たった1つのズバ抜けた才能を武器に、あとさきを考えず、迸る感情だけで生き、栄光を掴むか、破滅していくか、“平穏”や“安定”などという言葉とは無縁の、自分の思うままに生きるアウトロー。

今の時代、そういった本当の意味での“不良”は絶滅してしまったのだろうか。

ベルリンには、想像を絶するような破天荒な生き方をしている人が大勢いる。その生き方が幸か不幸か、それは誰にも分からない。きっと本人でさえ分からないほど長い年月をそのままで生きている。時代が大きく変わろうとも彼らの生き方は少しも変わらないのだから。

まだ壁に覆われていた80年代の西ベルリン、共同アパートメントの屋根裏部屋にはNick Cave(ニック・ケイヴ)が住みついていた。彼は別にベルリン生まれでもベルリン育ちでもない。メルボルンに生まれ、バンドメンバーとともにロンドンからベルリンへ移り住んだだけである。それでも、ヴィム・ヴェンダースの名作『ベルリン・天使の詩』に出演し、時代の象徴的な存在となっている。

時代はヒッピーからパンクへと変わり、兵役を逃れるためにやってきたアナーキストやアーティストたちで溢れかえっていたベルリンにおいて、生粋のベルリナーでないことどころか、ドイツ人でないことさえ何の違和感もないのだ。

どこへ行っても英語が飛び交い、住んでいる人の多くは若い外国人、新しさと昔の名残が入り混じり、他にはない独特のパワーを感じるNeukölln(ノイケルン)の夜の街を歩きながら、アンダーグラウンドカルチャーで満ち溢れていた80年代を想像した。壁崩壊後の90年代に巻き起こるテクノムーブメントとは違う、同時代のマンチェスターのような、NYのダウンタウンのような、洗練され切っていないそこだけに漂う“俗っぽい”雰囲気にゾクゾクした。

そんな新しいムーブメントとなっているノイケルンの魅力を紹介したい。

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大手チェーン店のないノイケルンは、こじんまりとした雰囲気の良いショップやカフェ、バーが立ち並んでいる。各店舗で協力し合い、不定期で様々なイベントを開催しているのもこのエリアの特徴である。先日開催されていたのは、今回で4回目となるNEUköLLN SHOPPING NACHT。夜の10時まで買い物することができ、参加店は各々にドリンクやフードを提供したり、ディスカウントキャンペーンを行うなど、どこもかなりの賑わいを見せていた。

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ヴィンテージショップ“Rag And Bone Man”では、奥フロアーをスペースとした“NEUKYO”と題したNEUKÖLLNISCH-TOKYO POP-UP SHOPは、日本人シェフが運営するROKU Berlin主催のもと、ノイケルンのイメージにフィットする東京在住や東京出身のアーティスト20組による日本のカルチャーをフィーチャーしたポップアップショップ。モダンで珍しい盆栽やモードな着物の羽織、日本語のメッセージがプリントされたキャップなど、日本を代表するものでありながら純和風ではなく、欧州スタイルに取り入れたくなるアート作品のような個性的なアイテムが展示販売されていた。

その中でも思わず声をあげてしまったのが、海外に住む日本人の心を鷲掴みにするであろう、日本製のサランラップ、アイマスク、パックなど、海外ではなかなか手に入らない、日本製ならではの秀逸グッズたちである。こういった“分かってる!”と言いたくなる生活必需品を、遊び心たっぷりにミュージアムグッズのように見せているのがとてもユニークな発想だと思った。(*NEUKYOは5月30日まで開催中)

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