デビュー作『Goddess』を形作ったコラボレーターの存在

–––そうなんだね。じゃあ、次はアルバムについてなんだけど、デビュー作『Goddess』はR&Bとエレクトロニック・ミュージックの美しいフュージョンで、サウンド・プロダクションには凄く一貫性があるよね? アルバムに取り掛かる前からサウンドについての青写真は君の中で固まっていたの?

いいえ、実際はただその時々に私が好きなサウンドを表現していったという感じだわ。何が好きかってコントールできる類のことではないでしょ? 勿論、サウンド面では一緒に働いた人たちの影響は自然と受けていると思うけど。本当に気に入った人たちとの仕事だったから。

–––サウンドだけじゃなくてMVも含めたビジュアル・イメージも統一されたコンセプトがあるように感じるんだけど、その点については「バンクス」としてどう見せたいかのイメージはクリアだったの?

そういう指摘があるのは面白いわ。サウンドもそうだけど、何を着るかだったり、映像だったり、そういった全てのことは「私そのもの」でそんなに事前に入念に考えたものではないの。今着ているものも、ステージで着ているものもただ着たいだけだし(笑)! 凄く自然のままというか。音楽的にもビジュアル面でも私という一人の人間から発しているものであって、どちらかだけじゃなくてお互いに合わさって初めて意味を成すものだと思う。

BANKS – “Beggin For Thread”(Official Music Video)

–––アルバムではソンやリル・シルヴァ、シュローモにティム・アンダーソン等幅広く素晴らしい面々と仕事をしているよね。彼らを選んだきっかけや背景を教えてくれるかな?

全員にそれぞれストーリーがあるんだけど……。そうね、まずソンは“Before I Met you”のリミックスを聴いて、曲の本質的な部分は何も変えること無く、新しいニュアンスを曲に与えてくれる人だと思ったわ。ぞくぞくする感じというか官能性みたいなものをね。時にリミックスって新しいものを生み出せると同時にオリジナルとはかけ離れたものになるときもあるじゃない? 彼の場合、あくまでもオリジナルのムードを損なうこと無く、新しい要素を足してくれることが出来ると思ったから一緒に仕事をしたの。シュローモは同じLA出身だし、同じクルーみたいっていうか、彼のマネージャーは私のマネージャーの友達だし、お互いを助けあうファミリーみたいな凄くフランクな関係ね。そして、ティム・アンダーソン! 彼もツアー中に知り合ったんだけど、とっても特別な存在で、彼なしでアルバムを作ることは出来なかった。まるで私にとって父親的な存在でもあって、私を育ててくれたし、良く理解してくれて、私が不安に感じているときにはそれをなだめてくれたりね。本当に本当に重要な存在だったわ。

–––アルバムではティム(・アンダーソン)との共作が一番多いよね?

そう! あとはTEED(Totally Enormous Extinct Dinosaurs)ね。彼もとても特別。彼はLAに来るなりPRの人を通して「バンクスって名前のシンガーと仕事をしたい」って言ってきたの(笑)。それで初めて会ってから3時間後には“Warm Water”が完成してたんだから!

BANKS – “WARM WATER”(OFFICIAL VIDEO)

–––コラボレーターの多くはUKベースのアーティストだよね。ここ数年のイギリスってR&B寄りのアプローチの素晴らしいトラック・メーカーやジェシー・ウエア、サンファのようなシンガーも沢山出てきているわけだけど、このトレンドは君のチョイスと関係がある?

私はテリトリーというか地理的な視点で音楽を捉えていないわ。コラボレーターの中にはUKのアーティストもアメリカのアーティストもいるし、同じUKでもTEEDとリル・シルヴァでは全然サウンドも違うでしょ? 彼らがどの国とかシーンから来たかというよりは、それぞれの音楽から判断してだけだから、余り意識したことではないと思う。

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