クノを中心としたダンスミュージックの宝庫であるベルリンにおいても、当然のことながら様々なパーティーの形がある。クラブだけに限らず、新しいヴェニューやショップ、イベントスペース、ギャラリー、ウェアハウスなど、それぞれ目的も規模も違うパーティーが開催されている。夏期限定でオープンするボートハウスのオープンエリアや郊外の野外スペースなどは、短い夏を楽しむベルリナーにとってとても貴重なスペースとなっている。近隣がよほど神経質でなければ、家の中でさえパーティーが可能。週末ともなれば、アルトバウ(第二次世界大戦前の建物)のゴシック調の家の窓からレーザーの光がこぼれ、どこからともなくドゥンドゥンという重低音が響いてくる。これがベルリンスタイルの1つとも言える。

現在、私が住んでいるアパートメントもアルトバウのリノベーションだ。そして、2つ上の階からは、日夜、週末問わず、フォークロックから4つ打ちまでジャンルレスにgoing my wayなパーティーが繰り広げられている。ベルリンに限ったことではないが、欧州でも欧米でも音楽が生活の一部になっている人種が多いということを改めて感じる。

つい先日もプライド・パレード(ゲイ・パレード)が行われ、同性愛の自由を求める人々が横断幕やプレートを掲げ、街中に列をなしていた。パーティーとは少し異なるが、大切なセレモニーであって、イベントであることに変わりはない。ベルリンのクラブカルチャーがこれほどまでに浸透した背景にはゲイやフリークスの存在があることは周知である。この辺に関してはまだまだ未開拓レベルのため、歴史を探りながら、深く掘り下げていきたい課題ではあるが。

とにかく使えるところがあればどこででも、”Let’s Party!!”と言った感じだ。日本だったら、警察や機動隊出動にまでなり得ることが、”自由な権利だから”と堂々と言える。”踊ってはいけない国”の生活が染み付いてしまっている自分にとって、カルチャーショックはこうやって日常生活の中でも起きている。法が緩和されるというニュースはとても喜ばしいことだけど、本当の意味での自由とは、自発的発想のもとにある行われる自然的行為であり、そこから身に付く感覚や感性というものが新たなカルチャーを生み出していくのではないだろうか。

自由気ままなプライベートパーティーから世界有数のクラブでの本格派パーティーまで、徒歩圏内のエリアで同時間に開催されている。そんなパーティーシティー・ベルリンのパーティーissue第2弾をお届けしたい。

今回は、欧州だけでなく、欧米諸国でも絶大な人気を誇り、2013年のIosランキングでは、Instagramを抜いたドイツ発のカメラアプリEyeEm主催のパーティーを紹介したい。以前、こちらのコラムでもレポートをお届けしたAFTER25のスポンサー企業の1つでもあるEyeEmが先日ベルリンの人気エリア、クロイツベルクに新しいスタジオをオープンさせた。それに合わせて、オープニングレセプションを開催するということで、創設者でクリエイティブディレクターのGen氏から招待を受けて、行って来た。

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EyeEm CEOのGen Sadakane氏

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エントランスには、プロのセキュリティーが立ち開かり、中へ入るとビルの敷地内にある広い吹き抜けスペースに溢れんばかりの人が集まっている。ビール、カクテル、ドイツならではのソーセージBBQのブースがそれぞれ設置され、簡易的なDJブースと少し離れたところには無料で試せる証明写真機「PHOTO AUTOMAT」が。 さらに奥の駐車スペースには卓球台と簡易トイレ。Facebookのイベント参加者が1000人を越えていたことにも納得の規模だ。

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日本でも仕事柄、レセプションパーティーに呼ばれることはとても多く、逆に呼ぶこともある。大袈裟ではなく、ほぼ毎日という週もあったほどだ。ここ数年は顔を出さないことが多くなってしまっていたけれど、久々のレセプションパーティーは、国が変われど内容は変わらずといった印象を受けた。と、同時に、どこよりも早く最先端な情報をキャッチし、様々な形でアプトプットしている東京のすごさも実感した。

