2013年春にオリジナル・メンバーの堀込泰行が脱退して以降、堀込高樹を中心に楠均、千ヶ崎学、田村玄一、弓木英梨乃、コトリンゴという5人の新メンバーを加えた6人体制のグループとして新たな可能性を追究してきたKIRINJI。彼らがCharisma.comを迎えた最新配信シングル“AIの逃避行 feat. Charisma.com”を完成させた。

初めて外部からゲストを迎えた16年の“The Great Journey feat. RHYMESTER”以来のコラボ曲となるこの作品では、堀込高樹が作曲を担当し、作詞面ではCharisma.comのいつかとコラボレーション。まるでイメージの異なる2組が魅力的な化学変化を起こすことで、AIのランデブーをテーマにした、斬新かつ普遍性の高いポップ・ソングを生み出している。

今回は驚きのコラボレーションとなったこの楽曲について、そして互いが思うKIRINJIとCharisma.comの魅力について、堀込高樹といつかに語ってもらった。なお、この楽曲を最後にグループからコトリンゴが脱退することも発表されている。そのラストライブとなる12月のツアーにはゲストとしていつかも参加予定。このライブへの意気込みも聞いた。

Interview:堀込高樹(KIRINJI)×いつか(Charisma.com)

【特別対談】堀込高樹(KIRINJI)×いつか(Charisma.com)。相思相愛コラボの全貌 interview_kirinji_charisma.com_14-700x467

——KIRINJIの最新シングル“AIの逃避行”はAIのランデブーが題材になっていますが、これはどんな風に出てきたアイディアだったんですか?

堀込高樹(以下、堀込) 先に行っておくと、僕はAIは全然詳しくないんですよ(笑)。でも、“The Great Journey feat. RHYMESTER”(16年)をやったときに、曲の後半に《火星の土地で野菜を育てよう》《人工知能と交わすピロートーク》という歌詞を盛り込んでいて。最初はそこから発想したんですよね。

もともとのデモからシンセが結構入っていて、単純に「シンセ」→「機械」という、中学生とか小学生のような発想で(笑)。曲もちょっとディスコぽかったり、ブギーぽかったりと80’sっぽい雰囲気だったんで、今のAIではなくて昔のAI感を出してみようと思ったんですよ。そういうものだったら曲に合うかな、と思ったんですよ。

——たとえば、最近ではAIスピーカーのようなものも発売されはじめているわけですが、むしろこの曲に登場するAIの世界観は映画のようですね。

堀込 そうですね。「OK Google」みたいなことではなくて。身近で便利なものというよりも、思い切ってフィクションのようなものにしようと思ったんですよ。それで映画のような世界観の曲になっていったんだと思います。

いつか そうだったんですね(笑)。最初に高樹さんに会って打ち合わせをしたときに、「Charisma.comの曲はラブソングじゃないものばかりだ」という話になって。

堀込 そう、「恐い感じの曲ばかりだ」ってね(笑)。それで「AIのラブソングはどう?」という話になったんですよ。

【特別対談】堀込高樹(KIRINJI)×いつか(Charisma.com)。相思相愛コラボの全貌 interview_kirinji_charisma.com_16-700x467

——ああ、なるほど。堀込さんからすると、“The Great Journey feat. RHYMESTER”でラッパーの方とタッグを組んでいたことが、今回もラッパーの人を迎えたい、という気持ちに繋がった部分もあると思いますか?

堀込 ラッパーの方にお願いしたいと決めていたわけではなかったんですけど、やっぱり自分たちとは違う人たちとのコラボレーションがいいなと思ったんですよ。“The Great Journey”のときは、同じ世代のRHYMESTERとやって、ジャンルは違えど似たようなフィールドにいる2組のコラボレーションではあって。でも、もっと「何だこれは!?」と驚くようなものがやりたいと思っていたんですよね。

——いつかさんとしても驚いたんじゃないですか?

いつか それはもう驚きですよ。「えっ!?」って。あと、緊張する案件でした。「私、そんなに偏差値高かったっけ!?」って(笑)。これは修行だと思いましたね。

——もともとお2人は、お互いにどんなイメージを持っていたんでしょう?

堀込 僕はもともと、YouTubeでMVを観させてもらっていて、ラップも出来るし踊れるしで「すごいな」とは思っていて。ただ、音楽がハードなので、あまり自分とは関係ないのかな、と思っていたんですよ。

でも、今年出たアルバム『not not me』で西寺くん(西寺郷太:NONA REEVES)がプロデュースした“Lunch Time Funk”を聴いたり、蔦谷好位置さんがかかわった“not not me”を聴いたりしていて、「ポップス方面にも興味があるのかな?」と思って。それならお願いできるんじゃないかと思ったんですよね。女性のラッパーって最近多くて、みんな上手でカッコいい人が多いですよね。

でも、ほとんどの人はヒップホップ・カルチャーにどしんと根を張っている人であったり、ニコ動から出てきたようなフワフワしたラップの人だったりが多くて、それはそれでもちろんかっこいいけれど、いつかさんのようなスタイルの人ってあまりいないな、と思って。こういう人が参加してくれたらかっこいい曲ができるんじゃないか、と思ったんですよ。

いつか 嬉しい! やってよかった(笑)。私、真似してくれる人とかがいないんですよ。世に出たはいいけど、ずっとひとりなんです。

堀込 真似しようと思っても出来ないんじゃない? もしくは、これからなのかもね。たとえば、沢口靖子のモノマネをする人なんて全然いなかったのに、突然出て来る、みたいな。

いつか (笑)。逆に私のKIRINJIのイメージというと、さっきも言ったように、とにかく「音楽的な偏差値が高い」ということで。でも、高樹さんが最初に「KIRINJIって名前ぐらいは知ってますか?」と聞いてくださったので、「ああ、近寄りがたい方ではないんだな」と思ったんです。とにかく、話をもらったときは本当に驚きました。

——お互いの曲で好きなものを挙げるなら?

堀込 僕は“サブリミナル・ダイエット”。あとは“HATE”も面白いなぁと思って。

いつか “HATE”は最初に世に出た曲ですね。私がKIRINJIを知ったのは、“エイリアンズ”が最初でした。今年に入ってから(LINE MOBILEのCMでのんがカヴァーして)また注目されていますよね。でも、今は“進水式”(14年の『11』に収録)が一番好きです。

Charisma.com 「サプリミナル・ダイエット」

KIRINJI – 進水式