——クラシックの作曲家で好きな人は誰ですか? あなたの音楽にはロマンティックな要素を強く感じますが、影響を受けたクラシックの作曲家はいますか?

ショパンからは確実に影響を受けています。ショパンを弾いているときの、鍵盤の上での自然な指の運びの感覚が好きでした。どうやったら、メロディとハーモニーがあんなふうに響くのでしょう。けれど私は、長いことバッハを弾くのも好きでした。

——「Lambert Rework」でカバーしている曲や、Spotifyなどで選曲しているプレイリストを見ると、本当に幅広いジャンルのポップスやロックを聴いていらっしゃいますが、自分の中でもっとも大きな影響を受けた音楽のジャンルや、特定の年代はありますか?

特定の年代が好きということはありません。すべての時代の音楽を愛していますが、私がはじめてバンドで演奏したのが90年代でした。私はドラマーで、我々のバンドはニルヴァーナ(Nirvana)やウィーザー(Weezer)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(Red Hot Chili Peppers )、レディオヘッド(Radiohead)、オアシス(Oasis)などが好きでしたね。最近では、その15年後くらいに出てきたバンドの方が好きですが、それでも90年代に受けた影響は大きい。私のレコード・プレイヤーにはザ・ナショナル(The National)やボン・イヴェール(Bon Iver)、ヴァンパイア・ウィークエンド(Vampire Weekend)が乗っていますが、じつはニルヴァーナもまだ聴いていますから!!

——〈Mercury KX〉はクラシックの名門デッカがポスト・クラシカルに特化して立ち上げたレーベルですが、「ポスト・クラシカル」という潮流についてどう思いますか?

私は自分自身を、クラシックの音楽家とも、ポスト・クラシカルの音楽家とも思っていません。私はただピアノを弾くことになり、自分の曲を書いているだけ。近頃は、このようなインストゥルメンタル・ミュージックを聴いてくれるオーディエンスがいることを本当に嬉しく思います。10年前には想像もできませんでしたから。実際に私はかつて、誰も興味を持ってくれないと思い、ピアノを弾く意味を見失い、やめたことがありました。幸運なことに、ふたたびピアノに戻ってくることができましたが。それというのも、ある夜、友達のクラリネット奏者が酔っぱらっていきなり私のアパートにやって来て、私と演奏したいと言い出したんです。近所の人たちを起こさないよう、私はピアノのハンマーと弦の間にフェルトを挟んでミュートしました。その音が、私をふたたびピアノに向かう気にさせ、ランバートが生まれたのです。

——今後の活動でチャレンジしたいことは?

アジアやオーストラリア、北米、南米から、私の音楽を聴きたいとたくさんのメッセージをいただいています。それらの国々に行って、演奏したいですね。

interview by 原典子

——先ほどの話に戻りますが、オアシスが好きだとおっしゃられていて、ご自身のSoundCloudでオアシスの“Wonderwall”のカバーを公開されていますよね。彼らの数ある曲の中でも“Wonderwall”を選ばれた理由はありますか?

じつは“Don’t Look Back In Anger”の方がちょっとばかり好きなのですが、“Wonderwall”のシンプルさにはいつも心を打たれます。ポップ・ミュージックには純粋なシンプルさがあり、じつに効果的。私はそういった部分を愛しています。“Wonderwall”はそのよい例だと思います。

Oasis – Wonderwall (Lambert Rework)

——覆面で活動していますが、周りの人たちはあなたが音楽活動をしていることをご存知ですか?

いいえ。私はこの話題を避けるようにしていますし、彼らには映画などの音楽制作をしていると言っています。私は自己中心的なエゴイストだと、誰にも思われたくないのです。恥ずかしいので、友人たちとは音楽とは別の話をするようにしています。

——覆面を被ることで音楽を作っている自分と、そうでないときの自分のペルソナを使い分けているのでしょうか?

まさに! 仮面が私に多くの自由を与えてくれます。私はつねにランバートである必要はありませんし、ランバートはつねに私である必要はありません。お互いが一息入れるために良い方法なんです。

——仮面について2つ質問です。仮面のデザイン、とてもカッコ良いと思います。もしライブ中に鼻がかゆくなったらどうしていますか?

我慢するしかないですね。

——また、特徴的なツノがどこかにひっかかったり、何かの役にたった経験はありますか?

引っかかったことはありますが、このツノには柔軟性があるんですよ。引っかかったとき、オーディエンスは喜んでくれました。役に立つこと……そうですね、このツノはかっこいいし、私の身長を高く見せてくれます!

——日本で好きなアーティストはいますか?

坂本龍一と北野武です。

——日本のファンに一言お願いします。

日本に行って、皆さんの前で演奏したいです。噂では間もなく実現するとか! 楽しみにしていてください!

interview by Qetic・松永隆志

RELEASE INFORMATION

スウィート・アポカリプス

【インタビュー】オアシスからショパンまで!広大な背景を持ち琴線に触れる音を紡ぎ出す仮面のピアニスト・ランバートの正体に迫る interiview_lambert_1-700x700
2017.07.05(水)
ランバート
UCCL-1196
¥2,700(tax incl.)
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