ーー海外の現場は一発勝負というか、その場で結果を出せなかったら次はもうないじゃないですか?毎回ものすごいプレッシャーだと思うんですが、何か心掛けてることはありますか?

もう半分根性論みたいになってきますよね(笑)。メンタルの強さと気合いがなければやれないです。全然知らない国の知らない人たちの前でやるわけですから、完全にアウェー状態なわけです。それに、日本の場合は、多少間があってもフロアーから人が離れないけど、こっちはすぐに引いてしまうんです。だから、上げる下げるとかではなく、ずっとテンションを崩さないようにキープしないといけないんですよ。反応がダイレクトな分、とてもシビアです。プレイが気に入らなかったら、iPhoneを見せながら「これかけて」とか平気で言ってきますから。もうお客さんとの戦いですね。 

ーーお客さんがリクエストしてくるという話はよく聞きます(笑)。

特にベルリンに関しては、Berghainが出来てから“激しいテクノ”一直線に偏っていきましたよね。テクノのパーティーはテクノをやらないといけないといったルールみたいなものがあって、時にお客さんだけでなく、プロモーターからも言われたりもします。だから、すごく自由度が低いんですよね。でも、<ATONAL>のメインに関しては、アーティストがやりたいことを自由にやれる場だったんです。普段のクラブでは絶対にやれないことをやれたので、そういった意味でもとても実験的で貴重な経験でした。

ーーカンディング・レイとモグワイのバリー・バーンズのユニット(SUMS)とか他では聞いたことないですもんね。

SUMSは完全にカンディング・レイ要素がどっかに行ってしまってモグワイでしたけどね(笑)。

ーー(笑)。

<ATONAL>ってそういった偏ったカルチャーへのある種のアンチテーゼみたいなものがあるんですよ。少なくとも出演者にはそういった意識があると思います。

ーー毎回ワールドプレミアなプログラムが組まれているのはそういった背景があるからなんですね。確かにベルリン=Berghain=テクノという固定概念はどうかなと思う部分はあります。テクノが極まっているのは素晴らしいと思いますが、そこに新しさは感じないですね。ベルリンは、テクノ以外の音楽シーンもきちんと確立しているし、道を歩いていてストリートミュージシャンのクオリティーの高さに驚かされることも多くて、本当に音楽が根付いている街だなあと思います。日本もジャンルに関係なく、充分なスキルもセンスも持っているアーティストが多いと思うんですが、海外で活躍するアーティストが少ないのはどうしてだと思いますか?

特にDJのレベルは高いですよね。ヨーロッパのDJが見習った方が良いぐらいです(笑)。でも、EUツアー中に行ったサルディーニャの<Sun And Bass>もそうでしたが、フェスとかコミュニティーのカルチャーがもう日本とは全然違うんですよね。それに、旅行でさえ億劫な島国根性ですからね。海外に行ってまで自分でやるようなことはしないんじゃないですか? というより、想像さえしない気がします。その点、NOBUさんはすごいですよね。まず人間力があるし、経験と度胸がある。ああゆう人はなかなかいないし、特に若い世代はそういったものを持っていない気がします。

ーーBerghainでも<DEKMANTEL>でもそうでしたが、NOBUさんはオーラそのものが違う気がします。コミュニケーション能力にもすごく長けていますよね。

やはり音楽だけではダメですよね。せっかく海外に来ているのに日本人だけでつるんでいてもダメだし。ローカルのアーティストとのコミュニケーションがとても大事だと思います。<ATONAL>ではアーティストが全員同じホテルだったんですが、ロビーに集まって、今日の誰のライブが良かったとか、良くなかったとか、全員が全員違う意見を持っていて、そういった意見交換の場がとてもおもしろかったです。ローカルとの情報交換や親交を深めるのは現地でしか出来ない貴重なことですからね。

ーー親交と言えば、メンズのファッションブランドJULIUSとは意外な繋がりでしたが、どういった経緯で一緒に活動されるんですか?

