――アルバムではそのレイラからザ・ミーターズのジガブー・モデリストまでの参加を得た上に、『Older(Revisited)』(リミックス・アルバム)ではフロー・モリッシーやカミーユほか多数のアーティストと録音したリミックス・ヴァージョンが収められ、いつになくコラボレーティブなモードにありました。それはなぜでしょう?

私たちは常に、たくさんコラボレーションをしたいと望んでいるのですが、それを完全に成し遂げたのは今回が初めてです。ほかのアーティストが私たちの音楽をどう再解釈するのか、すごく興味があります。最初のコラボレーションはブラッド・メルドーとのセッションでした。夢が叶ったようなものです。それが、ジュールズ・バックリィの指揮によるメトロポール・オルケスト(Metropole Orkest)とのふたつ目のコラボレーションのアイデアをくれました。ドビュッシー・カルテットとのコラボレーションと、“カワード”をリミックスしたRONEとのコラボレーションも。そしてしばらく経つと、私たちはそのままどんどん続けたくなったんです! ダヴィッドによるリミックスで歌ってもらうためにシンガーのカミーユを、若く才能あるミュージシャン兼プロデューサーのジム・ヘンダーソンがリミックスした、新しいヴァージョンの『Older』で歌ってもらうためにフロー・モリッシーを招きました。ジェネラル・エレクトリックス(General EleKtriks)や20sylといった著名なミュージシャンともコラボしましたが、ほかにもラグ・アンド・ボーンズ(Rag and Bones)やシティ・スクエア(Circle Square)のような無名のリミキサーたちも、非常にクリエイティヴなヴァージョンで私たちを驚かせてくれました。これらのコラボレーションは、私たちが通常作っているものとは異なる音楽を体験する機会を提供し、次のアルバムでの新たなコラボレーションに向けてインスピレーションを与えてくれたんです。

Yael Naim – “Coward” from the new album “Older” – Live

――“カワード”でのブラッドとの共演は、どんな経緯で実現したんですか?

私たちはブラッドの音楽と、クラシック音楽の影響を即興音楽やジャズに持ち込む彼の手法が大好きなんです。私の夢は、“カワード”という曲に対して心を開いてもらって、彼にしか思いつかない方法でプレイしてもらうことでした。彼とのミーティングと、私たちが一緒に行なった演奏は、想像を超える素晴らしい体験でした。端的に言って、現時点でダヴィッドと私が体験した中で、最もパワフルな音楽的体験です。

――アートワークに用いたフクロウは何を象徴しているのでしょう?

フクロウは様々な国の文化において、生と死をつなぐ通路を象徴しています。つまり、アルバムが何を物語っているのか示唆しているんです。同時にフクロウは、夜間でもずば抜けた視力を誇っていて、暗い時期にも目をしっかり見開いていることを、表してもいます。

――このアルバム制作を通じて、自分について何か新たな発見はありましたか?

自分の声に関して、何かふっ切れたところがあるような気がします。怖れを感じることなく、自分を解放できたのではないかと。また、音楽にまつわるダヴィッドの尽きせぬアイデアとヴィジョンに、幾度も幾度も新しい側面を発見しました。

――聴き手にはこのアルバムからどんなことを感じ取ってもらいたいですか?

私たちの人生は短いものです。もっとたくさんの共感と思いやりを持って、お互いと接するべき。自分たちに可能な限り、たった一度だけの人生を楽しんで、お互いに助け合う努力をするべき。私がそれをできているとはまだ言えませんが、学んで実践しようと努力しています。

――昨年11月末にはパリで起きたテロ事件の公式追悼イベントで、ジャック・ブレルの“愛しかない時(Quand on a que l’Amour)”を歌いました。その時にどんな感情があなたの心中を巡っていたのでしょうか?

私の心の中では、様々な異なる感情が渦巻いていました。犠牲者たちに対する深い悲しみ。プレッシャーと名誉、そして、あのような重要な場でデリケートな感情を代弁するという、途方もなく大きな責任を感じていました。

ビートルズやケンドリック・ラマーからの影響も? ヤエル・ナイムを紐解く interview160323_yaelnaim_4

RELEASE INFORMATION

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本作で、フランスで最も栄誉ある、フランス版グラミー賞、<ヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュージック2016>の主要部門の最優秀女性アーティスト賞受賞!

日本盤CDには、ブラッド・メルドーとの共演曲 “カワード feat. ブラッド・メルドー”を収録。

ハイレゾ配信:e-onkyomoraototoy

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Interview & text by 新谷洋子