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1960年代末から西ドイツを中心に生まれた実験的音楽、通称・クラウトロック。CANやNeu!などジャーマン・ロックシーンを語る上で外せないジャンルであるものの、本国ドイツではジャンル名としてあまり定着していない不透明な存在だ。その曖昧さゆえに、さまざまな音楽的要素を詰め込むことができ、新たな化学反応を生み出すクラウトロックは、無限の可能性と中毒性を秘めた一種の麻薬かもしれない。

そんな先人たちの築き上げた実験精神を受け継ぐ日本人こそ、ジャパニーズ・サイケデリック・クラウトロック・バンド、Minami Deutsch(以下、南ドイツ)。作詞作曲を担当するフロントマンKyotaro Miula氏を核に、2014年東京で結成し、現在Kyotaro氏のみベルリンへ移り住んでいる。カテゴライズ化されつつある現行のクラウトロック・シーンに切り込んだ2ndアルバム『With Dim Light』を携えて、現在3度目のEU/UKツアー真っ只中。半年ぶりにベルリンへ帰還した彼らに、バンド結成までの経緯、最新作、クラウトロック界の大先輩であるダモ鈴木氏との共演について訊いた。

Interview: 南ドイツ(Kyotaro Miula, Taku Idemoto, Keita Ise)

【インタビュー】ジャパニーズ・サイケデリック/クラウトロックシーンを牽引する日本人バンド・南ドイツが結成から最新作までを語る Minami_Deutsch_pickup_002-1200x801
photo by Noel Richter

——まずは、南ドイツ結成までのストーリーを聞かせてください。

Kyotaro Miula(ギター、ボーカル、シンセサイザー。以下、Kyotaro) 幾何学模様が東京で主催していたマンスリーイベント<Tokyo Psych Fest>によく遊びに行ってて、そこで最初のドラマーに会いました。その頃は他のバンドをやっていたんだけど、クラウトロックをやりたいなと思って。日本でクラウトロックだけにフォーカスしてやっているバンドもいなかったから、面白いかなと思って始めました。そのあと、変わったギタリストに会って、その子はマーシャルのアンプのトレブルとミドルを全部切ってベースだけフルにして弾いてて、なんだこれはと思ってすぐ誘いました(笑)。彼らが初代メンバーだったけど辞めちゃって、その後TakuとIseくんが入ったんです。

Taku Idemoto(ギター。以下、Taku) 僕もそのイベントでKyoちゃん(Kyotaro)に出会ったのが最初です。当時はTolchockというバンドをしていて、南ドイツと一緒に台湾ツアーへ行ったのですが、ツアー後にどちらもバンドメンバーが辞めちゃて(笑)。南ドイツはすでにリリースが決まっていたので、Kyoちゃんに誘われて加入しました。Iseくんもその後に。

Keita Ise(ベース。以下、Ise) 僕は<Tokyo Psych Fest>出演アーティストのコンピレーションアルバムに収録されていたTolchockを聴いて、一緒にセッションしたいと思いTakuに連絡したのがきっかけです。それから南ドイツがベースを探していたので、声をかけてもらいました。

——<Tokyo Psych Fest>が3人を繋いだんですね。その主催である幾何学模様とは公私ともに仲が良いイメージですが、どうやって知り合ったのですか?

Kyotaro Goちゃん(幾何学模様のドラマー、Go Kurosawa)は、幾何学模様を結成する前から知っていて。共通の友達がいたんです。その友達が高田馬場のスタジオで働いていて、そこにみんなで集まってジャムセッションとかよくしてました。Tomoくん(幾何学模様のギター、Tomo Katsurada)もそこで会いましたね。
Taku 高円寺のライブハウスの店長から幾何学模様を紹介されたんです。現行のサイケシーンを知っている彼らに出会って、すぐに意気投合しました。

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——そんな幾何学模様の運営するレーベル〈Guruguru Brain〉から4月20日(金)にリリースされた2ndアルバム『With Dim Light』について教えてください。

Kyotaro 前作『Minami Deutsch』は、すごいコンセプチュアルな作品を作りたくて。ワンコードで全曲ハンマービートのアルバムにしたら面白いかなと思って仕上げました。今作はクラウトロックの他の要素をもっと詰め込もうと思って。現行でクラウトロックと呼ばれてるバンドって、電子音楽、四つ打ち系が多い気がするんです。だから、それとは違う要素を入れられたら面白いかなと。あと、クラウトロックはシリアスなバンドが多い印象だけど、当時の人たちはもっとふざけているというか、ユーモアがあって、その緩さを大事にしたいなというのはあります。クラウトロックはやっぱり実験精神の音楽だから、そういう意識で作りました。

——前作1stアルバム『Minami Deutsch』から変化した点はありますか?

Kyotaro ビートが変わってます(笑)。ミニマルな感じは残しつつ、ドラムでもっと遊ぼうと思いました。基本的に3人ともクラウトロックが好きなんだけど、みんなそれぞれ好きな曲をディグって聴いてて。個人的には70年代のソウルとかディスコが好きだから、特にドラムはそういう質感が入ってると思う。今後は、それぞれが好きなテイストをクラウトロックに落とし込んで、自分たちの音楽が作れたらなと思います。

——Kyotaroさんがベルリン、TakuさんとIseさんが東京在住のため、普段は遠距離で作業してますよね。特に今作は、Kyotaroさんがベルリンへ移住後に発表された作品になりますが、どのように制作を進めたのですか?

