Interview:一鬼のこ

身体と身体がつながるのではなく、心と心がつながる。

インタビューのため、在廊する一鬼のこを訪ねたのは、開催2日目の9月10日、15時のこと。オープン翌日の、しかも平日の昼間なら会場は空いていてゆっくりとインタビューできる、と考えていた。だが、その予想は見事に外れる。会場に約束の5分前に着くとすでに入場を待ちわび並んでいる人がいて、開場するとそのまま途切れることなく場内は常に満員状態。ちなみにその来場者のほとんどは若い女性。とにかく隙間をみつけて話を聞くことにした。

──写真展・一鬼のこ展<Red>は、白い背景の中、赤い縄で縛られている美女たちの写真が飾られているわけですが、沢山のモデルを撮っているのに驚きました。

モデルの数は22名ですね。

──それだけの数のモデルを撮ったということは、撮影期間も長期だったのでは?

8年間に撮った作品です。撮っていない時期もあるので、そういう期間も含めですけど。

緊縛師・一鬼のこにインタビュー コンセプトは「つながり」 DSC_0655-780x519

──8年間も同じコンセプトで撮り続けられた作品群ということですね。

そうですね。コンセプトは「つながり」なんです。

──「つながり」を具体的に言うと?

縛るというと、動けなくするとか、締め付けるとか、そういう感覚があるじゃないですか。それってSM的な嗜好のある方が縛るとそういうふうになるんですけど、僕は最初に縛っときに、SM的な思考がなく縛ったんです。やりたくてやったわけじゃくなくて、その時に付き合っていた彼女が、そういうのが好きだったんですよ。彼女を縛ってあげた時に、僕は彼女との間につながり的なものを感じたんです。

──それは何歳ころのことなんですか?

20、21歳の頃ですね。で、僕が一番、最初に縛った時に、なんでつながりを感じたのかというと、女の子は縛られて動けなくなっているわけじゃないですか。僕がヘンなことをしても防げない。縛って自由を奪うということは、信頼関係がないとできないことなんですよ。彼女が僕に総てをゆだねてくれていることでつながっている、と感じたんです。

──お互いに信頼関係がなければ出来ないと思ったわけですね。

縛っている時はいつも、僕と相手の「いき」みたいなのがすごく感じられる瞬間があるんですよ。

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──縛りを覚えたきっかけとはなんだったんですか?

夢子さんというおばちゃんがいたんです。そのおばちゃんは、僕が頼んでもいないのに「あんた、縛りくらい覚えなさいよ」と言い出して(笑)。僕はその頃、アンダーグラウンドなバーをやっていたので、そんなところから知り合うことになったんです。丁度、当時の彼女と付き合うようになった時のタイミングで教わりました。

──Mな彼女がいて、縛りを教えてくれる人がいて、運命だったわけですね。そして、縛ることで「つながる」というところに魅力を感じたということですね。

そうですね。

──写真は総て白いバックに赤い縄を使っているわけですが、赤い縄にはこだわりがあるのですか?

赤い縄って血管とか血液に見えるじゃないですか。血というのはすごいつながりが深いと思うんですよね。いろんな意味で。あと、赤い糸で結ばれているとか言うじゃないですか。そういう意味もありますね。だから、僕は赤い縄を使って「つながり」を表現したかったんです。

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