■ 従来のアルバム・サイクルに別れを告げた、ロイクソップの未来
この度リリースされる5作目『ジ・インエヴィタブル・エンド』は、彼らにとっての最高到達点であると同時に、もっとも真摯なアルバムと言えるのではないか。全編スヴェインとトルビョルンによるセルフ・プロデュースとなり、今作ではより歌詞に重点を置き、これまでに比べ悲観的でダークなコンセプトを取り扱っている。「このありのままのアプローチが、とてもパーソナルで、誠実で、決定的なもののように感じるんだ」とスヴェインが語るように、作品を包み込むフィーリングは必ずしもハッピーなものではない。しかし、宇宙遊泳を思わせる電子音のシャワー、十八番の高速ブレイクビーツ、耳をつんざくドローン・ノイズ、そして男女のエモーショナルなヴォーカル(ロイクソップの2人もヴォコーダーをかませて歌っている)と、精緻に作り込まれたサウンド・プロダクションは聴けば聴くほど発見がある。分かりやすいブレイクや、フロアライクな派手さは皆無。だが、EDM全盛の時代にあって、今なお彼らの方法論は有効なのだ。
『ジ・インエヴィタブル・エンド』ジャケット
『Do It Again』収録ナンバーをエディットした“Monument(T.I.E. Version)”や“Rong”でのロビンをはじめ、ウェールズ出身のエレクトロ・デュオ=マン・ウィズアウト・カントリーのライアン・ジェイムスや、“Something In My Heart”にもフィーチャーされた、総勢10名からなるパフォーマンス集団「ジ・イレプレッシブルズ」の頭脳ジェイミー・イレプレッシブといったゲスト・ヴォーカリスト陣の中でも、特筆すべきは“Running To The Sea”で客演したノルウェーの女神スザンヌ・サンドフォー。彼女はフランスのエレクトロ/シューゲイザー・バンドM83がサントラを担当したSF映画、『オブリビオン』のテーマ曲にも抜擢された神秘的な歌声の持ち主で、『Late Night Tales: Röyksopp』においてはロイクソップと一緒にデペッシュ・モードの“Ice Machine”をカヴァーしている。突拍子もないサンプリング・センス、相思相愛のコラボレーション、あるいは才能豊かな若手をフックアップしてみせるスヴェインとトルビョルンのスタンスはデビュー当時から1ミリもブレないが、それはやはり、彼ら自身も敬愛するヒップホップの思想と通じる部分があるのだろう。
ヴォコーダー・ボイスを散りばめたラスト・トラックの“Thank You”がまた意味深だが、『避けられない終わり(The Inevitable End)』という意味を持つタイトル通り、従来のアルバム・フォーマット、およびリリース・サイクルからの脱却を宣言したロイクソップの未来は、よりアイディアと刺激に満ちたものになるはずだ。
(text by Kohei UENO)
Röyksopp feat. Robyn -“Monument(The Inevitable End Version)”
Release Information
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