最近しみじみと考えるのですが、僕がプロレスに夢中になり始めた少年の頃に第一線で活躍していたスター達が、ちょうど次々と引退していく年代になってきています。当たり前のことなんですが、やはり熱狂した思い出を考えると寂しくはなりますね。そして先日、また新たなレジェンドの引退が報じられました。そのスターこそ、今回のコラムで紹介させて頂くジ・アンダーテイカー。アメリカのWWEが開催する世界最大のプロレス興行<レッスルマニア>に36回中27回も出場している実績は、それほど彼が最前線でWWEを引っ張ってくれていたことを物語っています。

今回のコラムは、アンダーテイカーをご存知の方はしっかりとその歴史と思い出に浸って頂き、初めて見る方はその驚異的な暗黒の世界観を体験して頂ければと思います。

引退を表明したジ・アンダーテイカーの魅力

よくプロレスラーの登場を、キャラクターが突出していると「入場」以外の独特の言葉で表現されることがありますよね。有名なところで言うと、グレート・ムタの「見参」なんかがそれにあたると思います。

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このアンダーテイカーというスターは、まさに「降臨」という呼び方がふさわしい唯一無二の存在。「地獄の墓堀人」と呼ばれる通り、本当に地獄から来たとしか思えないような世界観を幾度も創り出してくれました。
入場演出も実に多種多様で、何かが起こる緊張感とその予想の100倍は驚かせてくれる展開に、僕はプロレス少年だった頃はもちろん、大人になってからもいつも度肝を抜かれました。もの凄い入場が多すぎてなかなかピックアップに困りますが……

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墓石に雷が落ちて地面の中から手が出てきて現れたり、地獄の住人達の中からゆっくりと現れたり、

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リングに置かれたコスチューム雷が落ちるとテイカーが出現したり、はたまたリングの下から現れて相手を引きずりこんだり
(そろそろ「驚異的」のレベルの違いを察し始めて頂けたでしょうか……)

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落雷で燃える棺桶から蘇ったこともありました。
テイカーの降臨時はいつも会場が真っ暗になって「ゴーーーン、ゴーーーン」という鐘の音が鳴るのですが、その鐘の音が鳴り響いた瞬間に相手選手はこれから自分に降りかかる恐怖を悟り、最強のスーパースター達もこの絶望の表情に。

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恐怖におののくランディ・オートン
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映画界でも活躍するジョン・シナもこの表情……

しかも登場してハットを取った瞬間、この真っ白な瞳で睨みをきかせてくるんですよ。怖い! 怖すぎる!! 僕が相手なら絶対にこの後戦いたくない(笑)

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ここで、テイカーのベストシーンを選出した動画がありますので、そちらをご覧頂きたいと思います。僕のイチオシは、テイカーの手から放出された雷がリングに落ちてリングが崩壊した2006年のこのシーン。

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The Undertaker’s 20 greatest moments – WWE Top 10 Special Edition

やっぱり何度見てもゾクゾクワクワクさせてくれますね。1998年に十字架を模したテイカーマークに相手を磔(はりつけ)にしたのもすごかったし、この動画の中には無かったですが、スーパーヒーローのハルク・ホーガンバイクで引きずり回したのも衝撃的でした。

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こんな度肝を抜かれる演出に目が行きがちなんですが、テイカーはプロレス技術も本当に素晴らしく、数々の名勝負を量産してくれています。まず注目すべきはその恵まれた体格と身体能力。身長はおよそ210cm、体重も140kgほどあるにも関わらず、トップロープの上を歩いて高い所からチョップを振り下ろしたり(技名:オールドスクール)、助走をつけてノータッチでそのまま場外にダイブしちゃったり。その巨体から想像がつかないようなスピードと技術を魅せてくれます。

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そして、テイカーの長身から繰り出されるので、高く持ち上げた投げ技はどれも非常に破壊力抜群。2階から落ちたくらいの衝撃はありそうですね。

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(上からショルダースルー、ラストライド、チョークスラム)

また、相手の体をしっかりとホールドして自身の体重をしっかりと乗せるツームストン・パイルドライバーは、本当に文句なしの重たい一撃。すごい衝撃と共にリングに突き刺さります。

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関節技に関しても、その長い手足を活かした必殺技「ヘルズゲート」はスネを相手の喉元に押し付けた状態で手足を絡めて動けなくし、一気に締め上げていく恐ろしい技。これを決められた相手が吐血することもしばしばありました

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テイカーは試合中のムーブでもファンを魅了してくれます。僕が高校生の時によく友達を巻き込んで真似をしていたのが、相手の腕を折りたたんで舌を出す独特のフォール。これが決まってテイカーが試合に勝つと、会場中のファン達が一気に熱狂して喜びます。

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そして今思い返せば僕はあの頃、テイカーやホーク・ウォリアーなど、舌を出すレスラーの真似ばかりやってた気がします(笑)。

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あとは、ダウンしたと見せかけてムクッと起き上がるこのムーブ。仕留めたと思ったテイカーにこの起き上がり方をされると、相手は驚くと同時に呆然として戦意を喪失してしまいますよね。まさに不死身のテイカーならではだと思います。このムーブは最近の僕の生活習慣にも影響を与えています(笑)。

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色々と紹介してきましたが、最後に今年の<レッスルマニア>で行われたAJスタイルズとの歴史的名勝負をダイジェストでご覧頂きたいと思います。試合前からAJの墓石まで作っていたテイカーに挑発のスケールの違いを見せつけられましたが、コロナの影響もあり配信のみで行われた当日の試合も、見ているみんなが「え? ハリウッド映画ですか?」と思ってしまうほど、すごい演出クオリティーと試合内容でした。

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Recapping WrestleMania’s Boneyard Match: Undertaker: The Last Ride

いかがでしたでしょうか。御歳55歳とは思えない、素晴らしい試合内容でしたね。AJが生き埋めにされてしまった衝撃の光景は一気に話題となり、チャーハンにまでしてしまった素敵なツイートも見つけました(笑)。

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これだけ偉大なスーパースターの引退はやはり寂しいですが、なんてったって不死身のアンダーテイカーですから。引退してからも、また時々地獄から舞い戻ってファンの前に姿を現してほしいですね。

今までの感謝を込めて。
“Rest In Peace. #ThankYouTaker”

次回のみちくさボンバイエもお楽しみに、それでは。

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