自分が美しいと思っている色は一体何色で他人にも同じように見えているのか?

会場に入った瞬間目に入るのはガラス板に収められた真っ黒に塗り潰された花のシルエットである。くるっと裏に回ると鮮やかで美しい花の絵が飾られている。花瓶に挿した生花を撮影し、写真用紙に出力した上にフィルムを貼りその上から絵の具を乗せていくという手法で、二層目となる黒い絵の方も同じ手法で描かれている。

作品の前には花瓶に入った朽ちてゆく花たち、その後ろには真っ黒に塗られた花のシルエット。自然な現象だとしてもシニカルな演出のように思えて面白かった。

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壁にズラリと並べられた花の絵は曖昧で似ているようで一枚一枚表情が違う。

「印刷した写真を水に浸してインクを溶かし、別の紙に押し付けて転写しているんです。プリントという手法ですが、Drawという単語にはペンで描くという意味以外に“ゆっくりと引く、引っ張る”という意味合いがあるので色(インク)を抽出するという意味で僕はこの手法を”ドローイング”と呼んでいるんです。」

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そう、展示されている花の作品全てが“反転”になっているのだ。被写体となった花と比べて見なければ気付かないし、普通であればカラフルな絵を表に飾ると思うが“逆”にしている。アート作品に対する捉え方は人それぞれだと思うし、それで良いと思うが、私たちが普段目に見えているものは本当にその色なのか? 自分が美しいと思っている色は一体何色で他人にも同じように見えているのか?

“Death Becomes Her”永遠に美しくという意味を持つこのテーマにはそんな問いかけも含まれているような気がした。彼のユニークで独特な発想から生まれる彫刻作品も是非とも観てみたいと思った。

武田竜真(Tatsuma TAKEDA)プロフィール

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1988年熊本県の天草諸島生まれ。2013年多摩美術大学卒業後に渡独し、2017年にドイツのドレスデン美術大学のカールステン・ニコライのもとディプロム過程を修了。現在、吉野石膏美術振興財団の在外研修制度によりベルリンを拠点に活動。主な展覧会に「Löwen Safari」(Kunsthalle Luzern、ルツェルン、2018)、「PHYSIS mostra collettiva」(オルティジャ元修道院、シチリア、2018)、「empty」(Bambinart Gallery、東京、2015)、「WE ARE NOT ALONE」(東京都庁、2011)など国内外多数。2011年にトーキョーワンダーウォール大賞を受賞している。

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