90年代、ダンスミュージックをキーワードにエイベックスは日本の音楽シーンを変えた。旧態依然とした歌謡曲時代から今に通じるJ-POPへのアップデート。踊れて歌える音楽というユースカルチャーを再定義し、ファッション、ヘア&メイク、クラブ、カラオケなど、様々な要素を塗り替えながら一気にシーンをひっくり返してきた歴史を持つ。

2020年4月、エイベックス所属の次世代アーティストであるBeverly、CAELAN(INTERSECTION)、FAKY、FEMM、lol -エルオーエル-、SCHNELL(SOLIDEMO)、Yup’ in、安斉かれんが、90〜00年代に一世風靡したヒット曲をカバーしたコンピレーション・アルバム『avex revival trax』をリリースした。

avex revival trax – PROMOTION VIDEO –

“リバイバル”をキーワードにTRF、hitomi、globe、相川七瀬、Every Little Thing、DA PUMP、m-floという、往年のエイベックス・サウンドを次世代へ継承する試みだ。さらに、90年代ダンスミュージックを象徴するMAXIMIZORによる楽曲『CAN’T UNDO THIS!!』を、エイベックス創業者の松浦勝人プロデュースによって次世代アーティストが集結してREVIVE ‘EM ALL 2020名義で『CAN’T STOP THIS!!』として“リバイバル”したことも話題だ。

REVIVE ‘EM ALL 2020 / CAN’T STOP THIS!!

2020年、エイベックスにとってひとつのキーワードとなる“リバイバル”というテーマについて、本プロジェクトを担当するエイベックス・エンタテインメント株式会社 中前省吾、藤澤友美。そして企業にとってのアーカイヴの価値について、エイベックス株式会社広報の西本京史に訊いた。

オフェンシヴなマーケティングの重要性と
アルバムに込めた“復活・再生・回復”の願い

90年代のバトンを継承する “リバイバル”プロジェクト。カルチャーをアーカイヴし新たな音楽価値を見出す意味 in200618-avexrevivaltrax2-1440x1440

昨今、90年代カルチャーが世代を超えて10代〜20代にも人気の理由について、ディレクターの中前が語る。

中前「今回の“リバイバル”プロジェクトに関してはマーケティングからスタートしています。ディフェンシヴなマーケット・リサーチからではなく、オフェンシヴな仕掛けですね。会長の松浦(勝人)がよく言うのは、“エイベックスの面白いところはオーバーグラウンドなことをやりながらも、まったく真逆のアンダーグランドなことも押し上げている”ということで。エイベックスは常に両極を持っているんです。そんな意味では、潜在的な未来予測をいくつやれるか、いわゆるオフェンシヴなマーケティングが大事だと思っています。今回の“リバイバル”プロジェクトはそのひとつです。きっかけは社会情勢でした。90年代のバブルの終わりに、ディスコが終息しはじめて、そこから女性誌カルチャーが赤文字系になったり、写真共有カルチャー(写ルンです、プリクラ等)が流行ってギャル文化が生まれました。そんな社会情勢が数年前の日本と被っていたんですよ」

原宿文化が落ち着いて渋谷カルチャーへ寄り戻しが起こるなど、時代は螺旋階段上に進化しながらも繰り返していく。その匂いを嗅ぎ取っていたということなのだろうか。

中前「数年前、“今後トレンディードラマが来るね!”って僕ら話していて。90年代でいえば、個性を競いあう青文字文化の雑誌から一変して、皆がお手本を真似る赤文字文化へ変わった瞬間があって。Instagramって、新しいSNSと考えることもできるんですけど、あれって写ルンですやプリクラの次ですよね? そして、インバウンドによる一部の好景気という側面もあった。ファッション界は早くて、ルイ・ヴィトンがシュプリームとコラボしたり。次は音楽も90年代がくるなって。そこで、今回の『avex revival trax』へ通じるプロジェクトを2017年からはじめました。音楽でいうアンダーグラウンドな側面だと、ヴェイパーウェイヴの攻勢も大きかったですね」

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