死ぬまで生きよう、どうせだもん。
介護士の「サワ」はヘルパーとして通っていた家で、ある日変わったお願いをされる。「サワちゃん、おじいちゃんと寝てくれない?」渋々サワはそのお願いを受けるが、その夜事件は起き、サワは一夜で「家ナシ・金ナシ・仕事ナシ」となり果てる。そんなサワが、生きて行く為に選んだ手段とは。
映画『0.5ミリ』は、『カケラ』から二作目の長編監督作となる安藤桃子監督、『愛のむきだし』で圧倒的な演技力をみせ、世間を驚かせた実力派俳優・安藤サクラ主演という、若手実力派姉妹のタッグが組んだ映画だ。196分という長い時間の中で彼女たちは私たちに何を問いかけるのか。この映画は、私たちが生活している中にも必ず存在する”生と死“を、静かに美しく、細かく丁寧に映し出していた。
サワや、サワが出会うおじいちゃんたちは“一人”で生きることは当たり前であった。おじいちゃんたちは、誰かと“二人”で生きていくことなんて縁がないと思っていた。そんなおじいちゃんたちがサワと出会うことにより、前向きに楽しく、生きようとする。サワは、一見すると老人の弱みにつけこんで何か企む女に思えるのだが、実際は家事・料理が上手く、さらに相手の凝り固まった心を溶かす力を持った女性であった。そんなサワの不思議な魅力におじいちゃんたちはもちろん、いつしか観客の私たちも惹かれていく。
サワを演じる安藤サクラの、こんなに優しい笑みは見た事がなかった。「私が一番綺麗な安藤サクラを撮れる」そう言い切った実姉・安藤桃子の言葉は本物であったと感じる。監督自身の小説を基に、高知の美しい景色の中で撮影された今回の意欲作。緩やかな時間の中で、サワとおじいちゃんたちは美しく微笑みながら、私たちに命の在り方を問いかける。遠いように思えるが、この映画の世界と私たちの世界は、本当はすぐそばにあるのではないのだろうか。
text by Rina Kawarai(Qetic)
『0.5ミリ』
10月24日より、高知にて先行上映中!
11月8日、有楽町スバル座ほか、全国順次ロードショー
監督・脚本:安藤桃子
出演:安藤サクラ/柄本明、坂田利夫、草笛光子、津川雅彦
上映時間:196分
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