中華圏屈指の歌姫フェイ・ウォンと、80~90年代の北京ロック・シーンを支えたドウ・ウェイという2人のミュージシャンを親に持ち、10代でアメリカに留学して音楽を学ぶと、高校生の頃には静岡の学校にも留学。様々な文化圏をまたにかけ、トリップホップやロック、ジャズ、フォークなどあらゆる要素を融合させた独自のポップ・ミュージックを鳴らすリア・ドウ。彼女のデビュー・アルバム『ストーン・カフェ』が、日本でもリリースされた。

本作に収録されているのは、彼女が16歳~17歳の間に書き溜めた楽曲の数々。トリップホップやジャズなどが巧みにブレンドされた“My Days”や“Bitter Sweet”、アコースティック・ギターが印象的な“May Rain”などを筆頭にした個性豊かなオリジナル曲から、かつてフェイ・ウォンがウォン・カーウァイ監督作品『恋する惑星』でカヴァーしたクランベリーズの“ドリームス”を大胆にアレンジしたカヴァー曲まで。全編には曲ごとに豊かな音楽的バックグラウンドが反映され、歌詞では社会に出たばかりの彼女の変化が綴られている。今回はそんなアルバムについて、そして東京1日目のガーデン・ステージに初出演を果たした<サマーソニック>(以下、サマソニ)でのライヴについて、<サマソニ>出演後の彼女に語ってもらった。

リア・ドウ (Leah Dou) – My Days(日本語字幕付)

リア・ドウ (Leah Dou) – Brother

まずは今回の日本滞在で観るのを楽しみにしていたという、<サマーソニック>でのレディオヘッドのライヴの話からどうぞ。

Interview:Leah dou

――以前「<サマーソニック>ではレディオヘッドが観たい」と話していましたね。今回の来日に際して、実際に観ることはできたんですか?

イエス! (日本語で)スバラシイ……。まるで頭がぶっ飛ぶような最高の体験だったし、人生の中であんなに興奮したのは初めてだったんじゃないかな。息も激しくなったし、汗もかいたし、ジャンプもしたし。中でも一番興奮したのは、ビッグ・サプライズで“クリープ”を歌ってくれたことね。

――特に『OKコンピューター』以降の、トリップホップ的な要素やエレクトロニックな音も加えた時期の彼らの音楽は、あなたの音楽にも大きな影響を与えていそうです。彼らにはどんな魅力を感じますか。

私がレディオヘッドを発見したのはティーンになってからで、他の人たちと比べると見つけるのは少し遅かったんだけれど、レディオヘッドはキャリアを通して音楽性をどんどん進化させてきた人たちだよね。でもそれと同時に、美しいメロディーはどの作品にもずっと共通していると思う。どんなジャンルの音楽を取り入れていても、それは失われていないというか。それは自分が一番目指していることね。だから、ジャンル的にはレディオヘッドを含めて色んなものに影響を受けているけれど、彼らのメロディー・センスに一番感銘を受けたんじゃないかな。あと、アルバムを重ねていくにつれて、トム・ヨークの声も進化しているよね。最初の何枚かは一般的な歌い方だったけれど、彼はそこから自分の歌のスウィートスポットのようなところを見つけることが出来たんだと思う。

――他に<サマーソニック>でライヴを観られたアーティストはいましたか?

残念ながら他には全然見れなくて……。同じステージに出演したハイエイタス・カイヨーテも観たかったけれど他にやらなければいけないことがあったしね。でも、彼らと同じステージに立てたのは嬉しかった。あとはMETAFIVEも観たかったけれど、彼らのライヴは以前にも観たことがあったから、ステージ・スタイルがどんなものかは知っているわ。

――自分自身のライヴはどうでしたか。高校の頃に静岡の学校に留学していたことがあったり、初ライヴが日本だったりと、日本はあなたにとって思い出深い場所のひとつです。

自分にとってのキーとなるステージになったんじゃないかと思う。こんなに早く<サマーソニック>のステージに立てるとは思っていなかったから、すごく光栄で興奮した。それに、ミュージシャンやスタッフの人たちのプロフェッショナルな仕事ぶりにも感銘を受けた。それぞれが仕事に誇りを持っていて、的確に仕事をするのが素晴らしかった。自分自身も演奏していてすごく楽しかったし、みんなとの一体感もすごくよかったと思う。あと、ライヴのためのリハーサルもすごく楽しかったな。1日目から日本のミュージシャンとも一緒に演奏したんだけど、自分は英語を話せるから何となくコミュニケーションすることはできるものの、キーボードのメンバーは中国語しか話せなくて。それなのに、全員が何となく一緒に何かを作り上げていくという雰囲気があったのが、何よりも楽しかった。

――今回はアルバム『ストーン・カフェ』を引っ提げての来日となりました。この作品はトリップホップもオルタナもジャズもフォークもエレクトロニック・ミュージックも含めて様々な要素がブレンドされていて、あなたがリスナーとして豊かな耳を持っていることを感じさせてくれるようでした。今回の作品に影響を与えた音楽やアーティストというと?

それを選ぶのはすごく難しいな(笑)。私の場合、明確にこのバンドに影響を受けたというものが特にないし、毎日のようにSpotifyのようなストリーミングサイトやアプリで新しい音楽を聴いて、そのすべてが自分の中に自然に浸透しているから、制作のためにスタジオ入りするときにも、そうやって日常的に聴いてきたものから無意識のうちにアイディアが出てくるの。だから自分では、どこに何が影響したのかが全然分からないの(笑)。

【インタビュー】今年のサマソニにも出演!フェイ・ウォンの愛娘、リア・ドウに迫る dcd19c8c31acbffcd415aeebc36e402c

『ストーン・カフェ』

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