もはや洋楽ファンにとってマストなイベントのひとつとなりつつある、<Hostess Club Weekender(以下:HCW)>。昨年2月に満を持して誕生したかと思えば、ロケーションを変えながらすでに3度の開催を重ね、招聘したアーティスト/バンドの数はのべ30組(!)。それもこの極東の島国に、すべて海外アクトのみで厳選したラインナップを成立させているのは、後にも先にも<HCW>だけなのではないだろうか?

「ライヴの転換中、1人で小説を読んで待っているお客さんが多い」と、スタッフも驚くほどストイックな音楽ファンが集まるという<HCW>は今年もノンストップ。2013年一発目は2月2日(土)と2月3日(日)の2Daysで、前回に引き続きお台場の「Zepp DiverCity」にて開催される。かつてNYブルックリンでルームメイト同士だったというエズラ・クーニグ(ヴァンパイア・ウィークエンド)とデイヴ・ロングストレス(ダーティー・プロジェクターズ)がそれぞれヘッドライナーを務めるという構図も面白いが、<サマーソニック>でしか来日経験のなかったバンド・オブ・ホーセズのワンマン並みのフル・セット・ライヴをはじめ、アトムス・フォー・ピースの一員としてもお馴染みの2人が参加するウルトライスタ、ネクスト・リバティーンズとの呼び声が高いパーマ・ヴァイオレッツ…etc、今回も豪華絢爛な組み合わせだ。

音楽面以外では、プレッピー・スタイルが再評価されている近年だからヴァンパイア・ウィークエンドのニュー・ルックにも注目したいし、あのシャルロット・ゲンズブールもお墨付きのコナー・J・オブライアン=ヴィレジャーズは、その甘いマスクで女性ファンが急増すること間違いなし。個人的に、カワイコちゃん勢揃いの2日目は耳だけでなく目の保養にもなりそうで、今から楽しみでしょうがない(よく見たら初日は女性メンバーが1人もいない・笑)。もちろん、ベテラン勢も初来日組も、素晴らしいライヴ・パフォーマンスでフロアを沸かせてくれるはずである。この度Qeticでは、<HCW>の仕掛人であり<ホステス>の代表でもあるアンドリュー・レイゾンビーこと通称プラグ氏をつかまえ、このイベント誕生のきっかけから未来に至るまで、ネホリーナハホリーナ訊いてみました。

Interview:Andrew “Plug” Lazonby

2013年の<Hostess Club Weekender>も豪華絢爛! 仕掛け人にして〈ホステス〉の代表プラグ氏の独占インタビューで明かされる、イベントへの想い feature130124_hcw_plugsan_11

バンドが本領発揮できるような「場」を提供したい

――そもそも、自分たちのレーベルである〈ホステス〉で主催イベントを立ち上げようとしたきっかけは何だったのでしょう?

純粋に「自分たちが観たい」と思えるショウを作りたかったんです。それは同時に、アーティストのファンや会場に集まってくれるオーディエンスのためでもありますからね。

――<フジロック・フェスティバル>がイギリスの<グラストンベリー>をヒントにしたという逸話は有名ですが、では<HCW>のヒントになったもの、あるいはロール・モデルは存在するのでしょうか?

まず、これは「フェスティバル」ではないんです。そもそも自分たちの仕事はアーティストのチャンスを増やすことだったりするんで、「場」を作ってあげるのもひとつの役目ですよね。まあ、世界的に見ても昔より良いイベントが増えてきているとは思うんですが、自分たちが心から楽しめて、納得できるイベントっていうのがあまり存在しないのも現状です。たとえば、今回の<HCW>に出演するバンド・オブ・ホーセズは素晴らしいライヴ・バンドですけれど、彼らの持ち味を100%引き出してあげるような既存の音楽イベントって、日本では見当たらないですよね?

――ああ…。僕も<サマソニ>でのライヴは2回とも観ましたけど、ちょっと物足りなさは強かったですねー。

だからこそ、バンドが本領発揮できるような「場」を提供したいんです。たしかに彼らのマネージメント会社とかマネージャーと仲は良いんですけど、当然このイベントをやるために多額の予算が必要です。でも、そこで得る体験というのは、お金には代え難いですからね。

――「Weekender(ウィークエンダー)」というネーミングが良いですよね。週末を思いっきり謳歌するイギリスのワーキング・クラスを思わせたりもします。何か由来はあるのですか?

当初のネーミングはシンプルに<Hostess Club>だったんです。これだけ。ただ、ちょっとマズいだろって言われて…(笑)。

――日本だと水商売みたいですしね(笑)。

自分がイギリス人だからかもしれませんが、もしかしたら自分にとってテイストが合わないアーティストも出てくるかもしれない、という部分で日本の既存のクラブ・ショウには、ちょっと馴染めないところもあるんです。でも、<HCW>のコンセプトは2日間で10バンド、ワン・ステージのみで、ラインナップもそのシーンが好きな人にとって一目瞭然。その中から自分のお気に入りのバンドも、フレッシュな新人もまとめて確実に楽しめるところが強みだとは思いますね。

――〈ホステス〉では<HCW>の他にエックス・エックスやマシュー・ハーバートなどの単独ライヴも企画していますし、<フジロック・フェスティバル>や<サマーソニック>にも沢山の所属アーティストを提供していますよね。アーティストの知名度や実力、あるいはリリースのタイミングなんかもあるかもしれませんが、誰にどういったシチュエーションで出演してもらうべきかどうかは、意識的にコントロールしているんでしょうか?

大前提としては、出演者が新作をリリースするタイミングです。今回のラインナップで言えばヴァンパイア・ウィークエンドは<HCW>後に待望のニュー・アルバムが控えているし、バンド・オブ・ホーセズは新作を出したばかりだし、アンノウン・モータル・オーケストラも、パーマ・ヴァイオレッツも、フィドラーも、ラ・ラ・ライオットも、ヴィレジャーズも、ほとんどがアルバム・リリースを予定している。逆に、ベスト・コーストはリリース時期と関係なくパーティーにはピッタリのバンドです。フライヤーには猫も一緒ですしね(笑)。そしてダーティー・プロジェクターズは、ご存知の通りヘッドラインとしても、<HCW>のクロージングとしても、これほど相応しいバンドはいません。やっぱり自分たちは「レーベル」であって、単なるプロモーションとかショウケース・イベントとは違うので、そのあたりはフレキシブルにアーティストをチョイスしていますね。