昨今のコロナ禍中、おうちにいる時間が増えたという方も多いことだろう。

これほどまで多く、そして唐突におうちにいる時間が増えてしまうと、余暇をどう過ごしたらいいのかわからない。なかには、家でヒマを持て余してしまっている方もいらっしゃるはずだ。

かくいうQetic編集部も、おうちで何をしたらいいんだろう、なんて思いにふけりながらNetflixで配信中の映画やドラマなんかを観ていたところ、こんな考えがふと頭をよぎった。「アーティストの人たちってこの作品を観て、どんなことを考えているんだろう?

ということで、Qeticではこの度、Netflixで現在配信中の映画やドラマ、ドキュメンタリーなどの映像作品の中から、アーティストの方々にひとつの作品を選んでいただき、その作品に対してどんな思いや感情を抱いているのかを赤裸々に語っていただいた。彼らの意見を聞いた上で作品を観れば、きっと思いを共有できるはず!

第8弾となる今回は、キーボーディスト/トラックメイカー/プロデューサーのKan Sanoが語る『オクジャ/okja』。

Kan Sano – 『オクジャ/okja』

昔から何をするにも時間がかかる性分で、流行り物に疎い。そもそも流行ってるものに対してまず疑いの眼差しを向けてしまう。捻くれた性格だと自分でも思うがどうにもならない。例えば、話題の映画を劇場公開中に観に行くことは少ないし、ヒットすればするほど観に行く気が薄れてしまう。

そんな自分が最近これだけは絶対に観ておきたいと、明確な意思を持って劇場に足を運んだのが『パラサイト』。偶然にもその日はアカデミー賞発表の日で、観終えた数時間後に作品賞受賞となった。ポン・ジュノ監督の作品は過去にもたくさん観てきたが今作も素晴らしい完成度だった。偉そうに聞こえるかもしれないがアカデミー賞を少し見直した。

そんなわけでNetflixを始めるのにも2年かかってしまった。始めたのは今年の一月下旬。まずは『ウォーキング・デッド』にハマり、数週間で最新のシーズン9まで一気に観終えた。

それにしてもNetflix制作のポン・ジュノ作品があったとは。『オクジャ』にはもっと早く気づくべきだった。クスっとさせるシニカルな笑いをちりばめ、家族で安心して観れる映画だと思っていたら、最後は見事に後味の悪い余韻を残して幕を閉じる。

ハッピーエンドなのに根本的な問題が何も解決されていないバッドエンドでもある。ポンジュノの作家性を知っている僕は心の準備ができていたが、何も知らずに観たら後半の展開はちょっとトラウマになるかもしれない。笑いのトーンや全体の構成など「パラサイト」に共通する部分が多々あるのが興味深い。

今作のように大量消費社会の影の部分をしっかり見つめ、厳しい現実を描くことを躊躇わない映画こそディズニーや大手でも制作して欲しいし、大人も子どもも広く観るべきだと思う。

鬼才ポン・ジュノ監督最新作!『オクジャ/okja』予告編

Netflix 『Okja/オクジャ』

▼合わせて読む
Vol.5 関口シンゴ(Ovall)『ベター・コール・ソウル』
Vol.6 中山うり『ラッキー』
Vol.7 Mom『ジェラルドのゲーム』

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Kan Sano

アーティストの視点から観るNetflixの映画・ドラマ・ドキュメンタリー Vol.8|Kan Sano『オクジャ/okja』 ac200526_netflix_kansano_01

キーボーディスト/トラックメイカー/プロデューサー。
バークリー音楽大学ピアノ専攻ジャズ作曲科卒業。
リリースしたアルバムは、国内のみならずアジアやヨーロッパでもリリースされ話題となり、国内外の大型フェスに出演。新世代のトラックメイカーとしてビートミュージックシーンを牽引する存在である一方、ピアノ一本での即興演奏ライブも展開。ジャズとクラシックを融合したような独自のスタイルが話題となっている。

プロデューサー、キーボーディストとして Chara、UA、SING LIKE TALKING、土岐麻子、大橋トリオ、藤原さくら、RHYMESTER、KIRINJI、m-flo、iri、向井太一、SANABAGUN、Seiho、青葉市子、THREE1989、Mrs. GREEN APPLE、Shing02、そしてMadlib、Melanie De Biasioといった海外アーティストまで、国籍もジャンルも越えてライブやレコーディングに参加。
さらにTOYOTA、CASIOなどのCM音楽やLINEとのコラボ曲リリース、J-WAVEのジングルなど、様々な企業に楽曲を提供。

2016年、七尾旅人、Michael Kanekoらを迎え、自身のボーカル曲も多数収録した 3rdアルバム『k is s』をリリース、「CDショップ大賞」北陸ブロック賞を受賞。

2019年、300万回の再生を超える2曲のシングルを含む最新アルバム『Ghost Notes』をリリース。

公式HP

RELEASE INFORMATION

DT pt.3

アーティストの視点から観るNetflixの映画・ドラマ・ドキュメンタリー Vol.8|Kan Sano『オクジャ/okja』 music200603_kan_sano_2-1440x1440
2020.06.03(水)
Kan Sano

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