イギリスから出現した世界照準の2組

ディスクロージャーは、南ロンドン出身のガイ&ハワード・ローレンスによる兄弟デュオ。プロ・ミュージシャンの両親の元で生まれ育ち、ダブステップからUKガラージ、フューチャー・ガラージ、ディープ・ハウスまで飲み込んだ強烈なクロスオーヴァー・サウンドは未だ二十歳前後とは信じられないほど振り幅が広く、様々なゲスト・ヴォーカリストを招いたデビュー・アルバム『セトル』は全英初登場1位を成し遂げ、あのピッチフォークでも9.1という高得点を叩きだすなど絶賛の嵐だ。アルーナジョージのアルーナをフィーチャーしたリード・シングル“White Noise”は20万枚以上も売り上げ、すでに2013年のクラブ・アンセムと化しているので耳にしたことのあるリスナーも多いだろう。直接的にはオルタナティヴR&Bとは括れないかもしれないが、ジェイミー・ウーンやジェシー・ウェアといった注目株のR&B/ソウル・シンガーを起用するセンスは、明らかにシーンと共振している。6月に開催された<BIG BEACH FESTIVAL’13>に出演したエロル・アルカンもディスクロージャーのトラックを大量投下していたそうで、将来的にはファットボーイ・スリムやベースメント・ジャックスをも超える大型ダンス・アクトへと変貌するかもしれない。そのポテンシャルは充分すぎるぐらいだ。

Disclosure – White Noise ft. AlunaGeorge

いっぽうのアルーナジョージは、モデル・エージェンシーとも契約するエキゾチックな美女アルーナ・フランシスと、Colourというマス・ロック・バンドのギタリストだった青年ジョージ・リードの2人が2009年に出会い、結成。「BBC Sound of 2013」ではハイムに続く2位に輝き早耳のリスナーから注目されていたが、昨年9月にリリースしたシングル“Your Drums,Your Love”がUKチャートのトップ50に食い込み、続く“Attracting Flies”はキャリア最高の17位を記録するなど、日増しにファンを獲得し続けている。アンビエントからチルウェイヴにも通じるモダンなトラックの素晴らしさはもちろん、やはり最大の魅力はアルーナの歌声だ。舌っ足らずでコケティッシュなヴォーカルは耳にこびりついて離れないし、実体験に基づいたと思しきビターなラヴソングは聴く者の胸をざわつかせる。彼女自身はPJハーヴェイやココロージー、フィーヴァー・レイといった個性的な“声”を持ったシンガーに惹かれたと述べるが、それらと比べてもまったく遜色ないどころか、このキャッチーさはメインストリームにて勝負する上で強力な“武器”だと断言できるだろう。個人的には、CHARAやチボ・マットを思い出したりもした。すでにジェイ・Zがキュレーターを務める<Made In America Festival>を含む大型フェスへの出演が続々と決まっており、満を持してのリリースとなるフル・アルバム『ボディ・ミュージック』は、紛れもなく2013年のハイライトとなる大傑作。来日公演では、“White Noise”の生コラボにも期待したいところ。

AlunaGeorge – Attracting Flies

イギリスといえばポスト・ダブステップの代表格ジェイムス・ブレイクや、リアーナに楽曲がサンプリングされたザ・エックス・エックスのような、果敢にジャンルを超越していくアーティスト/バンドが次々と世に羽ばたいている。北米や西海岸をベースに盛り上がっていたオルタナティヴR&Bもまた、アメリカだけのものではない。インターネット以降の音楽はジャンルから“タグ”に分解され、もはや国境も、オンラインとオフラインの温度差も、メインストリームとアンダーグラウンドの境界線も無くなりつつある。だが、ライヴハウスやダンスフロア、あるいはフェスティバルといった現場でしかシェアできないものも数多くあるはずだ。その可能性を改めて証明してくれた存在が、筆者にとってはディスクロージャーとアルーナジョージだった。世界が嫉妬するWヘッドライン公演は、9月24日(火)、東京一夜限りで行われる。絶対に、絶対に見逃してはならない。

(text by Kohei Ueno)

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