しかし、アメリカンドリームならぬ、ベルリンドリームを見たのはその後だった。

アフターパーティーは、いよいよEyeEmのニュースタジオで、ごく一部の関係者だけに向けて行われた。同会場内の外エレベーターから上階に上がると、目の前には、1000人は軽く入るであろう大箱のメインフロアーほどの広さのスタジオが。さらに奥にはオフィススペースのような個室がいくつかあり、壁には自社製品であるカメラアプリでスタイリッシュに撮影された写真の展示、スタジオの真ん中にはDJブース。ビルのワンフロアー全部がスタジオになっているという構図だ。

エレベーター前の厳ついセキュリティーが厳しい目でリストバンドのチェックを行い、付けてない人を容赦なく追い払う。その光景はまるで、Berghainの怖いドアマンとスーパースターの追っかけやパパラッチを追い払うSPのように思えたが、よくよく考えてみたら、1企業の1スタジオ(ここ以外にも2カ所ほど所持しているという)のオープニングであって、有名クラブでもレッドカーペットでもない。

誰でも入れる外会場からのセキュリティー対策の一環なのだろうけれど、一瞬自分がどこにいるのか分からなくなった。しかも、ファッションにあまりお金をかけないと言われているベルリナーの中で、街中のオシャレさんを一同に集めたのではないかと思うほど、スタイリッシュで洗練されていた。来場者は、フォトグラファー、ファッションデザイナー、モデル、アーティストなどベルリン在住のクリエイターたち。最後までいれなかったので実際のところは分からないが、アジア人は私を含め、2〜3名しかいなかったことにも驚いた。

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東京であれば、Facebookのイベント招待をシェアして、自分の友人知人を自由に呼ぶことが出来る。会場に行けば、多数の知人がおり、その日のタイムラインのほとんどが同じ話題で埋まるほどみんな同じ場所に集まる。極端な話をしてしまえば、同日開催のパーティーを2、3件サーキットすることも当たり前の東京においては、どこの会場に行っても同じ顔ぶれが揃っている状態だ。そこには、収入格差も社長もアルバイトも関係ない。

しかし、移民の多くを受け入れているベルリンにおいては、人種の違いは当然のことながら、ライフスタイルが違えば、交友範囲や遊び場も全く異なってくる。東京の人口1300万人に対し、ベルリンの人口は350万人と約4分の1なのだが、その中でもしっかりとコミューンが分かれていて、別のコミューン同士で交わることはほとんどない。

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そんな”成功者”コミューンのほんの一例である貴重な光景を見ながら、一歩外に出れば、貧しい身なりで、空き瓶を拾い集めて生活している人が目に浮かぶ。これが日常であり、先進国であれば、日本であれ、どこであれ同じ現実なのだ。

ベルリンはダンスミュージックだけではない、いろんな可能性を秘めている街だと思う。

そして、毎日は繰り返されるものではなく、更新されていくものなのだ。

その中で、あなたの五感は何をフォーカスして、人生の何にプライオリティーを置くのでしょうか?

著者プロフィール

宮沢 香奈(Kana Miyazawa)
セレクトショップのプレス、ブランドのディレクションなどの経験を経て、2004年よりインディペンデントなPR事業をスタートさせる。 国内外のブランドプレスとクラブイベントや大型フェス、レーベルなどの音楽PR二本を軸にフリーランスとして奮闘中。

また、フリーライターとして、ファッション、音楽、アートなどカルチャーをメインとした執筆活動を行っている。 カルチャーwebマガジンQeticにて連載コラムを執筆するほか、取材や撮影時のインタビュアー、コーディネーターも担う。 近年では、ベルリンのローカル情報やアムステルダム最大級のダンスミュージックフェスADE2013の現地取材を行うなど、海外へと活動の場を広げている。2012年に初めて行ったベルリンに運命的なものを感じ、2014 年6月より移住。