実は数ヶ月前にコンタクトを貰ったのが初めてなんです。今年新たにスタートした「NILøS」というストリートカルチャーブランドの一環として音楽プロジェクトを始めるということで話をもらいました。なので、具体化するのはこれからですね。僕はファッションの人間ではないし、ブランドとかも詳しくないんですが、JULIUSは人がおもしろいし、今回はJULIUSとは別プロジェクトになりますが、一緒に出来たらいいなと思いました。レジスとかサイハとかJULIUSのファンみたいですね。

ーーなるほど。そういった経緯があったんですね。もともと音楽を背景に持つブランドだし、昔もパリコレにいった今も独創的で軸のぶれないカッコいいことをやっているブランドだと思っています。「NILøS」のプロジェクトも楽しみですね!

<ATONAL>をきっかけにライブのオファーがどんどん増えていくと思いますが、今後はそちらに比重が置かれるんでしょうか?

イヤ、DJですね。実はライブはあまり本数やらないんですよ。ライブは毎回三分の一が新曲なんです。コアな音楽をやっているとコアなファン層が付くから毎回来てくれる。そうすると同じことは出来ないんですよね。飽きてしまうから、どんどん先にいかないといけないと思っています。

それに、ライブは音響面で条件が揃わないと満足のいく形で出来ないんですよね。予算が掛けれないとクオリティーを保てない部分もありますから。だから、やりたいことが出来ないんだったらやらないと決めています。<ATONAL>ほどの環境で出来るところはなかなかないですよね。

<ATONAL>のアフターパーティーが行われた“OHM”では、ENAからGOTH-TRADへと変わる頃、すでに入場規制が掛かっていた。バーを取り囲んでギュウギュウのフロアーは熱気と歓声に包まれ、拍手が永遠に鳴り止まなかった。

国も音もジャンルレスに渡り歩く、日本人プロデューサーENAに迫る ena4

国も音もジャンルレスに渡り歩く、日本人プロデューサーENAに迫る ena5

2014年セカンドアルバム『Binaural』、2015年『BERLIN ATONAl』ここ数年がENAにとっての大きな転機となったことは確かだろう。iPhoneのボイスメモを止めて、怒られるかもしれないと思いながらも率直な意見として、「とてもファッション性を感じる」と伝えたら、銀座の「Dover Street Market」のイベントに呼ばれたことがあると教えてくれた。やはり……。

日本に根を張り、海の向こう側を見ながら、脇目も振らず先へ先へと進んできた彼のサウンドは、前衛的でエキセントリックで、でもとても洗練されている。そこに魅力を感じるのは、常に時代の先をゆくファッション業界だけではないだろう。

来月6日には、〈Samurai Horo〉よりレーベル初となる7インチ『Divided』が、〈Samurai Red Seal〉よりデビューEP『mereor』がリリースされることが発表された。

EVENT INFORMATION

ENA 出演スケジュール

2015.10.24(土)Eleven@Forest Of Peterpan(三重)
2015.10.31(土)Mask@ARMA17(Moscow)
2015.11.05(木)Back To Chill@Club ASIA(Tokyo)
2015.11.15(日)TBA@Circus(Tokyo)
2015.11.17(火)TBA@Tokyo
2015.11.21(土)SubVibes@Jungle Base(奄美大島)
2015.12.03(木)Back To Chill@Club ASIA(Tokyo)
2015.12.05(土)MADEIRADiG@Madeira(Portugal)
2015.12.12(土)Samura Horo x Auxiliary@Ohm(Berlin)

詳細はこちら

RELEASE INFORMATION

Divided 9 & 10

国も音もジャンルレスに渡り歩く、日本人プロデューサーENAに迫る ENA-DIVIDED-7-LABELS1
2015.11.06(金)発売予定
ENA
レーベル:Samurai Horo

Meteor

国も音もジャンルレスに渡り歩く、日本人プロデューサーENAに迫る ENA-METEOR-1400-X-14001
2015.11.06(金)発売予定
ENA
レーベル:Samurai Red Seal

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photo by Jun Yokoyama(ATONAL, OHM)