Kyotaro アルバムのほとんどはベルリン移住前にレコーディング済みで、歌録りとミックスが残っていました。去年のヨーロッパツアーの後に作業を再開して、今回のツアーに間に合うように進めました。

——2ndアルバム『With Dim Light』より、各メンバー毎のオススメ曲を教えてください。

Kyotaro 1曲目“Concrete Ocean”が好きです。間を大事にしたくて。そんなに派手にもしたくなかったから、ギターはあまりいれず、上物はヤン・イェリネックみたいな質感の電子音にしたいなと思いました。アブストラクトなんだけど、その分リズムが強調されていて、気持ちいいかなと。あと、すごい遠いところだと、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのアルバム『Fresh』収録曲“In Time”が好きで、そんなタイトさを出したいと思いました。

Ise 僕も1曲目好きですね。あとは、4曲目の“I’ve Seen a U.F.O.”は踊れる感じ。ビートを強めに出していてプレイしてる方もぶっとべるし、ライブ向きの曲です。

Taku 2曲目“Tangled Yarn”。今までのミニマルな感じからダイナミックな作品へと変化したもので、反復して追求していく快感ではなく、エモーショナルな部分で快感が生まれる曲になっています。身体的にもグルーヴが生み出せる、今までにない感じが好きです。

——5曲目“Bitter Moon”はKyotaroさんの好きな映画のタイトルと同じだとか。

Kyotaro そう、ロマン・ポランスキーの『赤い航路(Biter Moon)』。愛憎劇というか、1つの愛のかたちを表現した映画で。ただ、好きな映画だから曲名にした訳ではなくて、出来上がった曲の雰囲気が映画に合っていると思ったので付けました。

——先日開催された<Roadburn Festival>にて、クラウトロック界のレジェンドバンドCANのダモ鈴木氏と共演しましたよね。

Kyotaro 偶然にも自分たちのブッキングエージェンシーとダモさんのブッキングエージェンシーの事務所が隣り同士で、南ドイツとダモ鈴木で何かできたら面白いんじゃないかという話から始まりました。幾何学模様とアースレスが東洋と西洋のバンドを集めてコラボレーションしようという同フェスの企画があって、そこに加わることになったんです。

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——約45分間のインプロビゼーションライブ、実際に共演してみてどうでした?

Kyotaro 事前にほとんど喋らない状態での即興ライブでした。やっぱり当時のライブ映像とか昔Youtubeで見てたので、実際に共演できて嬉しかったし、感慨深かったですね。

Taku ダモさんのボーカルだけで最初は引っ張られました。僕らを導いてくれている感じ、そのパワーにさすがダモさんと思いました。ライブ後に「どうでした?」って感想を尋ねたら、「すごい旅でしたね」の一言。的を得てるなぁと思って。

Ise 同感ですね。

——ちなみにCANの中で好きなアルバムは?

全員 『Future Days』

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photo by Noel Richter

——南ドイツといえば定期的にEU/UKツアーをしていますが、今回のツアーはどうですか?

Taku 前回あれだけ長いツアーを終えて、経験値と自信が体に溜まっているなっていう実感があります。音の信頼感も前回のツアーから引き続き付いてきているなと。

Ise かなり糧になってますね。

Kyotaro ツアーとなると7週間くらい毎日一緒にいるから、東京で週1スタジオに入るよりも凝縮して会えてるかな。あと今回は途中から幾何学模様のGoちゃんがドラマーとして参加しているので、サイケデリックなテイストが加わって面白いと思います。

——The KVBをはじめ海外アーティストから支持されるなど、ツアーを重ねる毎に海外での認知度が確実に上がっていますよね。Kyotaroさんは実際ベルリンに住んでみて、何か感じたことはありますか?

Kyotaro 東京に住んでアーティストをやっていると不便に感じることが多かったんですが、その分ベルリンは自由。特にDIY精神が本当に強くて、アーティストも本気でやってるというか見かけだけではないんですよ。そういう人が多いから住みやすいし、自分に合っていると思います。ベルリンの空気も合いますしね。

——ところで、現在もドイツにクラウトロックは根付いていると思いますか?

Kyotaro それは思わないかな。でもなんとなく空気感はありますよ。クラウトロック知らなくても、この人クラウト感あるなぁ、みたいな。

——ベルリン生活が今後の作品にも大きく影響しそうですね。最後に、これからの活動について教えてください。

Kyotaro ダークウェイブとか聴くようになったから、そういうアーティストたちとコラボレーションしたいです。あとはクラブカルチャーのシーンで何かできたら面白いかな。日本ツアーは誘われたら行きたいですね。あと、ツアー後にMVを制作予定です。

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南ドイツ

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text by Yukiko Yamane

山根裕紀子

山根裕紀子

フリーランスライター

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