日本が世界に誇るバンド、その名もギターウルフ(Guitar Wolf)。漆黒の革ジャンを身に纏い、圧倒的なパフォーマンス、心を揺さぶるサウンド、オーディエンスの心を鷲掴みにする唯一無二のロックンロールバンドである。

この記事では、2019年5月8日から6月2日、アトランタ(ジョージア州)からメンフィス(テネシー州)まで23箇所を周るGuitar Wolf 東USA Tourに帯同したカメラマンのHarada Atsushiによるギターウルフのアメリカツアー密着レポ、その後編をお届けする。

前編はこちらから

アメリカに熱狂をもたらす革ジャンの漢たち:後編

<Guitar Wolf USA Tour>後編をお伝えしたい。

バッファロー(ニューヨーク州)の公演でその事件は起こった。Seiji氏がモッシュピットにダイブした瞬間観客とぶつかり、観客が鼻血を出す事件が発生した。会場の警備員は憤り、怪我人を控室に運ぶスタッフ、どよめく会場。騒然となった会場でそれでもライブは最後の最後まで続けられた。

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もう一つの事件も触れたい。

バッファロー公演でアメリカ人のツアーマネージャー・Jimmyとローディーのロジャーと袂を別れ、苦渋の選択をして彼らと別れて自分達でツアーを実行するという決断した。それはライブ、運営、事務、車の移動、機材運搬を含めて全て自分達で行うという事である。苦渋の決断をくだし、過酷なツアーに加え、更に厳しい仕事を課す事である。全ては待っているオーディエンスの為に、その選択をしたと思う。事情は本人達にしか分からない。

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厳しく狭き門である音楽を生業とする男達の悲しい決断、辛い側面を垣間見た瞬間であった。

今回、初めてツアーカメラマンとして、同行と仕事を行なった。率直な感想を言うと、それは非常に過酷な体験で、移動につぐ移動、新しい街や環境、州毎に違う治安、異なる言語や環境、ツアーにまとわりつく誘惑。ギターウルフはこの海外ツアーを20年以上続けているのである。精神的にも肉体的にもタフでなくてはいけない。厳しく過酷な世界だ。

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そんなツアーの中で公演を追うごとにギターウルフのライブがより磨かれ研ぎ澄まされていくのを私でも感じ取る事が出来た。音が視覚的に見えてスパークする瞬間を何度も見る事が出来た。それは観客にも伝わっていた。

ドラムのトオルさんが「全ての要素が重なった時のギターウルフの音楽は本当に凄いんだよ」と話してくれた。ライブ後の湖近くのホテル笑顔でそう語ってくれた。話しを聞いたあと、身震いが止まらなかった。

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余談であるが、ギターウルフのツアー撮影で、Seiji氏に何度か雷を落とされた。それはスタッフとして、カメラマンとして、人として。その中で一番堪えたのは5月26日のミネアポリスで起こった。特設の屋外ステージが立てられ子供も参加出来る地元のフェスティバルの時だった。ライブが終わり、急にSeiji氏が待っているバンに呼び出された。「おい、ライブ後の写真は撮ったか? ステージを降りた瞬間の俺達の姿を撮影したか? 三島君だったら絶対、撮影しているぞ」

三島さん、ギターウルフの専属カメラマンの名前を初めてSeiji氏の口から聞いた。ギターウルフのライブに行くたびに色々な人が笑顔でカメラマン三島さんの話しを自分にしてくれていた。腕も人柄も素敵なカメラマンの方だと。2017年11月29日に亡くなられて、私は三島さんが遺した写真とエピソードからしか、三島さんの見てきた世界を想像出来ない。

自分がギターウルフのツアーを本気で追いかけようと決めたのは、嬉しそうに、そして悲しそうに三島さんのエピソードを自分に語ってくれる方々に、ギターウルフのライブで出会えたからだった。

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ライブハウスにダイブの禁止令を出されたにも関わらずGotzさんが口火を切ってダイブした日、オマハ(ネブラスカ州)で急に車が止まる事件、クリーブランド(オハイオ州)のロックミュージアムにギターウルフと訪れエルビスの魅力を語るSeiji氏を撮影した時間、〈Third Man Records〉訪問、メンフィス(テネシー州)の老舗レコード〈GONER RECORDS〉とギターウルフの数々の逸話、ギターウルフ出演の映画鑑賞、アメリカの前衛的な映画監督マイク・マッカーシーさんとギターウルフの関係。

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メンバーのファンに対する愛情、優しさが溢れていた。写真に応じる時、握手する時、サインする姿、ロックスターとして威厳。日本が世界に誇るロックンロールバンド、ギターウルフ。大きな背中を見せて頂けた事に、写真を撮らせて頂けた事に感謝しかない。

ギターウルフ。自分はRock Starに初めて会えた気がする。その中で垣間見える自然な姿が本当に素敵だった。車の中でKissのロックロール・オールナイトを歌う姿、美味しいレストランを探すトオルさん、飲み過ぎて革ジャンで寝るGotzさん、みんなで宿先のホテルを綺麗にする姿、冒頭で述べたバッファローで怪我をしてしまった方への紳士的で感動するような対応。思い出すだけで、笑顔が溢れてくる。

2019年9月21日に氏の故郷である島根でロックフェスを開催する。その名も<Shimane Jett Fest>. 絶対に来た方がいい!

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その最後にSeiji氏の言葉を伝えたい。

「日本のかっこいいバンドがもっと世界で挑戦して欲しい。過酷だけど、きっと彼らが得たものが少しづつ日本を変えていく」そんな風に日本のロックの将来を嬉しそうに話してくれるSeiji氏。アメリカのハイウェーを飛ばしながら、サングラスの下からうっすら見えてくる、優しい笑顔が今でも色濃く自分の記憶のフィルムに刻まれている。

Text & Photo by Harada Atsushi

EVENT INFORMATION

GUITAR WOLF JET PROJECT
シマネジェットフェス・ヤマタノオロチライジング2019

令和元年9月21日(土)
9:00~17:00
島根県松江市古墳の丘古曽志公園
ADV ¥5,000/DOOR ¥6,000
高校生以下無料

GUITAR WOLF JET PROJECT
シマネジェットフェス 後夜祭 2019

令和元年9月22日(日)
14:30~22:00
松江LIVEHOUSE AZTiC canova
ADV ¥3,000/DOOR ¥3,500(+1DRINK)
高校生以下無料

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