――『youth99』は10代の頃に愛したアンダーグラウンドミュージックとおうかがいしましたが、アーティストより当時愛したテクノカルチャーの影響が色濃く出ているということでしょうか?

僕自身も疎外感を感じていたひとりで、ダンスミュージックをやっているくせに踊れない、リスニングに特化したテクノを推しすすめているアーティストやレーベルにパンキッシュさを感じていたんです。だけどそうゆうパンキッシュさを感じていた人たちのルーツを探っていくと、実はアシッドハウスが好きだったりして……。踊れるダンスミュージックダサいって思っていたのに彼らのルーツは踊れる方のダンスミュージックだったことを知って「裏切られた! 仲間だと思っていたのに!」なんて疎外感とかを勝手に感じたりして(笑)。

――でも、そうゆう感情はアーティストやシーンへの愛情の裏返しでもありますよね(笑)。

そうですね。ただ本当にファンで「このアーティストはこうゆう人なんだ。」って勝手に思っていたけど、「実はダンスミュージックがルーツにあるんだ。自分が想像していたものと全然違った。」という思い出も含めて『youth99』は単純に、青春だった99年をひとつのテーマにして自分なりに1枚のCDに落とし込もう思っただけなんですよ。それでも『youth99』をきっかけに、その時代の自分を知ってもらうひとつの形になったらいいなって純粋に思います。でもね、やっぱりちょっとアンチでいたい気持ちもあるんですよ。後映像について。MVは映像作家の山口崇司さんと一緒に作業をしましたが、テーマは『スターフォックス』で、ポリゴンを使った90年代ライク感がある、今風を感じさせるものにしなかった。音の面でも、ミックスは今風の音楽みたいに、すべての音が前に出て、コンプも強めにかかったバウンスするEDM風な感じにはしていない。音への意識は特にあったので、あえて今風の音は一切入れなかったです。

DE DE MOUSE – “satan disco 999”

――『youth99』は全体的に打ち込みの変調が凄いなと……ブレイクビーツ、エレクトロニカ、ダブステップ、ドラムンベースなどジャンルレスさを感じる打ち込み方。現代のメインストリームである4つ打ちが基調になってないことに新鮮さを感じました。

ダンスミュージックのすごく面白かった時代って「こうゆう音だ」っていうのが僕の頭の中にはあって。90年代後半は毎年新しいジャンルが出てきて、今年は何が流行る! とか移り変わりが早かった。ドラムンの次はビッグビート来て、エレクトロあったり、ポストロックがあったり。そこから2000年代のエレクトロニカブームに繋がっていったり。とりあえずなんでも取り入れるような、ごちゃごちゃ感が面白かった。そうゆう時代だったし、それもテクノの一つだった。そこからごちゃごちゃしたカルチャーが様式美としてジャンルとして細分化されようとしている黎明期的な時期だった。だけど『youth99』はただ単にDE DE MOUSEのファニーな部分の延長というだけ。実は3rdアルバムの『A journey to freedom』はメロディ抜いてBPM上げたら『youth99』と同じような感じになるんですよ。僕の延長された部分だから根本は変わってないんですよね。

――あえて今『youth99』でその時代に立ち返ろうと思ったのはなぜでしょうか?

その理由は特にないんですよ。僕は時代性を感じない楽曲作りをしているけど、今の時代のリバイバル要素を含んだフロアライクな部分に対しても、今の自分は割とオープンな気持ちになってやっているからかな。だって、今は今20代前半の人たちからしたら80・90’sって割ときらびやかなイメージに感じるみたいでリバイバルされていますよね。EDMでもリバイバルを感じさせるテイストのものが増えてきたのも事実だし、だからこそ、僕もライブではあえてダサいと感じていた90年代のテクノの掛け声みたいなものを曲の中に入れたりしたりしているんです。

――実験的な要素もあるんですね。

リスナーがどう捉えるのか、どう思ってもらえるのか、どう食い込んでいくのかっていうのも楽しみだし。もし評価されなくても、『youth99』は現代に標準を合わせているわけではないから、今あえて流通させるっていうのも面白いんじゃないのかなって。DE DE MOUSEという肩書がなくてバイヤーが面白いって思ってくれたら、これはこれで新しいダンスミュージックの形のひとつだって捉えてもらえるかもしれないし。

――『milkyway drive』はみんながDE DE MOUSEさんに抱いているようなイメージのライブベストのようなアルバムですね。個人的にはすべての曲が新しいとか古いとかじゃなくて、再構築されていても世界観がぶれていない証明でもあると感じました。

ありがとうございます。多分みんなが好きな曲で本当に共有しやすいし、わかりやすい入門編的なアルバムです。その中でも自分のカラーというものが凄くある“ひとつのベスト”的なものにはなっているかなと。曲はライブで盛り上がる曲と、自分が好きな曲をセレクトしていっただけですね。それでも、僕はリミックスとなるとまた違った定義の作品になると思っているので、絶対にリミックスアルバムにはしたくなくて。ぼくのリミックスの定義って、大事な“核”だけを残して違うポップスとして再構築するということ。でもこの作品はあくまでもライブというものに主体を置いて、ライブ用にエディットしたものなので、タイトルも一部エディットを加えたりしてリミックスとは差別化は図れたかなと思っています。結構簡単にできると高を括っていましたが実際に音源として落とし込めるようにしたら、結局全部アレンジを変えなきゃいけない曲も沢山ありました(笑)。

――ライブで聴くと各曲は毎回違う感じもしますし作品として落とし込むのは難しい作業ですよね……。

そうですね。だからどんなシチュエーションでも聴けるようになっています。例えば朝元気を出したい時でも聴けるだろうし、作品の中でも切ないメロディラインや旋律にクローズアップして散歩しながら空を眺めて聴いたり、会社帰りに「終わったぞー」ってひとりでウキウキしながら聴いてもらってもいい。だから『milkyway drive』を聴いたリスナーが、自分にあうと思った曲で、元気のでるテーマソングにしてくれたりしたら嬉しいな。わりとそうゆう風に、ファンに対してもコミュニケーションを求めている作品にもなっていますね。

――ファンは特に『milkyway drive』のリリースが楽しみじゃないでしょうか。.

だと思いますね。なのでぜひ聴いて貰いたいですし、若い世代の人にもダンスミュージックはEDMだけじゃないよって聴いて貰いたいなって思っています。その辺りがぶれない様にあまり時代性が出るようなアレンジはさけたし、ビート自体はテクノだけど、その上にメロディアスな音をいろいろとのせたらテックハウスでもないしハウスでもない、時代性を感じさせないDE DE MOUSEの音に仕上がりました。

――自分の曲をRe Editするような感覚だと思いますが、再構築した『milkyway drive』で1枚を通したテーマはありますか?

テーマはジャケットに顕著に表れていて、宇宙に壊れたおもちゃが漂っているデザインになっているんです。いらないって思ったものを一回引っ張り出してみたら「あれ、まだこれ全然使えるじゃん」っていうことがあるように、要は、すべての使い古された音楽のパーツでも、それらを再構築していくとまだまだ聴ける美しいものになるんだよって。そうゆう音楽のパーツをちゃんと昇華したということを表したくてこうゆうジャケットにしてみました。『milkyway drive』は1枚を通して聴いても時代性を感じさせないダンスミュージックで、そこが僕っぽくていいのかなと思いますね。

進化し続けるDE DE MOUSE、レーベル3周年とこれからを語る interview150622_dedemouse_5

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