアで、サントラではなく自分たちのアルバムに反映された楽曲もある。また、映画用に作った曲で、映画に合わないという理由で使われなかったものもあったんだけど、実はその話を聞いて嬉しく思ったりもしたんだ。それなら自分たちのアルバムに使える! って(笑)。

『There’s a Riot Going On』

——その時に制作していたサウンドトラックを使用した映画『いろとりどりの親子』は、日本でも11月に公開を控えています。映画用の音楽とバンドの音楽で、レコーディングの進め方に違いはありましたか?

今回のアルバム『There’s a Riot Going On』はサントラと並行して作っていったから、制作過程自体に大きな違いはなかった。一番の違いは他者の要望があるかないか、という点だと思う。映画用の音楽では、何分何秒に収めるとか、どのようなムードにするとか、映画サイドからの依頼があらかじめ決まっている。アーティスティックな部分で素晴らしいアイデアが浮かんだとしても、映画にフィットするかどうかを第一に考えなくてはいけない。一方で、自分たちの音楽はまっさらなキャンパスがあって、そこに描くものは完全に自由なんだ。良いアイデアを思いついたら、ひとまず試してみる。それが上手くいくこともあるし、全く別のものへと発展していったとしても、それはそれで面白い。そういう自由度の違いはあると思うね。

11月17日(土)公開『いろとりどりの親子』予告編

——ヨ・ラ・テンゴは結成から30年以上経った今もコンスタントに作品を発表し、精力的にツアーを行っています。バンドを長く続けていく秘訣はどこにあると思いますか?

第一に、僕たちはラッキーなんだと思う。僕たちは他のどの国よりも日本が大好きだけど、アメリカからは長旅になるし、時差もあるから体力的に大変ではある。それでもツアーを楽しめているのは、クルーを含めたバンドみんなでオフの時も一緒に笑い合ったり、いろんな体験をシェアできたりしているからなんだ。彼らと良い関係を築けているからこそ、ツアーや旅の経験も毎回新しいアドベンチャーのように楽しむことができる。また、ジョージア(・ハブレイ)とジェイムズと僕で、興味関心が共通している点も大きいと思う。ロビン・ヒッチコック(Robyn Hitchcock)のバック・バンドとして一緒にプレイしたり、ただ音楽を作ってツアーしたりするだけじゃなく、様々な経験ができている。そうして、自分たちを常に楽しませることが大事なんじゃないかな。

Photo by Kodai Kobayashi

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There’s a Riot Going On

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