──なんともダサい言い方ですみませんが、DEXPISTOLSのサウンドやミックスに常に感じるのは「悪そうな音」ということで。ある種の不良性だったり、悪さというのはクラブ・ミュージックの大きな魅力でもあると思っていますが、DEXPISTOLSにとってそれは重要な要素でしょうか?

MAAR それ、弟のTAARにも言われました(笑)。そんなに悪そうですかね? まー、オレにとってクラブって人間の業すべてを出していい場所だと思ってるんですよ。むしろそこを楽しんで欲しいし、本来クラブがはじまったのもそんな理由からだと思うし。でも、その業のせめぎ合いの中で最低限その空間を壊さないっていうマナーを守らないと、昔だったら恐いお兄さんに殴られる、今だったらセキュリティに追い出される、もしくは単純に嫌われる(笑)。そもそもがそんな悪い場所っていうか、毒々しいとこなんですクラブは。そこにオレはリアルを感じるし、それを感じれないモノは好きじゃない。悪そうってより、毒っぽいって思ってもらったら嬉しいですね。

──いまおふたりが最も興味のあるシーン、音楽のジャンルって何ですか?

MAAR 特にないです(笑)。というか、相変わらずなんでも好きです。自分にとってグッド・ミュージックであれば。強いていうなら、ブルース、インド音楽、トランスあとBPM120以下の遅い四つ打ちに興味があります。

DARUMA ヒップホップです。ファッション含めトレンドの移り変わりをおおいに楽しんでいます。

──これまでの『LESSON』シリーズで、DEXPISTOLSにとって最も重要だったと思える作品をひとつ選ぶとしたら?

MAAR んー、全部です(笑)。そして、次に作る作品ですかね。やっぱり全部断片的なモノじゃなくて、ひとつの繋がりの中でやってることだから。最初の『LESSON.01』は、作ったときにダルマくんと109のギャル・ショップ全部に自分たちで配りに行ったり、その感覚っていま一番大事かなとも思うし、『LESSON.02』はたぶん、いつ聴いてもいいって思えるハウス・クラシックのミックス仕上がってるし、何年かに一度アレ今また出し時かもってなると思う。『LESSON.03』は日本におけるエレクトロ・ムーブメントの文字通り教科書になってくれたと思うし、『LESSON.04 “APPLE”』は初めてオフィシャルとしてリリースができた作品。『ROC TRAX presents LESSON.05“SATURDAYS”』は初めてROC TRAXっていう集団としてコンピが作れて、しかもメジャー流通までしてくれた。『DEXPISTOLS & ROC TRAX presents 「LESSON.06 “ROC TRAX JAM”」』は自分たちで流通してみて色んなことを学んだし、多くのもはやクラシックと呼べるような楽曲も作れた。『LESSON.07 “VIA”』は初アルバムってことで超大変だったけど、なんとかカタチにしてアンセムも作れて。で、今回の『LESSON.08 TOKYO CULT』はこんなカオスティックなダンス・ミュージック・シーンにおいて、さらにカオスなモノを作れた。しかも、国内音源が約半分を占めてるっていう。まー、皆さんは『LESSON.03』あたりを重要って言って欲しいんでしょうけど、やっぱり全部繋がっててこれからも色々繋げていくんだろうし。オレにとっては、全部頭を痛めて生み落としたカワイイ子供達なんで(笑)。優秀かどうかは別にして(笑)。

──DARUMAさんが手がけたジャケットのアートワーク、スカムな感じでむちゃくちゃかっこいいと思いました。ポスター、欲しいです(笑)。ジャケットのアートワークについてコメントをお願いします。

DARUMA 前の妖術師的な人が紫の液体に黄色い日本人のエッセンスを入れようとしている所がポイントです。後ろの2人はMIX作業をしているDEXのイメージです。

【インタビュー】DEXPISTOLS、最新ミックスCDとその美学について語る! Interview140414_dexpistols_sub1-1

──そもそも論かもしれませんが、ふたりでDJをやり続けるのってすごく難しいことなんじゃないかって思うことがあります。2many DJ’sのように兄弟ならともかく、個性の強いふたりが一緒にやり続けるのって、本当にすごいなって。敢えて聞きたいのですが、DJ DARUMAとDJ MAARが一緒にやり続けられている理由はなんですか?

MAAR 仕事しないと生きていけないので(笑)。まー、オレにとってDEXはもう別の生き物だと思っていて。オレが頭になってDARUMAくんが手足になる時もあれば、DARUMAくんが頭になってくれてオレが手足になる時もある。DEXになったら、一人の時では絶対かけれない曲もかけられるし(笑)。というか、DEXはDEXのパーティー哲学があるし、それはソロ活動の時と違うものだし。その違いを楽しめるかどうかは重要かも。強みは単純に選曲の幅が広がるってのはあるけど、それは単純に足し算的なものではないような気がしていて。上手くは説明できないですけど、選曲も含めお互いが持ちよったアイディアが足し算以上の化学反応を起こすこともあったり。もちろん失敗することも多々ありますが(笑)。

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